第44話真のヒーロー(sideカイト)

 崩れた母さんから、波動と呼ばるものは全く無くなってしまった。それを感じた瞬間に、俺は、我を失った。そして白い光に包まれた。

 頭の線が切れる音がした。もう母さんに息はないだろう・・・。そう思った事の出来事だった。


「なっ、何だぁ!? その輝きは、何が起きている!?」大王が俺に叫ぶ。

英雄ひでお愛美まなみたちを連れて離れてくれ!母さんも一応頼む」

「あっ、あぁ、だが、お前一人で、何が」

「良いから言う事を聞け!俺は今無性に腹立たしい!これ以上俺を怒らすと、お前らも八つ裂きにするぞ!」

「あっ、あぁ! わかった。百花ももか行くぞ」

「えっえぇ」


「フハハハハ、ギャラギャラ! そんな怒ったところで」

「フッ! そう言いながら、この波動力の違い、貴様には、わかるんじゃないか?」

「くぅううううううう! ワシを誰だと思っておる! ワシは大王だぞ!」

「それが、どうした。腐れ外道が! お前のさっきの攻撃で、母さんの息が亡くなった。ダメージから見て、生き返るかどうか微妙だ。わかるか?この思い?」

「くうくううううううう!」

「お前にはわかるはずないだろう! 人を人として見ない。自分の支配下だけに、固執した小さな怪獣など。俺のこの怒りに満ちた気持ちが!」

「きええええええ!!」


 部屋を一瞬にして吹き飛ばす大王の波動。だが、それを食らっても俺は微動だにしなかった。白煙が一瞬立ち込めたが、風が吹き、空に浮く大王と俺の姿。それを見た大王がまた叫び、攻撃を繰り出してくる。


 今度のは、先ほどより、大きな水島駅付近が吹き飛びそうな波動。これを浴びれば、ジャッカルたちに変身した人々が、吹き飛ぶだろうと思った。だから、俺の渾身の波動力を一点に絞り、大王の波動にぶち当てた。そして上空へと弾き飛ばした。


「おのれ。貴様、なっ何者なんだ!?」

「俺か?フッ、怪人の悲しい気持ちを持ちながら、人々に優しい人間の気持ちも持ち合わせる。そして、目の前の悪を絶対に許さないと言う思いから、大王、貴様が生み出した、真のヒーローだ!」

「真のヒーローだと?」

「今ので、わかったはずだが?」

「小賢しい! ワシは大王だぁあああああああああああああああああ! この日本を牛耳るのは、大王だと決まっておるわい!」


 機動力を生かした攻撃のはずが、今の俺には遅く感じられた。


「ハッ!」


 口ずさむと、背中から透明の5mの翼が羽ばたいた。大王の体を波動の力で抑え込むと、腕を上空へと振り上げる。それと同時に、上空1000mの高さへと登る。大きな波動砲を宇宙へ向けて、解き放った。大王はそれを受け止め、地上に落とそうと必死だった。


「こっ、こんな波動力……ワシの波動にして、地球まるごと沈めてやるわい!ウッヌヌヌヌヌヌ!」

「ハァー!」俺は叫んだ!


 衝撃波を大王の体にぶち当て、窮屈そうに空の彼方へと消え去ろうとする大王。それを必死に耐えていた大王は、苦し紛れの言葉を残して消えて行く。


「ワシがいなくなろうとも、真の魔王が再びこの世界を牛耳るぞ!」

「小賢しい! もういい! 散って詫びろ!」

「ワシがいなくなれば、お前の父親、真野勝利しんのかつとしがどこにいるかは永遠の謎……フハハハッギャラギャラ!」

「うるさい! 親父の記憶は、母親からもらった。居場所はいずれわかる。さっさと散れえ!」

「ギョエ!」


 閃光が遠く消えていくと同時に、大王は弾け飛んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る