第43話目を覚まして(sideカイト)

 その引き離した腕から、母さんの優しい顔……。

「ギャラ!」


 しかし、その声は大王の笑い声に変わったのだ。悲痛な思いで俺は錯乱状態に陥った。何がどうなっている。目の前には、胸にブレードを差し込まれた愛美まなみの怪人。そして柱には繭で絵ぐるぐる巻きにされた人間の愛美まなみの姿。母親だと思った、何の波動も感じられずに近づいた人物は、大王だった。


「うわあ!」

「ギャラギャラ!早く助けないと、愛美まなみは死ぬぞ!? ギャラギャラ! だが、どっちが本当の愛美まなみだろうな?」


 木崎が、容赦なく俺にブレードを振りかぶる。しかし俺の波動の前にブレードは簡単に折れた。するとそれを見越していたのか、大王が笑いながら言い放つ。


「ギャラギャラ!木崎も可愛そうな奴よのう?何にも知らずに、ここに入って来ただけで、お前を真の敵だと勘違いしておるわい……」

「カ……イ……ト。おっお前……くぅう」

「木崎! お前は許さねぇ……」


 俺の中で何かかがはじけようとしていた。ゾワゾワとした感覚。このままだと、大王にではなく、バババギャーン、レッド木崎に攻撃を打ち噛ませようと感情に揺れていたが、今度も大王の後ろに人影がいるのが見えた。


「ギャラギャラ! 役者がそろったな……」

「いけないわ。カイト、真の敵を見間違えないで……」

「あぁ! そういうことだ。待たせたなカイト!」


 そこには、ベッドで治療中のはずの母親と、英雄ひでお百花ももかだった。腕をかざし、大王へそれを向ける。俺も我を取り戻し、大王へと立ち向かった。百花ももかは、愛美まなみまゆをとき解こうと、波動を柱に向けて打ち出していた。


「母さん、何で出てきたんだよ! 大丈夫なのかよ!? 俺の心配なら……」

「そんな、会話をしてていいのか? ワシはもう本気じゃわい!」


 一瞬の出来事。ドスッと鈍い音。

「これ以上ワシを悲しませないでくれ……。マダムーンよ。お前は、ワシのものだったはず。残念じゃわ」

 俺に向けられた波動の前に、またもや俺は、母さんに助けられた。

「おとなしく、WORLDで寝ていれば良いものを、残念だ」

「母さん!」


 俺は叫んだ。鈍い音と同時に、さっきまで、俺に指示出ししていた母さんが、俺の前に立ち塞がる大王へと変貌し、俺に攻撃を食らわす。クロスでそれを弾こうとしたら、攻撃が母親を直撃。またもや目の前に母さんは、俺を庇うため、身代わりに攻撃を受けていた。


「…………」


 声を無くしながら、その場に崩れる母親を見た。俺の感情が爆発した。


 叫んだ。

 天高く。


 頭の中の線がブチッと切れる音が本当にした。人が切れるというのは、こういうことなのだと本当に感じた。それと同時に、俺は白い輝きに満ち溢れていた。


 白い翼がスーツの背中から現れる。以前の翼とは違いもっと大きな翼が……。


 大王がそれを見て、慄いているのがわかった。心の底から自分と戦闘力が格段に違う相手が目の前に現れたと、驚愕し、口元が歪んでいた。



「きっ貴様が、本当にあのカイトなのか?」

「もう、お前には、死あるのみ……。形が残ると思うなよ!? 大王よ!」

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