現代の魔法が解けたら
@Yui-Ka
第1話 現代社会の奴隷
「どれくらい値打ちがあーるだろー僕が今生きてるこーの世界に」Mr.Childrenの音楽が目覚まし代わりのスマホから流れると「何の価値もねーよ」と呟いた俺は音楽をすぐに止める。俺の朝の悲しすぎるルーティンだ。
俺は横浜市の中小企業で商社営業をしている。商社と聞くと頭お花畑のやつがときとぎエリート!なんてカンチガイするが実際は顧客の要求するものを仕入れて少し手数料加えて販売するだけの誰にでもできるつまらない仕事だ。そしてそんなつまらない仕事をかれこれ5年以上続けてる俺もつまらない男だ。
6:00に起きると健康のために軽く筋トレ、その後シャワー、そして朝食の代わりにプロテインを飲んで家を6:45に出発。約1時間かけてオフィスに向かう。
「チ、うるせーなー」隣の女子高生のイヤホンから漏れる耳障りな音漏れに心の中で愚痴をいいつつ今日も満員電車に揺られる。10月になり涼しくなってるになんでこんなに汗臭いんだ。あんな風になりたくないと思う中年親父を睨みつつ現代社会の奴隷船はオフィスへ俺を運ぶ。8:00前ようやくオフィスに到着し、すでに心の中で「帰りてー」と呟きつつ自分のデスクに座った。
「ちょっと勇ちゃんこの案件の書類なんでPDFで保存しないの!?」デスクに座るなりお局の桧山さんが怒鳴りつけてきた。桧山さんは40半ばの所謂お局であり俺の担当アシストである。薄利多売の商社では一日に大量の案件を処理することから営業1人から2人に対して事務処理をし営業を支えるアシスタントがいることが多いのである。しかし、中には若い営業にマウンティングをとることを生き甲斐にする馬鹿なアシスタントもいる。桧山さんはまさにそれである。ちなみに勇ちゃんというのは俺の本名坂本勇人(さかもとはやと)から来ているが桧山さん以外は誰もそう呼んでいない。
「すみません。すぐにいれときます。」謝る俺に「もういれたからいいよ!これで3度目!いい加減に覚えて」と桧山さんは吼える。「お前がやったならいいじゃねーか」小さく呟いた俺のつまらない仕事が今日もつまらなく始まった。
終わった~腕時計をチラリと見ると時計は9:00を指していた。今日も100件近いメールに鳴り止まない電話。ただそれを次から次へ処理して一日が終わった。「こんなことしてていいのかなー」社会人になって早5年が経過した。最近将来への不安とすり減るだけの毎日に焦りを感じているのは確かである。ただ、仕事を辞めてもすぐに生活するための金を稼ぐビジョンやアイデアもなく。また、学生時代に打ち込んだ仕事に活かせる特技も、仕事にしたいほど好きなこともない…「生活するためは我慢しなきゃいけないんだ…」思わず口に出しそうになる言葉をぐっと飲み込み。くたくたの体で奴隷船で帰路につく。
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