エンゲル係数上げてこう!

月末には光熱費の支払いが来る。金持ちになりたいと思ったことはなく、何になりたい希望もなく、ささやかに仲間がいて暮らせればいいと思っていた。夢がなかったから、貧乏でもいいやと。自分で働けば、ダイエー以外で服を買ったり、海外旅行に行けるんだ、と思って社会に出た。「貧乏」の見通しが甘かった、と言えばその通りである。しかし、そんな育ち方をしていない、三十年前の日本は、食うに困るところじゃなかった。遠い昔になってしまった。四半世紀働いて貯蓄ゼロ、毎月、光熱費の請求にビクビクする未来予測なんかしたくてもできない。みんな馴れているけど、ここは地獄だ。絶対的貧困の国じゃない、と言われたこともある。「年収」一万円の国と比べてみろ、と。いや、この国で生まれたんで。生まれた時から電化されてたんで。夜はろうそくを吹き消してさっさと寝ろって?


消費社会が飽和した先にシンプルライフがやってきた。モノが溢れて、もう何も要らない、となってから出てきた話なのは覚えておく。金がない、と、自分が生きている、を計って、どう考えても金より自分が偉い、と揺るぎなくなりたい。食うに困れば健康が損なわれる。食費から削ってはいけない。まともなものを食べる、まともなものが手に入らない現状に怒る。歩くのも疲れる広大な西友の棚に、まともな食べ物はほとんどない。やっぱコスパ、は違う。まともなものを正当な価格で購入することだ。食べたものが身体を作る、まともな食べ物を食べないと、精神が荒んでくる。逆に言うと、すべて食費に充ててでも、「生存」を最優先する。健康な身体、しなやかな心で、「いま、ここ」に、生きることができる。実のところ、それは素晴らしいことだ。金がないのは、どうしてもつらいけどね。

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