7話 そろそろ欲しいよね
ガラスの入っていない窓に、格子状になっている木。その隙間から日の光と、朝の風が部屋に入っている。そんな窓際のベットで、起きたばかりの麻衣とルディはベッドの上で座り、お互いに見つめ合っていた。その隣ベッドでは、兼次が仰向けてまま、まだ熟睡していた。
「へへへ… ルディちゃんの髪、フカフカだねー… 触り心地最高だよ!」
麻衣は緩んだ口元を晒しながら、左手でルディの犬耳を触り。そして右手で彼の髪を、手で撫でて整えている。ルディは、そんな麻衣を見上げながら、心配そうな表情をすると。麻衣の視線を避ける様に、下を向き弱々しく口を開いた。
「おねーちゃんを、助けないと…」
「大丈夫よ! 私達に任せてね、絶対助けてあげるから。でー… 村まで送ってあげるね! そして、その村で犬耳のイケメンさんと・・・ えへっへへ」
ルディは再び麻衣を見上げると、彼女は目を閉じていた。その頭は若干上を向いていた。彼は麻衣を見ながら、どうやって話しかけていいか分からずいた。彼は力の抜けていた手を動かすと、近くにあった麻衣の太ももに手を置いて、彼女に話しかけた。
「お腹… すいた…」
麻衣の耳に、ルディの弱々しい声が入って来た。彼女は『ハッ』と我に返ると、両手を彼の両肩に置いて、顔を彼の方に引き寄せた。
「昨日の夜、何か食べたの?」
「何も食べてない… その前も… その前も…」
「じゃぁー、食堂いこっか?」
麻衣はベットから降り、立ち上がる。ルディの方を振り向き、彼の方に向かって笑顔で手を差し伸べた。ルディは、一瞬迷っていたが、彼女の手を取り立ち上がろうとする。
「まて!」
隣のベッドで寝ていた兼次は、その掛け声と同時に麻衣のスカート部分を持ち下に引っ張る。ワンピース状になっている彼女の服は、背中部分が突っ張り下に下がると。首の部分が彼女の、喉でひっかかると「うっ」と言う声が自然に出ていた。
「だから、スカート引っ張んなって! てか、いつ起きたのよ」
麻衣はそう言いながら、つぱった服を直しながら、兼次の方に振り向いた。兼次は彼女が振り向くと、上半身を起こし彼女を見上げる。
「今だよ今… 昨日言っただろ、犬猿の仲だと、部屋から出すな」
「でも… ルディちゃん、お腹すいてるって。何か食べさせてあげないと…」
「部屋で食べるぞ、持ってこい。無論、俺の分もな」
麻衣は兼次の方に両手を出し、不満そうな表情を見せる。
「私の手は2本、3人分は運べないけど? 浮かせて運んじゃうからね!」
「わかったよ。俺も行けばいいんだろ」
兼次は立ち上がると、麻衣の腰に手を回す。そしてルディの方を見た。
「小僧、部屋から出るなよ?」
「ルディちゃん、大人しくしててねー、御飯持ってくるからね」
麻衣と兼次は、2人揃って部屋を後にした。麻衣はドアの前で振り返り、ルディに向かって笑顔で手を振る。そしてドアが閉まった。取り残されたルディは、立ち上がると窓の外に移動し外を見始めた。
「おねーちゃん…」
ルディは格子の隙間から、漂ってくる僅かな空気の流れを感じる。目を閉じ意識を集中させ、姉のかすかな臭いを感じ取ろうとした。数分その状態で窓際で、姉を思いながら立ち尽くしていた。
「ルディちゃん、おまたせー」
ドアが開くと麻衣と兼次が、手に食事の乗ったプレートを抱え戻って来た。
「小僧、食うぞ。マズい飯をな!」
兼次と麻衣は、テーブルに3人分のプレートを置くと座る。ルディは窓際から歩いてくると、麻衣と兼次の間に入り座る。そして彼は、勢いよく食べ始めた。
「相変わらずの、飯マズだな」
「そうね… 味薄いし、お肉が固いよね。ねぇ、ルディちゃん、おいしい?」
「う… うん。おいしい」
麻衣に声を掛けられたルディは、笑顔で彼女に答えた。麻衣は真面目て見るルディの笑顔に、嬉しくなり。にこやかに食事を再開した。
「そうそう、兼次ちゃん」
「なんだ?」
この惑星に来てから、不機嫌そうに毎回食事をしている兼次。そのまま不機嫌な顔つきで、麻衣を見た。
「昨日、スイーツでも食ってろ! って言ったけど、お店なかったど?」
「そうか… さすがローテク文明だな。砂糖すらないからな…」
兼次は食事を再開する。隣で麻衣が兼次の方を、黙って上目遣いで見ていた。彼は、その視線が徐々に嫌になったきた。
「わかったよ… ララ、聞いているな? スイーツの出前を頼む、昼頃持ってきてくれ」
「スマホで話さないの?」
「どうせ、聞いているだろ…」
「そうだね… 聞いてるね…」
そのまま麻衣と兼次は、食事を再開する。そんな2人の不思議な行動を、ルディは不思議な顔つきで、黙って見ていた。彼は質問してはいけない感じを、2人から感じ取っていた。
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