140字小説 (ファンタジー)
剣闘士の盾
剣闘士イージス 血煙がまうコロッセオで、彼は唯一、殺戮を嫌っていた。 彼の得物は、身の丈を優に超える大きな盾のみだった。
観客は激怒した。血飛沫の出ない戦いに。
イージスは示した。人は守るために戦うのだと。 敗者の山を築いて。
太陽の意志
暑い 人間は太陽に向かって口々に罵声を浴びせた。 翌日から太陽が消えた。
寒い 人間は空に向かって口々に罵声を浴びせた。 太陽は戻ってこなかった。
やがて、地球上の生き物は結託し、光を消した二足歩行の猿に襲いかかって、彼らを非常食に変えた。
仔豚と狼
「仔豚くん。オラを家の中に入れておくれよ」 「やだよ」 わらの家の仔豚が言いました。
狼は、次に木の家の仔豚に言いました。その次はレンガの家の仔豚にも言いました。
みんなドアを開けてもくれませんでした。
狼はおんおん泣きました。 僕は友達がほしいだけなのに。
-雨上がりのある物の嘆き-
僕らのこと忘れていかないでよ。他の奴らと同じくらい役に立つだろ。
コンビニやスーパーでほいほい買ってはころころ置き忘れて、僕たちは使い捨ての道具じゃないんだぞ。
おしゃれな奴は大事にするくせに、本当に人間は勝手だな。
-正義と大義-
目の前の友に私は銃口を向けた。撃鉄を起こし、照準を眉間に据えた。
「何か言い残すことはあるか」
「お前の情けない顔見ると、笑っちまうよ」
友は乾いた声で笑った。涙が腕を滴り拳銃を濡らしていることに気づいた。国のためだ。国のためだ。 私は自分に言い聞かせた。
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