雨続きの夜に、

きおり

序はじまり


『ぼくのおかあさんなんだから』


 いつだったか、兄に言われた何気ない一言。

 ただの会話の途中だったか、ケンカの最中だったか…そんなことすらもう忘れてしまったけれど、今でも消えない。

 当時の声と、その後に降り出した雨の音だけは、はっきりと覚えている。

 それは私を慰めるように、そっと。温かく。



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