魔術師殺しと剣術少年

椿

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予め読んでもらった方が有難いですが、最低限は本文中で説明します。


◇魔術

 魔術とは魔力を使って異世界の物理法則を現世に適用させることで、物理法則を改変し不思議な現象を起こす技術。

 基本的にきちんと学べば誰でも使える。魔術にも得意不得意が有るが、それは数学が得意とかと同じ話で、ファンタジーでよくあるこの属性にしか適性が無いみたいなことは無い。ただし異能者は別。

 ただ手順をなぞるだけでは使えない。きちんと原理を理解し、目的をはっきりさせ、動作と意思を接続させる必要が有る。そうすることで、初めて世界に意思が伝わる。宗教施設での祈りに近い。祈るときにただ手を合わせているだけでは意味が無いだろう。これらの理由から、魔術は理論を理解しないと使えない。もしそうじゃなかったら日常生活で魔術が起動して事故が起きる。これが上手くなると圧縮詠唱等で手順を省略しても魔術行使が可能になる。戦闘中にじっくり準備は出来ないので、戦闘魔術師は意思と動作の接続が上手くないといけない。

 基本的に生物にしか使えない。礼装は自動で動くことも有るが、それも元を正せば人間が作った物であるし、同じ動作を繰り返す事しか出来ない。

 異世界の法則を研究する自然科学の一分野ともいえるかもしれない。

 現代魔術以外は現実世界のオカルトをベースにしている。

 何でもできるわけでは無い。基本的にエネルギー保存の法則と質量保存の法則、不確定性原理等は違反できない。もちろんE=mc2に従って相互変換することは出来るが。後不確定性原理の範囲内なら変化する。

 民間信仰等の古典魔術、それらを統合し、体系化した古典魔術、自然科学と組み合わせた現代魔術の三種類がある。古典と近代は定発生した年代で区分けされることも多い。文字通り近代以降の魔術が近代魔術とされることが多い。

 慣れていない人が知識を急激に詰め込むと、物理法則の変化に耐えられず最悪死ぬ。同じ理由でコンピュータに魔術的情報を入力することも出来ない。魔術が広く公開されると意図せず見てしまう可能性が高くなり、これのリスクが上がるので魔術の存在は公開されない。特殊な知識を独占したいという願望も有るが。

 基本的に後世になればなるほど発展するが、神造礼装や聖遺物等は例外で、現代の礼装より性能が部分的に上の場合がある。前者は神は人間の知らないことを知っている+神格が意図的にその礼装に力を送っているから。後者は感染魔術の要領で元の持ち主の力を受け継いでいるから。

 魔術戦闘においては、防衛側が圧倒的に有利。自陣では結界や礼装のサポートを受けることが可能で、他の場所で戦う時よりも強くなるからである。


◇魔法

 再現性が低い魔術の事。魔術では不可能とされていることが出来てしまう事も有る。

 ちなみに異能者も似たようなものだが、そちらは魔法とは言わない。


◇礼装

 魔術的な効果のある道具。人が作った物と、神格が作った物が有る。後者を神造礼装と呼ぶ。伝説の武器等にはそういった物もある。

 基本的に自分で作った方が良いとされる。これは礼装作成にも動作と意思の接続が必要で、結果的に作った人の癖が出るからである。だが、慣れれば他人が作った礼装でも問題なく扱える。一流の戦闘魔術師に至っては、そこら辺にある魔術とは無関係な目的で造られた図形等を、無理やり魔術的な象徴として利用することも可能。

 礼装には様々な形式が有る。武器の形をしたものや、タロット等のカード、さらには魔導書も礼装と言える。

 魔導書には自己保存機能が有り(魔力を通している間だけ有効)、壊れにくくなる。


◇魔術師

魔術を使う事を生業とした人。

 元々先祖代々の魔術師の家に生まれた人と、何らかの理由で一般人だったのに魔術を学び始めた人の二通りがある。

 前者は家ごとに目標が有り、それに向かって研究を行っている。世界の真理を解き明かすとか言っていることが多い。だが、目標を達成してしまい、技術が伝わっているだけの場合もある。その場合勢力争いや名誉の確保に精を出すことが多い。

 後者は挫折や悲劇を経験したり、普通では叶えられない願望が有り、それを何とかするために魔術を学ぶことが多い。後者が一代では目標を達成できなかったり、せっかく学んだのだからと子孫に技術を伝承させることで魔術師の家が増える。

 魔術を知らない人を見下す傾向が有る。歴史の長い魔術師の家の方がその傾向が強い。

 魔術師が子孫に魔術を教える事が多いのは、才能を遺伝させることが出来る事と、単純に自分の子供だと、幼少期から魔術を叩き込むことが出来るから。

 戦闘を目的とする魔術師は少ない(誰かに復讐したいとかで魔術を学び始めた人以外)。ただし、魔術師の家同士で良い地脈等をめぐって争う事も有るので、各家又は派閥ごとに何人か戦闘魔術師が居る。

 新しく魔術を学ぶものは弟子入りしなければならない。教える方には恩を売ることが出来る。一見余り意味が無いように見えるが、関係が代々続くことも多いので割とメリットは有る。権力や名誉を得たり、地脈の流れが良い土地を確保するには人手が有った方が良いので、派閥のメンバーを増やすことは大切.

 倫理観がぶっ壊れている人が多い。そもそも倫理に抵触するから止める程度の願いでは魔術を学ぼうとしない。そして、そんな人間に代々育てられた魔術師の家の人間も真っ当な倫理観を持たない。自らの目標を第一とし、その為には表側では犯罪になることも平気で行う。

 魔術師は様々な魔術知識を身に着けているため、それ自体が一種の魔導書とも言える。その為魔術師の体にも自動防御が働き、攻撃や呪詛等への耐性が一般人より高くなる。戦闘魔術師はこれとは別に無意識下で防御魔術を起動しているためかなり死ににくい。

 ちなみに魔術師が一般人という場合、魔術を知らない人という意味である。その為、各国の首脳だろうが王族だろうが魔術を知らなければ一般人扱いされる。これは魔術を知らない人を見下すニュアンスが有る。

 基本的に魔術師に必要な能力は科学者の才能と同じで、発想力、思考力、分析力等が必要。ただし、戦闘魔術師の場合は知識量と演算、思考速度、並列思考、意思と動作の接続、並列作業能力、空間認識力、魔力の感知能力、体力、戦闘技術等が大切。

 魔術師は頭が良い必要が有るので、演算能力と記憶力を上乗せする。魂魄に手を加えることで、外付け演算装置のようなものを付けることが出来る。これは、使えば使うほど性能が上がり、未熟な頃に付けた方が多めにやっても人格が壊れるリスクが低いため、基本的に幼少期に付けられる。当然後から魔術師になる人は無理だが。これをどこまで付けられるかも魔術師の才能の一つ。戦闘メインか研究メインで上げる能力が変わる。基本的には安全。ちなみに異能者は似たようなものを先天的に持っている。

 大金持ちの魔術師は資産運用で稼ぎ、研究に専念できるが、大多数は表で何か仕事をして研究費を稼いでいる。魔術を使って金を稼ぐことも有るが、やり過ぎて経済に影響が出ると消される。ちなみに資産に余裕が有ると分家を作ることが出来るが、そうでない場合一人に資産を相続させて負担を軽くする。


◇神格

 神や天使の総称。基本的に魔術的なエネルギーの集合体で、肉体を持たない。対応する宗教の異世界に居る事が多い。現世に居る神も存在する(日本神話の国つ神等)。

 強大な力を持つが、現世では安定して存在できない。その為、呼び出すより追い返方が簡単。結果戦闘で神格を丸ごと呼び出して使役することは少ない。元々現世に居る神は別だが、そちらはそこまで高位の神では無いのでどうとでも出来る。


◇魔術の用語、技法等

魔力

 魔術を使うためのエネルギー。生命力を変換してうみだす。生命力を使うと疲れる。

 魂魄と同一座標で発生した熱、即ち体温が生命力の正体である。

 非常に質の高いエネルギーで、様々なエネルギーにロス無く変換できる。

異世界

 文字通り異世界。別の場所にあるのではなく、現世に重なって存在している。天国、地獄、高天原、アースガルズ等の神話で出てくる世界もこれ。

 この世界の法則を適用させることで魔術を行使する。

地脈

 地面を流れるエネルギー。異世界の法則を適用しないと観測できない。

 これや異世界のエネルギーは既に方向性が決まっているため、魔力より質が低く何にでも使えるという訳では無い。

類感魔術と感染魔術

 類感は形が似た物、感染は一度触れ合った物が相互作用するという考えを利用した魔術。

 これに限らず魔術では象徴を用いることが多い。

占術

 過去の事については上手い人がやれば100%的中する。だが、未来のことに関しては天気予報のようなもので、ただの予想だ。そもそも未来は不確定なのだから確実なことが言える筈がない。

四大元素操作

 西洋における近代魔術の基本。世界を構成する四大元素をコントロールする。世界の構成物質を操っているため、極めた時の汎用性は高い。

 現代魔術的にみると、火は熱量をコントロールし、地、水、風は物質を個体、液体、気体に分けることで効率よく形状を変化させる技術。物質の状態によって扱い方が異なるので、分けるのは合理的。

呪術

 いわゆる呪い。類感と感染を利用したものが多いが、当然それ以外も有る。魔術師が本心から恨みを口に出せば、呪いとして成立する。

 魔力があるだけで防げるので魔術の中では極めて防ぎやすい物である。

 基本的に一流の魔術師には効かないどころか呪詛返しされるので、格下にしかやらない。

身体強化

 身体能力を引き上げる魔術。ただしこれだけだと頭と神経が付いてこず、動きすぎてしまう。その為魔術師思考速度を上げたり、神経の情報伝達速度を上げる魔術を併用する必要が有る。

召喚と喚起

 召喚とは神や天使を自分の体に憑依させる技術の事。喚起は魔法陣の中に悪魔等を呼び出すこと。

 現世に居る神格なら別だが、異世界から呼び出した場合、現世では不安定なので呼び出すより追い返すほうが簡単。

魂魄

 アストラル体やエーテル体等の総称。それぞれ、アストラル界やエーテル界という異世界に現世の肉体と同座標に存在する。

人払い

 魔術の隠匿や被害の防止のために魔術戦闘における必須の技能。周辺を居心地の悪い空間にした上で、認識できないようにして人が近づかないようにすることが多い。強制的に出入り不能にするのはパニックが起こるので良くないとされる。

結界

 ある程度広い範囲を魔術の影響下に置く技術。外界との隔たりを造り防御するものや、内部に何らかの効果を与える物などが有る。人払いもこれの一種。


◇魔術結社

 魔術師達の集まり。広義では各国の魔術機関や、大きな魔術師の家、反社会勢力等が雇った魔術師達等もそうだが、含まないことが多い。魔術師が主導した魔術師だけの組織。

 基本的には血縁や師弟関係等を無視して目的を同じとする者が集まった物を言う。黄金の夜明け団等が有名。


◇異能者

 生まれつき特殊能力を持った人間の事。

 超能力者ともいう。普通の魔術ではできない事が出来る場合がある。

 どこかの魔術師に保護されているか、身を守るための戦闘能力が無いとたいてい実験台にされる。


◇人外生物

 吸血鬼とか仙人とか鬼とか色々いる。人間より強いことが多く、二十三魔人にも何人かいる。異能者と違って遺伝子が人間と異なっている。


◇二十三魔人

 世界中で物凄く強い魔術師を記録した物。第一次世界大戦の頃に出来た。最初二十三人だったから名前がこうなったが、別に二十三人固定という訳では無い。

 戦争で強い魔術師なので、戦争で役に立たなければ入れない。例えば優斗が氷華に勝てるぐらい強くなっても、一対一以外弱いので入らない。

 強い魔術師のランキングだが、魔術師じゃない(というかそもそも人間じゃない)生物が混ざっている。だが、実体のない神格等は入らない。

 一位と二位は設立時から変わっていない。五位から上は明確な実力差が有るが、それ以下はそこまで違わないとされている。ただし、手札を隠している者も多いので実際は分からない。

 魔術学会が把握していない者は入らない。


◇魔術学会

 イギリスのエインズワース家が主催する世界中の魔術師が集まる学会。毎年年末に開催される。二十三魔人の選定はここで行われる。


◇社会への影響

 魔術師の世界には法は無い。表世界に見つからなければ何をやっても問題ないが、余り派手に事件を起こして隠蔽出来なくなったり、経済活動に支障をきたしたりすると政府機関等から制裁が来る。これは魔術師は簡単に隠蔽可能で、発見が難しいというのも有るが、最大の理由は殆どの魔術師がまともな倫理観を持っていないからである。魔術師を一般人が取り締まるのはほぼ不可能で、魔術師に依頼するしかない。だが、殆どの魔術師は目立たない範囲で人を殺すことに抵抗が無いので、それを取り締まるとなれば反対される。そうなると一般人にはどうしようもないので(精神支配とかされるので抵抗すら出来ない)、事実上不可能。また、一部の国が多少の犠牲よりも、魔術の発展(=軍事技術の発展)を優先しており、他の国も魔術師を弾圧できなくなっているというのも有る。

 基本的に各国は軍か警察内部に魔術期間を設置している。これは魔術師の資金源の一つ。普段から魔術的な侵攻と防衛を繰り返しており、戦争ではこっそり魔術師が動員されることも多い。また、やり過ぎた魔術師に対する粛清も行う。

 日本の場合、組織図上は公安に有り、霧崎系の人間が多い(技術の問題も有るが、単純に本拠地が東京のため連絡等が行いやすいから)。どうしようも無くなると氷華にお鉢が回ってくる。魔術師を殺しまくって研究を遅らせている氷華は嫌われている一方で、基本的に放置するという考え方に忸怩たる物を感じている職員からは賞賛されている。

 また、テロリストや反社会的勢力等も魔術師を抱え込んでいることが多い。それどころか、過激な思想を受け継ぎテロを主導する魔術師の家や、反社会的勢力のトップが魔術師という場合もある。

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