研げ、たった一太刀しか振れぬ諸刃の剣を

スライム道

第1話

ああ、もうすぐだ。かつて故郷を焼き払い初恋の人を奪っていったクソみたいな王族をぶち殺せる。


俺はたった一人でそれを成し遂げるために剣を振るった。


山で地龍を


海で水龍を


嵐で風龍を


火山で火龍を


剣を振るい魔物を殺しまくった


人助けも、数えきれないくらいしただろうか


友と呼べるものも出来た。


このまま復讐をするのをやめようかと思った


でも再び故郷を訪れたとき無残な過去が俺を再び闇に誘い込んだ


それから王族に会う為に功績を求め俺は王国中の村々の助け周った。


それから王都を襲いに来たという魔物を殺した


名声を手に入れ王国の勲章すら貰えるくらいに


それもこれはたった一振り


俺の大切なモノを奪った奴に


振るう為だけの為に


この剣を研ぎ続けた。



王国の謁見の間で勲章を貰う際に王太子に剣を振る為だけに


そこには初恋の人もいた


王太子の隣に


だがそんなことはもう俺には関係無かった


淡い期待なんぞ抱かない


俺は剣を振るうしか能の無い人間


ただ一つだけ絶対曲げないものを身につけろ


それが俺の親父の口癖だった。


だからこそ俺は剣を振るう


今この復讐だけは絶対曲げないと


誓って


その時を迎えた


「これより勲章式を始める。勲章者は王の御前へ。」


この略奪者の一族は村を焼かれた村人を只の英雄としか思っていない。いや単にドラゴンへの復讐を果たした男とでも思っているのだろう。


「では勲章を授けよう滅龍の勲章だ受け取るがいい。」


王が俺に勲章をつけようとしたその時だ。


「外道の一族からの勲章なんぞいらんわ!」


俺は剣の柄を抜いた。柄は俺の大切なナニカを吸い剣と化す。村に伝わる諸刃の剣、別名守護の剣を王の後ろにいる王太子に斬りつけた。


「斬られた、父上死んじゃうよー!」


凛々しい顔を崩し子供のように泣き叫ぶ王太子。剣は砕け散った。


「貴様!何が目的だ!早くこの者を国家反逆罪で捕らえよ。」


王は王太子が斬られたことに同様しつつも剣が砕けていることに安堵し取り押さえるよう衛兵に言う。


俺が王太子の身体で斬ったのは生殖器と両耳


人殺しをする外道にはなるな


母が口酸っぱく言った俺への最後の言葉


そして囲んで来た衛兵たちから剣を奪い俺は宣言した。


「では反逆者として反逆しようか、かかってこいこの村焼きの外道のように二度と子孫を残せない身体になりたければな。外道の一族達よ。我が一族が貴様らの繁栄を許すと思うな!」


俺は剣を振るう


一つは


もう砕け散った諸刃の剣を


もう一つは


もう磨耗し切った復讐の剣を


一年かけ何度も研ぎ振り続けた。


そして俺は死んだ。


初恋の人を残して


あの世でもまた研ぎ続ける村の守護の剣を

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