初老の女
透明人間
第1話
今、電車に乗った。博多駅からだからおそらくは長時間電車に乗るものが多いのだろう。順番を待つため列に並んでいた。この駅が始発であるから容易に座席に座ることができるだろうと考えていた。
電車が到着し、列が動き出す。それを待って電車に足を踏み入れる。よかった、まだ座席は空いている。そう思って座席に向かおうとしたその時、私の並んでいたひとつ隣の扉から入ってきた初老の女が私のことを間接視野で見るなり駆け足でその座席に座った。少し笑いそうになったのを堪えて別の空いている座席に座った。仮にお互いが同じスピードで足を進めていたのならば私の方が僅かではあるが先にその座席に到達していただろう。ままある事ではあるがこのような場面で走る人間を初めて見た。
人生を生きていると、時折、醜いなと感じる事がある。そもそも、人間というものは醜いのだからどうもこうもしようもない。だがそれでも心の中で「醜い」と感じてしまう事は、道に捨てられている空き缶のように日常に転がっている。
初老の女 透明人間 @yoloshikuooo
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