第25話 マクネルファー

朝、寝袋から起きて、既に起きていた二人と共に

朝食を眠気がまとわりつく頭で食べる。

昨夜は惜しかった。まあ、いずれ……。

などと考えて、食べ終わり、例の爆発炎上した研究所へと

出かける準備を始める。


一時間後には、俺たちはまだ煙がくすぶっている

真黒に焦げた大きな三階建ての建物跡の前に立っていた。

「わりとデカかったんだな」

「お金持ちの家ですわね」

バムは黙って、見上げている。


「拘置所に面会に行きますの?」

そう尋ねてくるファイナにバムは即座に頷いた。

「いや、関わらない方が……」

「何となく気になります」

「そうですわね。行ってみましょう!」

女子二人に、引っ張られて俺は

ミルバスの拘置所へと向かう。


地図を見ながら何とか辿り着くと

拘置所の警官たちからはあっさり面会が許された。

たまに俺たちのように、捕まったマクネルファーに

会いに来るヒマ人がいるらしい。

牢屋越しに、ベッドの上で寝ている

マクネルファーを三人で眺める。


看守が起こしてくれようとするのをバムが止めて

「あとは、私たちだけでお話できませんか?」

看守はあっさり引き下がって、煙草を吸うと言って出て行った。

バムが優しく声をかけると

「また、わしのファンか……人気者は辛いのぅ……」

とマクネルファーは上半身を起こしてこちらを見てきた。


ファイナが前へと出て

「おじいさんは何で、家を爆発させたんですの?」

「……崇高な目的があるんじゃよ。凡人には分からんな」

いや、このジジイめんどくせえわ。もういいだろと俺が帰ろうとすると

バムから手を引っ張られて


「燃えたのは料理研究所ですよね?

 何の料理を研究していたんですか?」

バムの質問にマクネルファーは

「味覚の狂った貴様らにも、食べられるまともな料理じゃよ」

バムは腕を組んでしばらく考えると


「……罰金代わりに出します。ちょっと一緒に

 宿まで来て貰えませんか?」

バムは俺が止める間も無く、牢屋の外の詰め所へと駆けて行った。

いや、このジジイ助けても仕方ないだろ。

何を考えてるんだと、俺は途方に暮れる。


大威張りのジジイと共に、俺たちは拘置所を出て行く。

「神様ってのは居るもんじゃな!

 前回は罰金が払えずに半年服役して、それから家の立て直しに一年かかったが

 今回は一日で出れたわい!」

「よかったですわねー」

ファイナが微笑む。バムが俺に近づいてきて


「我々はお金ならありますが、拠点はありません。

 それにマクネルファーさん、何か感じませんか?」

「いや、変なジジイだとしか……」

「彼が、我々の仲間だとしたら?」

俺は黙り込む。何とも言えない。


宿に戻ってすぐに、ファイナは作り置きの食べ物を

マクネルファーに与える。なんと美味い方だ。

最初は警戒していたマクネルファーも

そのサンドイッチをぺろりと平らげて

「……おぬしら、もしや……狂人ではなかったのか?」

と尋ねてきて、バムが説明する。


「そうか、このエルフの嬢ちゃん以外か……」

ファイナは不思議そうな顔で、二人の話を聞いていた。

「協力を頼めませんか?料理大会で使う食材や

 料理を研究するために、人手と場所が必要なのです」

「料理大会か……狂人どもの宴に突っ込むとは

 中々イカしておるな」

マクネルファーは、自分がなぜ

定期的に家を爆発させているか話し始めた。

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