神谷さんの無表情を壊してみる計画
抹茶ネコ
第1章 彼と彼女の駆け引き戦争!
第1話 作戦①ドッキリ!
───登校を済ませ隣の席をチラッと伺うと、今日も彼女はそこに座っていた。窓際の席に人形のように不動のまま置かれた彼女は、さながら花瓶に差された花のようにも見て取れた。
───神谷
ようは、俺のような平凡な生徒が馴れ馴れしく絡んでいいような人間ではないのだ。つまりは高嶺の花───別次元に生きるような人間と呼べるわけである。
しかし、と俺は以前から気になっていたことがあった。それは───、
「か、神谷さん、おはよう!」
「……
───神谷さんの顔、マジで一ミリも変わらない問題!
二年に進級しこのクラスで彼女と隣の席になり、四苦八苦を積み重ねた挙句にとうとう俺は、彼女に言葉を投げかけられる程度には成長した。……気づけば進級してから半年、季節は秋へと移ろいでいる。このまま三年になり彼女と離れてしまったら、俺はこの一年で、彼女の笑顔を、驚いた顔を、動揺した顔を、色んな顔を───拝めなかったことになるのだ!
そんなことは断じてありえない、というか嫌である!俺の細胞の一片一片が、血の一滴一滴が、『美少女の神谷さんの色んな顔を見てみたい!』と叫んでいるのだから───!
「……遅刻、ぎりぎりですね。須藤くん、明日からは気をつけてください」
「あ、ああ……ごめん。気をつけるよ」
そんな俺の欲求(あるいはエゴ)を差し置いて、彼女はビシッと説教をしてくる。……風紀委員兼生徒会長としては、遅刻など死に値する世紀末の大事件と捉えているのだろう。断頭台にだけは立たされないようにしよう───そう改めて心に誓う。
「と、ところで神谷さん……」
俺の声に反応した彼女は、形の良い瞳をこちらに向けた。───チャンス!俺はそう心の中でハイジャンプする。
───岩石のごとく表情を崩さない彼女に、俺はすかさず鞄の中から威勢よくそれを取り出した。……今日からの俺は一味違う!ここで神谷さんのリアクションをこの手にしてみせてやるさ!
俺が取り出したのは、おもちゃ屋などに売っている下らないアイテム───ドッキリ用の飛び出しバネおもちゃだ。これで貴様の息の根を止める───っ!
びよーん。
「……これは、おもちゃの類ですね。没収します」
「すいませんでした」
なにも効果はなかった。……リアクションの一つもくれたらいいものを、あろうことか彼女は変わらぬ表情で俺の手元からおもちゃを取り上げ澄まし顔。───くっそぉぉお!なんて強者!
「……いつまでそこに突っ立っているのですか。そろそろ朝のホームルームですから、早く座ってください」
「……はい。自分で自分が情けないです」
【得点】須藤0 神谷1
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