第7話

 警察署から帰宅する途中、俺と冬月はある店に来ていた。

 店の中には様々な日本刀や西洋にあるような剣の模造刀や竹刀などの武器と呼ばれるものが大量に並べられており、外国人のお客が比較的多い店だ。

 店主の趣味らしく、店内の装飾も西洋風の武器屋みたいな雰囲気となっている。


「いらっしゃいませ、霧崎鍛冶店へようこそ!」


「どうも、今日はやけにご機嫌だな莉沙」


 この店を切り盛りしている店主の霧崎莉沙。身長がかなり高く、女性にしては体格がよくそれでいて美人という女性。

 いつも俺の刀の手入れを頼んでおり、外国人のお客さんが多いこの店の数少ない日本人の客でもあるのだ。

 昔は莉沙の祖父の店だったが数年前に莉沙が継いだという店である。


「まあね、ちょっと楽しみなことがあってね。そっちは今日もデート?」


「今日もってどういうことだよ」


 俺はため息をつき呆れながら答える。

 莉沙はよくこの様によくわからない冷やかしをして来るので少々面倒くさかったりしている。

 冬月は動揺し、慌てた様子だ。


「ち、ち、違いますよ! 仕事終わりに寄っただけです!」


「あはは、ごめんごめん。ところで今日はあれを取りに来たの?」


「あぁ、次の仕事でもしかしたら危なそうなところに行くかもしれなくてな」


「そういうことね。いつものことだからまた無茶するんじゃないの? まぁいいわ、ちょっと待ってて」


 そう言って莉沙は店の奥へと向かい、しばらくすると莉沙が刀をもって戻ってきた。


「はいどうぞ。今回は刃こぼれがひどかったけど何したのよ」


「い、いやぁ、強盗犯が発砲してきたときに何発か刀に当てられてな」


「何やってんのよ、あんたは」


 そう話しながら莉沙から日本刀を受け取り、刀の出来を確認する。

 光の反射により輝くほど美しい刀身をしており、以前よりも鋭さが増しているように見える。


「さすが莉沙。いい感じになったな、ありがとう」


「まぁね、私にかかればこんなもんよ」


 莉沙は胸を張って自慢げにしている。

 普段から自信過剰なやつではあるが実力は折り紙付きなうえに、ここまでの出来栄えだと何も言えない。幼い頃から教わってきていたことだけはあることに関心するしかない。

 それにこの刀は俺にとってとても大事な刀で、失うわけにはいかない代物なのだ。

 突然、何かを思い出したかのように莉沙が口を開く。


「そうだ、今度黄野町ってとこに行くことになったんだけど、二十年前に変死事件みたいなのあったじゃない? それでオカルトの仲間に聞いたら幽霊が出るとかいわれてるじゃない。それで何か知ってることないかな?」


 表情を明るくし、少しワクワクしている様子で俺と冬月を見る。

 そういえばこいつ、オカルトとか好きだったな。


「あぁ、黄野町な。いろいろあるらしいな」


「霧崎さんは何用で行くんですか?」


「オカルト好きとしては幽霊が出ると聞いたら行くしかないじゃない!」


 莉沙の発言に苦笑いを浮かべていると続けて莉沙が「まあ、そこで会えるといいわね」と言った。

 横で冬月はなぜかムッとした表情で莉沙を睨んでいる。すると莉沙が冬月に手招きをしており、怪訝そうな顔しながら莉沙の方に向かっていく。

 莉沙が何か冬月に言ったみたいだが、直後に冬月が突然硬直する。


「……おい莉沙。冬月に何話したんだ?」


「別に何でもないわよ! ほら、そろそろ店をたたむ時間だし帰った帰った!」


 莉沙に追い出されるように店からつまみ出されてしまう。

 そういうところは相変わらず自由というか……

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