エスプレッソの香りにつつまれて・・・

浮世離れ

第1話  極めた男

午前2時


24階の窓から見渡す街が俺を呼んでいる。


俺は部屋の中を青白く照らす間接照明の光の中、

ピチピチのマイクロビキニ一枚だけで悠然と立ち尽くし、

目の前の長鏡に映った自分の惚れ惚れとする肉体美に、

更に入念かつ丹念に落ち度がないかを全方向からチェックする。


部屋中に響き渡る音楽


喉に流し込むバーボン


♪真っ赤な薔薇は~アイツの唇~~


ハードボイルドな俺のテーマソングは、

もちろん男の美学ルパン三世である!



「ふふふのふ」


この危険でニヒルな俺の微笑みを見て、

街中の女ども達は自分の子供達にすら、


「あの人に絶対に話かけてはダメよ!」

とヤキモチを焼いている。


子供にまで嫉妬させるなんて・・


俺の微笑みは人妻さえも虜にしてしまう。


なんて罪深き微笑み・・


仕方がない・・


これも持って生まれた宿命というやつだ・・



さてと・・・


そろそろ身支度を整える時間だ・・・


俺は真っ赤なYシャツに花柄の蝶ネクタイをつけ、

全身スパンコールのスーツで完全武装した。


「よし!行くか!」


報道関係に籍を置く俺の朝は早い


玄関を出て階段で一気に下まで降り、

俺は一階で待機させてあった、

自分のマシーンをアスファルトに出した。



「ぶる~ん!ぶろろろ~~ん」


俺の口から出た軽快なエンジン音が深夜の闇に鳴り響いた。



周りの奴らは俺のマシーンの事を


「ママチャリ」とか呼んでいるがそんなことは気にしない。


俺は


「ぶお~~~~ん」


と叫びながら報道デスクへとマシーンのペダルを踏み込んだ。



信号待ちで止まると横の車の奴らは、

必ずと言っていいほど俺に熱い視線を送るが、

これも俺の全てから滲み出るカッコよさとオーラに、

顔を引きつらせて苦笑いをするしかないのであろう。


全く朝から罪作りな俺である・・


華麗なスピンターンを決め会社の前にマシーンを止め、

俺は自分のデスクの上に大量に山積みされた、

重大な情報の詰まった書類をマシーンのカゴに突っ込んだ。



「じゃあ行って来るぜ!」


俺は無能なリーダーらしき男に、そう言い残し出発しようとすると


「最近、奇声をあげて新聞を配っているって云う苦情が入っているが、

まさかキミじゃないよね?」



(全くこいつは何をいっているんだ?)


俺は無能なリーダーらしきの言葉を無視して、マシーンのエンジンをかける



「ぶろろ~ん~~ぶ~~~ん」



すると俺の最大のライバルである牛乳配達の若造が、

俺の前を凄いスピードで通り過ぎて行った。



(しまった!)


こうしてはいられない!



「ぶるるる~~~ぼぼぼぼうぃいいいい~~~ん」



俺は一気にマシーンを夜明けの街へと走らせた・・・











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