29話2Part 年明け早々の悪魔達②
「......だから、おすすめに上がってきたから聞いてみたら、意外と良かったんだって。だから聞くようなったの」
「そうなんだ」
「へー」
......今現在、時刻は12時29分。昼時も昼時な時間なので、332号室に集まった望桜、葵雲、そして暇だからとやってきた瑠凪は、
「......よし、」
葵雲による今朝の動画に関するめちゃくちゃ簡潔な説明を聞いた後、机の上に置かれたNcdonald'sのハンバーガーいくつかと、パック入りのナゲットやらパンケーキやらをまじまじと見つめていた。
冷めているとはいえまだまだ美味しそうな匂いを発し続けるハンバーガー達は、空腹の3人の腹にかなり響く。
「......これが
「或斗は食べなかったんだな。ガルダの異空間の中にいた時、ナックの新商品が〜とか何とか言ってたのに」
「ああ、あいつは......」
Ncdonald'sやノスバーガー、レンタッキー等のファーストフード店やコンビニ等の新商品を必ず確認すると言っても過言ではないレベルで通っている或斗が、今回初めてNcdonald'sの新商品チェックを諦めたのだ。
その理由は簡単で、
『い、いつもみたいに新しいの下さい!!って頼んだらこれが来まして......お、俺、ぶっちゃけ食欲だけで店潰せる自信はありますけど、から、辛いのだけは無理です〜!!主様食べてください〜!!』
「......って、1口食べた後で泣きながら来たよ」
「うわあ......」
或斗は辛いのが大の苦手で、食べられなかったのである。
その話を聞いて、望桜は改めて激辛フィッシュマフィンバーガーを見てみる。
中から覗く明らかに色がおかしい赤色のフィッシュマフィンを除けば、バンズやレタス、トマト等ベーシックなハンバーガーと何ら変わりはない。
しかし、
「すん、う゛っ......これ、明らかに匂いやべえけど......」
望桜が匂いを嗅いでみると鼻につんとした匂いが届いて、セーター等を着ている時にドアノブに触ろうとした瞬間、不意に襲ってくる静電気とどこか似たものを感じる感覚だった。
「大丈夫。これは僕の昼ごはん兼夜ごはんだから」
「え、お前これ食べれんの!?」
「瑠凪は昔から、辛いもの好きだよ〜?」
「マジで!?」
更に、まさかの瑠凪が辛いもの好きだという事を知って、見た目とのギャップ的な色々にどっとした衝撃を受けた。
何やかんやで1代目魔王軍の時から知り合いだという葵雲も肯首して言うのだから、本当なのだろう。
「でも僕、ハンバーガー1個で多分限界だから、こっちは2人で食べて」
「お、おう......」
「わーいエビだー!!」
望桜は、瑠凪が差し出したガーリックシュリンプとその他のハンバーガを受け取り、テリヤキバーガー他ハンバーガー3つを取り出して残りを葵雲に渡した。
「ってか、葵雲は朝、何でこっちに来てたんだ?」
「ああ......あの部屋ゴキブリ居たから、逃げてきた」
「えぇ......こっちとしては、変な誤解をうみそうで嫌なんだけどな......」
「葵雲は、あのスライムの音のどこに魅力を感じたの?」
そして話題は再び、葵雲が朝流していたスライムASMRの話に戻り、葵雲の言い草に望桜は引き、瑠凪は野次馬のノリで葵雲に問いかけている。
「え、なんか餅をつく音に似てるなーって!」
「「は......?」」
瑠凪の返答に対する葵雲の答えは至極分かりやすく、そしてかなり意味の分からないものだった。
望桜と瑠凪は互いに顔を見合わせ、各々頭の中で餅をつく音を想像してみて、
「「いや似てないだろ!?」」
完全に否定も、肯定もできない微妙なレベルの月とすっぽんに、やや疑問符調の声を上げてしまった。
「えー?嘘ー?」
「望桜、こいつ耳がめちゃくちゃいいから......」
「あ、そういやそうだったな」
望桜の頭に、ふいと1ヶ月ほど前に起きたあの出来事が思い浮かんだ。
それは、葵雲が部屋の中に1人でいる時にゴキブリが部屋に出現し、それから葵雲が逃げ回る音の
あの時、葵雲は"ゴキブリのカサカサと動き回る音が煩い"と言っていた。
だが、ゴキブリの移動音なんて殆ど聞こえないし聞こえても気にならないレベルの大きさのはずだ。
それが"
「ASMR自体は気が向いた時に聞くけど......スライムの音は、寝る時に流す音じゃないでしょ......」
そんな瑠凪の意見に対して、
「なんか美味しいものの夢見れないかなって思って」
葵雲はさらりとこう返す。
「それなら料理の動画とか見ればいいじゃん!?」
「そう?」
「普通そうなんじゃないの!?」
「へー、そうなんだ!!知らなかった!!」
葵雲のよく分からない考えに、瑠凪は若干顔を
「まあ、とりあえず食べようぜ」
「えびー!!」
「う、うん......」
望桜がとりあえず昼食を勧めると、葵雲は叫びながらガーリックシュリンプに手をつけ始め、瑠凪はどこか腑に落ちないような表情で控えめにハンバーガーにかぶりついた。
─────────────To Be Continued─────────────
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