29話3Part 年明け早々の悪魔達③
「あの、さ」
「......ん、どうしたんだい?」
「..................やっぱなんでもね」
......その日の夕食の席にて、望桜は的李と2人きりで4人がけダイニングテーブル(狭め)の上のスーパーのお惣菜数品を挟んで、向かい合っていた。
葵雲が30分ほどたった頃に"ゴキブリがいなくなったから帰る"とかなんとかのたまって帰った後、今度は瑠凪がおやつどきに"ネッ友とゲームのフレンド大会の約束してたから"と言って、持参した飲み物だけ置いて(多分忘れて)帰っていった。
なんて綺麗なスケジュール(?)揃い......望桜は他の人達の予定を知った後、思わず感心してしまった。
......そんな感じで色々あって、的李と2人きりで過ごす事になったのだ。
「......、」
「............?」
的李が黙々と"癖になる!おくらおかか"とかいう超絶和食っぽそうなお惣菜を食べ続けているのをじっと見つめていると、的李はその視線に気づいたようで不思議そうに望桜の方を見つめてくる。
......そもそも、いちいち意識するような間柄じゃねえんだぞ......
望桜は頭の中で、そう自分に言い聞かせる。
的李は元々、望桜にとっての(元)部下であり、今はルームメイトだ。
だから、
まあ、望桜は中性男子コンであり、現にそうだと自覚もしている。
瑠凪や魔王軍時代の(元)部下であるウァプラを可愛い可愛いと自分の中で褒め讃えたり萌えたりはするが、何も少年体系で可愛らしい子だけが好きな訳ではない。
『......もし、君、大丈夫かい?』
約140年前、望桜が魔界大陸中央部に位置する帝都·エインヘリアルにぽっと召喚され、周り悪魔だらけで割とガチで凹んでいた時にそう話しかけてきた瞬間から、"こいつ絶対側近にする"と望桜は決めて魔王職に当たったのだ。
切れ長でジト目気味な紅色の目はパイロープ·ガーネットを彷彿とさせる深い
「......」
「......、」
体は見た目20歳前後の男性にしては細いが、鍛えている分筋肉があってしなやかな体つきをしているから決してひ弱な訳ではない。
普通に顔も整っているし、綺麗な八頭身という体格も相まって男女どちらとも取れる身体的スペック。
そして本人はかなり上手く隠してはいるが、望桜には分かる......クールな見た目に反して、可愛い物と甘い物が好きだという事。
毎朝、早朝に起きて、リビングで本を読みながらいかにもクール系ですみたいな
まあ色々、そういうところも含めて中性男子コンとしては中々......(自主規制)を
「......望桜?」
「ん、なんだ?どうかしたか?」
「いや、さっきからずっと手が止まっているから......」
「ああ、いや、本当に何でもねえよ。それよりお前の方こそ、頭痛は治ったのか?」
食事中なのにピタッと手を止めて悶々と考えている様子が気になったらしく、気づいたら的李の顔が至近距離にあって望桜は内心焦るが、なんとか取り繕った。......
それでも一応、何かしらを考えていたというのは察されていたので、望桜は的李に体調について訊ねて誤魔化した。
「まあ、一応は......?」
だが、望桜の問いかけに的李は目を泳がせながらも答え、とす......と上げていた腰を静かに下ろして着席した。
そのたじろぐような、普段凛としている的李らしくない仕草に望桜は、
「食ったら風呂入って寝とけよ。病み上がりなんだから」
と、本気の心配を滲ませながら声をかけてやる。
すると、
「わ、かった、のだよ......」
「......」
なんからしくねえな、こいつ......望桜の中で、いつもの的李の姿をいくつか想像してみるが、
『もうちょっと家計のことを考えてから決め給え!!』
『16日前のことをうだうだ言い続ける暇があったら、......これでも見て次のバイトを探し給え』
『全く......本当に頼りないのだよ......』
怒っている所も呆れている時も、他にもポーカーフェイス気味だから分かりにくいが喜んでいる時や凹んでいる時等も一応想像してはみるものの、今の的李はそのどれでもなかった。
ただ単に頭痛やら昨日飲んだ酒の影響やらで気が朦朧としているのか、はたまた気が弱くなっているのならいいのだが、何かがあって普段通りでないのなら......と、色々考えて、
「お前、今日何かおかしいぞ」
望桜は思い切って訊ねてみる事にした。
「え......」
鳩が豆鉄砲を食らった、みたいな、まさしくそんな顔をする的李に、望桜は畳み掛ける。
「風邪でもひいてるんじゃねえの?あ、この時期ならインフルもあるな......寒いとか、関節が痛いとかないか?」
「な、ないけれど......」
「なら、他にどっか不調とかは?」
「た、体調は、特に、いっ、異変は......ないのだよ......?」
やや早口で身を乗り出して聞いてくる望桜に気圧されて、的李は望桜から目を逸らして、何なら顔ごと背けて答える。
だが、返答の最後に望桜の方をちらっと見たので、望桜もちょっとだけ面食らってしまうが、何とかにやけそうになるのを堪える。
「あ、でも、強いて言うなら......」
「強いて言うなら!?」
「っ、ど、動悸が、ちょっと......」
「動悸......?」
そして思いがけない不調を訴えられて、望桜は少し怪訝な表情を浮かべる。
「ほら、ドキドキするとか、心臓が早鐘を打つだとか......そういうの......」
「動悸が何かは分かってるが、何で動悸......?」
じとっとした目をして不思議そうにしている望桜を見て、的李は慌てて軽い説明を述べるが、望桜が不思議に思ったのはそこではない。
「......さあ、分からないけれど......」
「どういう時により激しく感じる〜とか、あるか?」
「あ、ある......」
「いつだ!?」
「っ......」
先程の的李のように、だが騒がしく、威勢よく的李の至近距離まで顔を近づけて返事を求めた望桜だが、圧されて
「............い、今......?」
「今......?」
今............いま............ima............なう............?頭の中で"今"という言葉が4週ぐらいぐるっと廻った後、
「............へぁ......?」
めちゃくちゃ頼りない変な声を上げて、望桜はますます怪訝そうに顔を顰める事となった。
─────────────To Be Continued─────────────
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