第1話4part おかえりなさい、魔王様!④
......ウィズオート皇国の、皇都·ラグナロクの中央にある巨大な建築物は、四方どこから見ても美しく気高く、皇族の居城たる威厳を感じられる厳かな装飾が大量に施された皇城·ヴェルオルガ城。
普段ならば城内で最も大きい部屋である大広間の壁は、聖教教会の語り継ぐ"神話"の内容を描いた絵画で窓や扉以外の場所はほとんど埋められていた。
ステンドグラスと金で華やかに彩られたドーム状の天井の中心には、ピンクパパラチアやレッドベリル、アレキサンドライトといったダイヤモンドよりも希少価値が高い高価な宝石が所々にちりばめられ、ベースはやはり金とダイヤモンドで形成されたシャンデリアが鎮座していた。
だが、今現在のヴェルオルガ城は壁や床が崩壊し、豪奢な天井や装飾も無惨に崩れ落ち見るに堪えないものとなっている。そのため、皇国中の建築士や奴隷達が集められ、急ピッチで復旧作業を行っている段階だ。
そうなっている理由は、1週間ほど前に終戦した第拾参弦聖邪戦争の際に、魔王である望桜が人間界進行のための最初の拠点として攻め落とし、それ以降1年ほど望桜達魔王軍に使用され、最後の最後で勇者であるジャンヌとルイーズがそのままこの場所を魔王戦の戦場として使ったことである。
そんな崩れた城を使うわけにも行かず、ウィズオート皇国の皇帝·ウィズ=ウェルイフと勇者軍の元帥達は、皇都·ラグナロクの上空にある
会議ほど堅苦しくもなく、かといってお喋りでもない、皇帝が勇者軍元帥達にあれやこれやと物を言うためだけの話し合いである。
「くそっ、あの勇者め!!もう少し儂ら皇族のことを考えて戦えなかったのか!?」
「皇帝殿にご不便を強いるとは、とんだ愚か者だ」
元帥の1人であるヘルメスが場の全員に呼びかけるようにそう言うと、
「全くその通りだねぇ〜」
勇者軍の元帥の1人であり、その元帥達を取り
「.......、......」
そのイヴの隣で一会燐廻がこくこくと無言で頷き、
「そ、そうですね〜」
アヴィスフィアがそんな2人の様子を数秒ほど見ていた後に、少し戸惑いつつもそう言った。
「......シメオン殿は、どう思われる?」
「シメオンさん?大丈夫ですか〜?」
そんな中、シメオンだけが黙ったままうんともすんとも言わないので、ヘルメスとアヴィスフィアが各々声をかける。
「......え、ああ、そうだね」
声をかけられてハッとしたシメオンがそう返すと、ヘルメスは満足したように皇帝の方に向き直った。
「政府に楯突くようなことを言い、皇族に頭すら下げぬあの横柄な態度......
「国民は知らないし教える気もないけど、魔王もどうやら殺したんじゃなくて逃がしたみたいだしねぇ〜」
「なんじゃと!?」
イヴの発言に、皇帝は椅子の肘掛けを拳で強く叩き、立ち上がった。
......その形相は、人を
「殺せ!!悪魔を殺さず皇族に貢献すらせぬ勇者などいらぬ!!殺すのだ!!」
逆上した皇帝が喚き立てているのを見て、イヴが皇帝の元にふと歩き寄った。
その様子を他の元帥達はその場で黙って見つめていた。
「国民にとってはジャンヌはまだ救世の勇者達の1人......だから大々的に処刑をするのはちょっと問題ありそうだよ〜?」
「知らぬ!!どうせ奴らなぞ束になったところで儂らには
「まあまあ落ち着いてよ〜!.......だからさ、よかったら僕に任せてくれないかな〜?」
「何か策があるのか?」
「あるから言ってるんだよ〜!あとは僕に任せて〜!!」
「......分かった、任せたぞ」
「おっけ〜!」
イヴが笑いながら元の位置に戻った時、皇帝から元帥達に話し合い終了の旨が伝わったのだった。
その後、
「あっ、ジャンヌ〜!」
イヴは皇城のすぐ近くにある騎士団の駐屯地を歩いていたジャンヌに声をかけた。
「ん、ああ、総帥か。どうしたの?」
「いや〜、ちょっとした用事があってね〜......ジャンヌは、今からどこかにお出かけでもするの?」
「いや、戦争後の報告とか書類整理とか色々終わったし、ルイーズの所に顔出しにでも行こうと思ってたんだけど」
「あらら〜、ならちょっとそれ、取りやめにできないかな〜?君に皇帝からお達しが来てるんだよ〜」
「へー、あいつから......まあ別に構わないけど、何?」
皇帝から何かを言われるような覚えがあるようでないジャンヌは、
イヴが皇帝に告げた作戦の初動は、この一言をターゲットであるジャンヌに伝える事。
「ジャンヌ、これから
この一言で、このお話の幕が密かに上がったのだった。
......この物語は、そんな(元)魔王とその仲間達、そして勇者が繰り広げる、てんやわんやで、笑えて、泣けて、時に辛い思いをする.…..そんな物語......
......勇者であり、ただの聖職者の娘である私が知っている中で、1番心に残っている10年間のお話。
─────────────To Be Continued─────────────
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