26話5Part Fake World Uncover⑤
......望桜達が異空間......クライナ·チャロフランドから脱出する30分ほど前、東京都千代田区にある厚生労働省ビルの前に、とある2人の少女が目の前にある建物を見上げながら立っていた。
「ここが厚生省......晴瑠陽さんからの指示通り書類は持ってきましたが、
そんな事をボヤキつつも「ま、ここまで来たからには行くんですけど」と軽く意気込みながら、手に持った黒色のハンドバッグの持ち手をぎゅっと握り締めた少女は、少し弱気な台詞を吐く割にはそれほど不安そうではなかった。
「私も手伝えるところは手伝うのじゃあ〜!困ったら私に言うのじゃあ!」
その横にいる中学生くらいの見た目の少女は、きらきらした瞳でハンドバッグを持つ少女の方を見ながら、やけに自信満々に神気を込めた手を掲げながらそう言う。
「準備はいいですか、
「もちろんできておるぞ!
......2人の少女......瀬良
晴瑠陽からの伝言内容はもう少し正確に説明すると、"厚生省に行ってこの資料を渡して、被害を最小限に抑えるべく尽力しろ"というものであった。
そしてその最後には、"無論、これはもしもの時のための案であり、事を未然に防げるのならばそちらを先に実行すること"と書いてあった。
「とは言ったものの〜......なんか私、ここ入りにくいのじゃあ〜......」
晴瑠陽からの指示を頭の中でもう一度復唱していた冬萌の横で、天津風はそうボヤく。
そりゃそうですよ、だって日本政府のお役人方がお堅い真面目な顔して働いている場所ですから......と、冬萌もまたそれを薄々感じていたので、天津風の弱気な発言を咎める事なくそのまま流した。
いくら2人が天界の
そんな環境で過ごしてきた2人にとって、同じように日本のお偉いさんの1部の方々が働いているが、皆ある程度の歳を重ねた......いわゆる"中年"の人達が第多数を占めて真面目な面持ちで働いている
「見たところ、何も起こってないように見えるし、現に起こってないし......瀬良ちゃん、他に指示が出てるならそっちを先にやろ〜......?」
「......です、ね。そうしましょう」
大天使といえど心は人間とさほど変わらない。そんな2人は厚生省の真面目なお堅い雰囲気、そして中にいる人達と自分達との(見た目の)年齢差に耐えかねて、中に足を踏み入れる事なく厚生省を後にした。
勿論やめたのは入りにくいからだけではなく、敵方に表立った動きがない&晴瑠陽が危惧していた事態にはまだなりそうもない以上、万が一事が起こらなければ自分達は......と、考えたのも理由である。
「んん、ふわぁ......」
その後、厚生省からとりあえず東京駅までタクシーで移動した2人は、銀の鈴待ち合わせ場所のベンチに2人並んで腰掛け、来栖亭はその場でぼーっとしていた。
その隣で、冬萌は神戸で予め買っておいた"これがあれば迷わない!!"とでかでかと書かれた東京の観光名所案内付きマップに、なんとはなしに目を通していた。
「寝てても大丈夫ですよ。何かあったら起こしますから」
「んー............じゃあ、お言葉に甘えて......」
冬萌の言葉を受けて、来栖亭は目を擦った後に、冬萌の肩にもたれ掛かりながら静かに目を閉じた。
ドー......ォォォン......
「......ん?あだっ」
その数分後、爆発音のような微かな音を、東京駅の雑踏の中で冬萌はふいと拾い上げた。
それと同時に地面がぐらつき、冬萌は危うくベンチから落ちそうになる。数秒間続いた地面のぐらつきはやがて大きくなり、
「なっ、なんだこれ!?」
「わっ」
周囲の人々はその揺れに立っていられなくなってバランスを崩してしまい、中には倒れて尻もちをついてしまったり、座り込んでしまう者もいた。
「じ、地震だ!!」
そんな誰かのありきたりな叫び声を皮切りに、
「うわああああああ!!」
「おかあさああん!!うええぇ......」
「ど、どうすればいいのよこれ!?誰か助けて!!」
辺りは一気に大パニックに陥った。
「な、なんじゃなんじゃぁ!?地震か!?」
寝かかっていた来栖亭もたまらず飛び起き、辺りを見回した後に隣にいる冬萌の方に慌ててそう声をかけた。......その時点で、揺れが始まってから10秒ほど経過していた。
人が立てず、電光掲示板や吊り看板ですら悲鳴を上げるレベルの揺れ。震度6強に値するほどのこの揺れは、時折一瞬だが特に強い縦揺れが混じっている。
「......え?冬萌ちゃん、これ......」
そんな中だがいち早く冷静さを取り戻した来栖亭は、同じく隣で落ち着いた様子の、だが戸惑いの表情を顔に淡く滲ませた冬萌の方に視線をやる。
「分からない、でも......」
冬萌の視線は来栖亭でも周囲の人々でもなく、
「地震じゃ、ないです。これ......」
普通なら既に砕け散って無惨な姿になっていたであろう、大きな銀の鈴が入ったガラスケースに向けられていた。
......普通ならば、耐震性のある東京駅の建物こそ崩れないとしても、辺にある店の照明が落ちたりショーウィンドウが割れたり、壁のタイルが壊れたり程度はするはずだ。
そういった類の建物の損壊が、今の大きな揺れでは、一切なかった。
正確にいうと、揺れたりはしているし棚などの大きなものを除いた、テーブルや立て看板などの比較的小さなものは、倒れている。だがそれでも、不自然極まりない現象が現在進行形で起きているのだ。
「こんなに大きな揺れで怪我人1人いないし、店の棚が倒れたり品が落ちたりしていないのも不自然です。これは、一体......」
「確かにそうじゃの......普通ならバリーン!!ガッシャーン!!ってなってるはずじゃあ」
「......!」
「ん、どうしたのじゃ?」
身振り手振りしながらそう言う天津風を横目で見ながら、冬萌が周囲の状況を確認していた時、ふと、冬萌は揺れが始まる直前に、爆発音のようなものが聞こえた事を思い出した。
「......この揺れが始まる前に、音が聞こえたんです。ドー......ンと、爆発音が」
「爆発音?」
「外でしょうね、多分......、............この様子だと怪我人もでなさそうですし、外の様子を確認しに行きましょう」
「らじゃー!」
建物が崩れる気配がないのと、周囲の人々は幸か不幸かその場から動けないでいるおかげで、逃げようとして転けて怪我をするみたいな事もなさそうだと判断した冬萌は、天津風に着いてくるよう目配せした後、
「飛んで移動します!!」
「おーけー!!」
背中から一対の白翼を展開させるべく神気を体内で素早く巡らせ、そう言った。が、
「......せ、瀬良ちゃん?」
広い&複雑すぎて"迷宮"とも名高い東京駅内で、さっき銀の鈴に来る時に駅内のマップと観光案内所、スマホのナビアプリを用いてようやっと辿り着いたことを思い出した冬萌は、
「大丈夫?瀬良ちゃ「ポータルスピア!!」
自分にとってはかなり痛い神気消費に目を瞑って、
──────────────To Be Continued────────────
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