14話2Part 化物(?)襲来②
「......五月蝿いなもう......」
「うるさいなじゃないよ!!そんなに考え込んでどしたの!?聞きたいことがあるならもっと手短で単刀直入に......」
「わ、わかったよ......あと1つだけお前に聞きたいことがある」
「......なに?」
未だ不機嫌そうに瑠凪の方に視線を向ける葵雲に、瑠凪は本日最後の質問をした。
「......お前はフレアリカとその両親......を殺した?」
......それは大昔、瑠凪が1代目魔王·サタンから告げられた言葉の確認の意を持っていた。
───────『あの幼女の仇は、お前の"大事な友達"だぞ』
その言葉を告げられた当時は瑠凪はほとんど眠っていて何を言われたのかなどははっきりとは覚えていなかったし、そこまで大事な事も言っていなかっただろうと流していた。
しかし皆にフレアリカのことをよく知ってもらう、そして何より自身がフレアリカという"
フレアリカという名の少女は聖銃の暴発、または誤発で死亡。その母親は流すとして、父親である聖銃勇者 カレブ·K·レヴグリアは"レヴィアタンとの戦闘で惨殺された"事になっている。しかしサタンは瑠凪の"大事な友達"......つまり"アスモデウス"の手によってカレブは殺されたと言っていた。
......これまでもが矛盾している。葵雲がやってきた事の周りは全て"矛盾"という一見は弱そうな、でも誰も超えることの出来ない強固な壁で囲まれているのだろうか。瑠凪は深く考えて未だに言葉を紡がずにいる葵雲の言葉の続きを待った。
「............いや?殺してないけど......」
「っ......」
葵雲の返答に瑠凪は思わず息を呑んだ。軍の記録よりも目の前の"大事な友達"や今は故人となっているであろう"大切な人"の言うことの方が信じてしまう、信じてしまいたくなるのは当たり前だ。でも......
......その"大事な友達"と"大切な人"の言うことが相違している、相違してしまっている。
2人とも、両方のことを信じたいのに......サタンの言うことを信じて"フレアリカはアスモデウスに殺された"事にしてもいい。でも葵雲の言うことを否定はしたくないし、かといってサタンの言うことも否定したくない......
念には念を押して瑠凪は葵雲に再度確認したが、答えは分かりきっていた。
「............本当に?」
「本当に」
「......っ、なら、お前は一体......」
「僕は魔王軍最高火力で"空天の覇者"の、凶獣族頭領 アスモデウスだよ?」
「そう、だよね......」
しかしその答えが改めて音に、そして葵雲のしっかりとした意思になっていざ自身の前に啓示されると、やはりそうなのだろうと今まで以上に意識してしまう。そしてそれが肩に重くのしかかり、思わず座り込んで俯いてしまった。
......ねえ、僕はどうしたらいい?どっちを信じればいい?
そう頭の中で、今は亡き"大切な人"に聞いても答えなど返ってこない。それでもやっぱり問いかけてしまう。頭の中で自問自答しては"まあいっか"と一旦は流すのだが、肩に重くのしかかった"矛盾点"という小さくて大きな問題は現実を真表にはっきりと映し出して現実逃避などする余裕もない。
「......うー、なんからしくないよ?元気だして!!」
「え、うん......」
......と、そんな瑠凪の様子に、葵雲は元気づけようと周りをくるくる回ってはあーとかうーとか言ってひょこひょこ動き回っている。......視界の中でひょこひょこ動く葵雲の幼稚でいといけない動作に自然と頬がほころんでいくのが分かった。
人間相手に名前を言っただけで大抵の人間はガタガタ震えだして、酷い時には失神やら慌てすぎて怪我したりする奴もでちゃうくらい恐れられている悪魔が、こんなガキっぽくていいのかよ?と考え込んでいたことが馬鹿馬鹿しくなってくる。
「ほらほらぁ〜、望桜が帰ってきたら心配するでしょ?いつも通り憎まれ口をたたいてればいいの!」
「な、なんか軽くディスられ......」
「ディスってないよ!!まあ重い課題は少なくとも日本にいる間は肩からおろして、一緒にから揚げ食べに行こ!!」
「はあ......まあいっかぁ」
瑠凪は気分転換のために大きくため息をつくと、
「......よし、葵雲は今日どこ行きたい?」
そう葵雲に声をかけた。葵雲はそれを聞いて直ぐに歎声をあげて飛び跳ねた、全身で喜びをありありと表現している。
「ニッシーの唐揚げ屋さん!!」
「わかった。ここからだと......三宮店ね、買ったらすぐ店出て近くの公園で食べよう。東遊園地でいいだろ?」
「うん!!!」
────────『暗すぎるのは、お前らには似合わねえよ』
「っ!......」
......ふと誰かの声が聞こえ、瑠凪は勢いよく振り返った。しかし間違いない、あいつの声だ......と視線をぐるぐるとさせて姿はないかと探してみるが"大切な人"の姿は見受けられなかった。
それは葵雲の心配そうな顔が眼前に覗き込むまで続いていた。
「瑠凪?どしたの?」
「今、あいつの声が......」
「誰も何も言ってないけどなぁ......あ、窓閉めとかないと的李に怒られる」
そう言って急いで窓を締めに行く葵雲の姿を後目に、瑠凪はとりあえず財布内の残金を確認しほっとため息をついた。
───────────────To Be Continued──────────────
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます