第2章 Alea iacta est !
✨5話1Part (元)魔王の休日は大荒れです(?)
ピンポーン
「はーい」
331号室のインターホンが鳴った。1つ返事をして立ち上がって向かうと、見知らぬ少女が立っていた。
......バイトも休みでやることが無く、暇を持て余して仕方なーく家でごろごろしていたなんて事ない日、とある出来事が、ありまして。その出来事は、ある人がうちを訪ねてきたことから始まります。......この話し方疲れた、やめるか。
「どちら様でしょうか「いきなり伺ってごめんなのじゃあ〜」
「はい......?」
「私、今日上に越してきたのじゃあ〜!503号室に!」
「503?」
扉を開いて早々、目線のすぐ下に水色の頭が見えた。咄嗟に視線を下げると13、4歳?位の子が立っていた。全体的にゆるい系のVネックのTシャツに膝下丈のクロックス。ひと房ひと房丁寧に編み込まれている髪は、そのまま右側のサイドテールの中へと入っている。
331号室住みの望桜は自室の玄関先で、思ったことを口にしようとして咄嗟にやめた。......ここ331号室だぞ?なんで503号室の奴が挨拶に来るんだ?
「はい!503号室に引っ越してきたのじゃあ〜!」
「はあ......」
「
「は......」
愛は挨拶と共に手をばっと前に出した。その動作により箱を前に差し出す体制になっている。変な話し方だし、五月蝿いやつだな......と思いつつも相手が差し出している箱を手に取る。綺麗なクリーム色の無地の梱包紙で包まれており、現段階で中身が何なのかは確認できない。でもちょっと重い。
「わはー!!「うるさいぞ、愛」
「おっ......」
やっと保護者っぽい人が来たー......先程までの愛の騒がしさとその余韻によって、近くの住民が様子を伺いに来ている。皆眉間に皺を寄せて、かなり迷惑そうな顔をしてこちらを見ている。
望桜にとっては周りの住人からの視線がこちらに集まっている感じが、妙に浮いてる感じがあって嫌だった。まるで140年前、13代目魔王として召喚されて初めて城に行った時のあの感じだ。
魔王軍として既に招集されていた、約1万程の下級悪魔達から向けられていたような視線と、頭の中でどうにも重なってしまって。
......なんで敵である人間が、自分達を率いる王として連れてこられたんだよっていう、馬鹿にするっていうか見下すっていうか、とにかくそんな感じの目で見られて、嬉しくなる奴なんか居ないよな。あれ以来、周りの人間からの視線が集まる感じが妙に嫌だ。
「すまなかったな。ふと目を離した隙に居なくなってしまってな......こやつの保護者でありながら、躾がまだ足りていなかった。えーと......」
「あ、緑丘望桜といいます。ここ331号室に、同居人2人と住んでいます。よろしくお願いします......」
「随分と社交辞令的な挨拶をするのだなww余は
「よ、よろしくお願いします......」
「接することは少ないとは思うが、会った時は良くしてくれるとありがたいぞ。......おっと、余と愛は時間が押しているようだ。時間を取らせてしまって申し訳ない、今度詫びの品を持ってくるとしよう」
「あ、あはは......別に......構いませんよ」
「ばーい!なのじゃあ、緑丘望桜!」
「あはは、ばーい......詫びの品♪物によっては......にひ、にひひ」
「望桜、気持ち悪いよ」
玄関の扉を閉めながらも詫びの品を想像してニヤつく望桜に、平常運転の鐘音が突っ込みを入れる。しかし非平常運転である望桜には、大したダメージが入らなかったようだ。
「いや〜、だってよ〜......はっ!!バイト!!やばいやばいまだ準備してねえ!!」
「今日シフト入ってないって昨日言ってたと思う」
「やばいやば............あっ......」
なんでかは分からないが、今日はないバイトでかなり焦り始めた望桜に1文入れる鐘音。
第一印象としては......騒々しい奴らだな。まあ、なんか持ってくるらしいし、品によっては非常にありがたいものを持ってくる可能性も......
「ていうか、なんかさっきから神気臭いんだけど......」
「そうか?俺はそうでも無いが」
「いーや、確かに臭いのだよ」
「お、的李おはよう〜!」
「おはよ」
「おはようなのだよ」
周りの匂いを嗅ぎ続ける2人()を後目に、スマホの予定表を開く。今日は1日やる事なし。とはいっても、一日中家でのんびりするのも性にあわない。太鳳にMINEでどこか出かけないか、とでも声をかけてみよう。
「今日こっちは1日フリーなんだが、良かったらどっか出かけないか......と、お、既読つい......返信はやっ」
『いいねいいね!今日はるったんも休みなんだよ〜!!大勢で出かけたら楽しそうだし、ごーさんやべるねんもこっちにあんま詳しくないんだよね?社会学習ってことで堺に出かけようよ!』
「べるねん......鐘音、とごーさん?......あー、的李か」
わかったと一言返事して一旦ホーム画面に戻る。にしても、鐘音は言わずもがな、的李はベルフェゴールのゴーをとってごーさん。相変わらずなんか変わった?というよりいかにも変わりもn......若くて活気溢れる人がつけそうなあだ名だ、太鳳らしい。
思えば、俺がベルフェゴールに的李ってつけたのも、"ゴール"といえば日本語で物事の最後を占める部分、という意味の他にもう1つ目標となる物事や事柄という意味もある。後者の意味で言い換えれば、"ゴール"は標的、的という意味でもとれる。だから"的"にお飾り程度に李をつけて的李。我ながら安直だな。
......と、話が逸れたが、その彼女は堺に行きたいらしい。
堺といえば大仙公園や自転車博物館、平成の森等の史跡や自然関連の観光地が多い。他には、市役所から見える景色が絶景だとか。元々が田舎民である俺にとって、行ったことのない場所(しかも大阪)に行く事は神がかり級にわくわくする事だ。......やばい、顔の緩みが半端ない。
『ごーさんたちには話した?あともう準備出来てる?こっちは準備OKだよー!!』
「やっぱ返信早いな......普段どれだけ使ってんだ......?」
半分呆れつつも一言、すぐ向かうと連絡する。俺は前に免許だけは取っといたから、丞に車でも借りようか。たしか、遠くに出かける時は言ってね〜って言ってたし。
「いったん店によってから行くから、20分後くらいに着くぞ〜......っと」
『おっっけ!たしかまおまおはるったんのこと結構気に入ってたよね?期待していいよ!可愛い服選んどいたから!!』
「俺のあだ名はまおまおか......って、可愛い服......」
......どうしよう、朝からニヤけが止まらない......今日はけっこうついてる日だったりして......
「おーい的李ー!!鐘音ー!!俺今日瑠凪達と出かけるんだが、お前らも来るよな
な〜?」
「半強制じゃん......うわ、きも......」
「私も今日は休みだから、場所によっては行くのだy......うわあ」
「毎度の事ながら反応同じだよなお前ら」
俺が居るリビングに入った瞬間に、顔を顰める2人。ほんっっっとに毎度の事ながら反応同じなんだよなあ......にしても、的李も鐘音もここひと月程度でだいぶこの街に馴染んだし、そろそろ遠くへは行きたいと思ってた所。2人もちょっと遠く位になら行ってみたいっぽいし。
「さっき話してたから知ってる〜堺でしょ?......あ、車で移動するのはめんどくさいから、瑠凪に頼んでゲート開いてもらったら?」
「ゲート......瑠凪達の方は魔力集まってんのか?」
ゲート......ラオムゲートは、基本的に多くの魔力(神気)を体にため込める悪魔(人間·天使)にしか使えず、その分消費する魔力(神気)も多い......そしてそれが開けるほどの魔力を、瑠凪達は既に貯めることが出来ている。......まあ少なくとも今後あまり戦闘したり魔術を使わずに過ごすつもりの俺達には関係ないが。
「みたいだよ。なんでかは知らないけど」
「あー......だな、太鳳にちょっと言ってみる」
ピロリン
『あーそうそう!るったんがさー、ゲートで送ってあげようかって!!とりあえずゲートで今からそっち行くね〜!!』
「お?なんか向こうからゲートでって言ってきたな......的李!鐘音!早く準備しろ!!」
「わかったのだよ」
「僕はもう出来たよ」
「え、はや」
「ボク達も来たよ〜!!」
部屋の中にいきなり出現したゲートから、金髪が顔を覗く。今日の堺行きを提案した張本人·太鳳だ。こちらの世界ではJK(という肩書きを持つニート)だが、世界中の精霊を統括する精霊長だ。
「はや!って、おお〜!!ゲート開ける位の魔力、本当に溜まってたんだな!!ちなみにどうやって溜めたかは......?」
「えっとね、それは雷をあだっ「すみませんがその話についてな家庭秘密です」
そして太鳳がでてきたゲートから腕がのびてきて、太鳳の頭頂部を1発ペシっと叩いた。
「よう或斗!相変わらず俺達には厳しいな〜」
今度は紫頭が出てきた。太鳳の上司にして瑠凪に忠誠を誓っている忠臣·望月或斗だ。現在は主夫に身を投じているが、彼もまた立派な悪魔の1人である。
「ちょっとあるきゅん、何で叩くの〜!!」
「煩い黙れ」
「酷くない!?」
「あ、そういえば瑠凪は?」
「主様ならそこに居ますよ」
「え?」
或斗が指さす先には......誰もいない。でもなんかもにょっとする感じが......
「あなたも軍で結構な数見てる術式だと思いますが......」
「......あ!結界か!!」
「はい。正確には柔多次式結界ですけど。ちょっと待ってください、解きますから」
そう言って先程瑠凪が居ると言っていた場所に手を当てる或斗。そのまま咒文を唱えた瞬間、ガラスが割れるような音がして気づいたら瑠凪が立っていた。......とはいっても、実際には机の後ろに隠れているんだが。
「あ!ねえちょっとなんで解くのさ!!」
髪型こそバイトの時見るもの同様、ポニーテールに、前髪をヘアピンで留めている状態だが、服はかなり違う。キュロットタイプのハーフパンツに、シンプルなデザインのTシャツ。その上から紺色のデニムジャケットを羽織っている。......可愛い。
「共に出かけるのですから、今日くらい 我慢なさってください......」
「はあ!?嫌だよなんで休日にこんな変態と出かけなきゃならないんだよ!」
「まー確かに......でもるったんゲート開いてくれt「沙流川それは今言うな」
「確かにってどういうことだよ!?」
「ここまで来たのですから、行きますよ」
「え〜......」
体全体で不満を表しているかのように項垂れる瑠凪を、机の後ろから出るように促す或斗。その様子を眺めていると、準備を整えたらしい的李が、髪を手櫛でときながらやってきた。
「望桜〜、或斗達はもう来たのかい......って、土足で人の家に上がらないでくれ給え!!」
「あーごめんごめん、でもボク達が履いてる靴はちゃんと新品のやつだから、家の中は汚れないよ」
「本当かい?」
そう言って3人の靴をまじまじと見る的李。太鳳はフリルサンダル、或斗と瑠凪はスニーカーだ。
「それじゃあ!ゲートで行くよ〜!!さん、に、いち......ごー!!!って、あれ?」
「あー......沙流川、ポータルで俺が移送しよう」
「おっ!或斗はポータルが使えるんだな!!」
......少し前の説明に補足すると、魔力(神気)受容量の上限によって使える移送魔法が変わってくる。受容量上限を大·中·小で表すと、受容量大の奴はラオムゲート、受容量中の奴はポータルスピア、受容量小の奴はテレポーテーションという移送魔法しか使えない。受容量上限が大きければ大きいほど規模の大きい移送魔法しか使えず、そのまた逆も然りだ。
「では......
「うおわっ」
「......着きました」
或斗の移送魔法で1秒もかからずに、到着したのは......
「アオンモールだーっ!!堺の!!」
望桜達も普段お世話になっているアオンGROUPの大型娯楽施設、
......アオンモール堺店。いや別にこれといったことは無いんだけどな!今日ついてる日だし、もっといい事あるかもだな!!
───────────────To Be Continued──────────────
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