4話2Part はたらく&まなぶ人間(悪魔)たち②

 今日も通常通りバイトしたなー......と何故かしんみりと今日の出来事を頭の中でフラッシュバックさせる望桜。


 女子高生がプリント持ってきたり、体調不良の瑠凪の看病を少ししたり、冬萌ちゃんに怒られたり。



 そして午後9時、Melty♕HoneyCats前の歩道にて......



「お疲れ様〜......」


「緑丘さん遅いです!どれだけ大変だったことか......」



 結局、丞が時間通り午後2時に来て4時に帰ったから、それに便乗して瑠凪も家に送って貰った。そのあとは冬萌と俺との2人でまた店を切り盛りした。



「悪かったと思ってる!」


「反省してますかぁ!?」


「してる!してます!!今何時......やば!もうそろそろ帰らねえとやばいから帰るわ!!」


「あ、ちょ、ちょっと待って下さああああい!!」



 文句の声を無視して駆け出して、だんだん遠くなる冬萌の怒声をBGMに急いで家に帰る。的李が帰ってたとしてもあいつ料理できないし、鐘音はそもそも自分で作る概念がない。今から帰って作ったとしても時間がかかるし、近くのコンビニでおにぎりでも買って帰るとしよう。あいつら細かいから怒りそうだけど。



「......kたわーー!!」


「ん?たわー?神戸ポートタワーならもっと南だが......」



 ふと誰かが叫ぶ声が聞こえたので辺りを見回してみる。黒、金、茶と鮮やかだがどこか種類的にまとまった髪色の交じる群衆の中に一つだけ場違いな紫色の頭が見えた。


 ......ん?紫色?



「やっと見つけたわ緑丘望桜ー!!!」


「げっ」


「げって何よげって!!」


「いや、だってお前、自分から逃がした相手を異世界までねちっこく追っかけてくるか普通!?そして大声を出すな周りからの視線が痛いから!」


「なにを今更気にすることがあるって言うのよ!」


「あーもう分かったからこっち来いお前!」



 急いで手を引いて裏路地まで連れていく。大声で叫んでいた......というより俺の名前を叫んでいた人物は、下界の聖弓勇者·ジャンヌ・S・セインハルト。勇者陣の中で唯一の無名家系出身であり、俺達をラグナロクから逃がした張本人だ。



 ......俺としては歩道のど真ん中で大声で名前呼ばれた挙句、その場所でそのままの勢いで会話続けられると変な視線感じるから嫌なんだが......



「何よ!あそこで話そうがここで話そうが一緒じゃない!ってか何の問題があるのよ!」


「見た目的にいい歳した男女の大声での言い争いは痴話喧嘩だって相場が決まってるんだよ」


「いつの常識よそれ......」


「そーいう勘違いされやすいって言いたかったんだ俺が言葉足らずだったよすみませんねー!!」


「怒る必要ないでしょー!?」



 背中辺りまでかかる紫色の髪を揺らしながら、いかにも激おこぷんぷん丸です〜って感じで怒っているジャンヌ。髪型はハーフアップ、膝下丈のキュロットスカートにタイツとシンプルな柄のTシャツと身なりはこっちの人間そのものだが、どこか常識がかけ離れている。



「ところで俺そろそろ帰らねえとマジで殺されるんだけど......」


「あなたを殺せるような人間はこの世界にはそうはいないわ、悪魔ね、絶対悪魔よそれも大がつくほうの!!」


「まてまて聖弓はしまえ!!」



 そうと決まれば首を狩るまでといったふうに手に神気を込め聖弓を具現化し始めるジャンヌを落ち着かせる。......ここでもあのマンションでも戦闘になると周りにとっても迷惑になるから困るんだよ!



「魔力がない状態である今の俺ならこっちの人間でも容易く殺せるわ!それよりマジで命取りなんだよ!!」


「そうなのね!?......なら、帰らないといけないなら今回は逃がしてあげる。私の案件はじっくり話したい内容だし、殺されても困るもの」


「あ、逃がしてくれるんだ」


「今すぐ拘束して話聞いて、3日後ぐらいに帰すわよ!?」



 聖弓はしまったが、まだ怒りの収まらないジャンヌ......雰囲気的には今すぐ俺の事仕留めようとか、また会ったらその瞬間に首狩ろうとかはないっぽいし、危険性は無さそうだな。



「帰らないと殺されるんでしょ?」


「ああ!んじゃまたな!俺ここで働いてるからー!!」



 とりあえずバイト先の猫カフェの名刺を渡して、走って路地裏を後にする。コンビニで夕食を買うのを忘れないように口で繰り返しながら、最短ルートはどこだったかと考えた。




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「ただいまー」


「遅い」


「遅いのだよ」


「お前ら話し方違うだけで言ってること常に同じな気がしてきたんだが」


「望桜と一緒にされるよりは鐘音と一緒にされた方がまだ良いのだよ」


「右に同じー」


「お前らぁ!?」



 買ってきたいくつかのおにぎりを机に並べながら、2人とものお叱りの言葉を頂く......2人とも毒舌なだけあってなんか胸が痛い......



「ところでさ......最近のよくネットニュースとかで見かける、連続爆破事件って知ってる?」


「あー、あれかい」


「連続爆破事件......?」



 椅子に座り3人で手を合わせて挨拶したあと、机からおにぎりをとって食べていると、鐘音が時事ニュースについて話し始めた。連続爆破事件といえば、前にオーナーと瑠凪が話してた時に耳に入ってきたが、それがどうしたんだ......?



「そう、でもあれおかしいんだよ」


「おかしい?」


「どうやら、爆破事件があった場所を警察が調べたらしいが、爆発物と見られるものの破片や跡が見つからないらしいのだよ」


「それどころか、爆破事件に巻き込まれた人の目撃情報もみんな揃って"何も無かったのに足が何かに当たって、その数秒後に爆発した"って」


「それ普通におかしいな、何なかったのに足に当たったのがおかしいし、仮に何かがあったのを知らずに蹴って勘違いした......とかでも、そうみんなが揃いも揃って不注意でなにかを蹴るはずも無いもんな」


「......そもそも何も無い所で爆発するのもおかしいしね」


「幸いまだ大怪我するほどの規模の爆発は起きてないらしいけれど......まだ犯人も捕まってないし、そのうち大きな爆発が起きるかもだから、あまり必要以上に外を歩くのは控えた方がいいかもしれないのだよ」


「だな......」



 食べ終わった鐘音が先に席を立ち、それに続いて的李も席を立つ。連続爆破事件......明日丞に聞いてみるか、なんでか丞あーいう事例に詳しいし。ってか瑠凪大丈夫だったかな......




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「うわっ......とと」


「主様......本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫だろ!一応薬色々飲んだしー!」


「俺は単純な体調不良というより、魔力の停滞による体調不良だと思うのですが......」


「そーかもしれないねぇー......でもまー確かに、こっちで魔力発散するようなことなんて滅多にないし......魔力停滞による体調不良なら何かで思いっっきり魔力使わないと治らないからなー......」


「無さすぎて主様が体調を崩されるのも嫌ですよ......」


「じゃあ仮に僕の魔力が尽きるぐらい消費するような大きな戦闘とかがこっちで起きても構わないわけ?」


「それは嫌ですね」


「即答じゃんww」



 歩いてバス停まで主様を送り届ける途中で、また主様がふらついた。......昨日あそこまで弱って帰ってきたのだから、休んでもいいと思うんだが......



「それじゃ、またね或斗ー!!」


「あまり大声は出さない方がよろしいかと......」


「へーきへーき!僕もう元気だって!それじゃーねー!!」


「いってらっしゃいませ......」



 バスに乗り込んで、窓から思い切りこちらに向かって手を振る瑠凪。それに笑顔で軽く手を振ると周りの人が微笑ましいといった表情で或斗の方を見る。時計は午前7時すぎを指している。......まだ店があくまでには時間があるな。



「......あれ?或斗だ」


「鐘音さん......と?」



 或斗がとりあえず一旦家に帰ろうと踵を返した時、ちょうど登校中だった鐘音と目が合った。それとその後ろからもう1人......?



「てぃ、帝亜羅......奈津生帝亜羅です」


「俺は餅月或斗です、以後お見知りおきを」


「お、おみしりおきを......」


「或斗、固くならないでいいよ。それと敬語じゃなくていい」


「......そうか」


「はい......」



 後ろの少女は奈津生 帝亜羅(なつき てぃあら)2人は確か鈴蘭台の高校に通っていたはず......なのにここは南明石だ。帝亜羅に関しては知らないが、鐘音さんの住所は神戸市本町、方向的には真反対なはずだが......



「......なんで僕がこっちにいるんだ〜とか考えてるんでしょ。帝亜羅の友達のお母さんに毎日送って貰ってるんだよ」


「ああなるほど......」


「そ、そういうことなんですよ〜......あ、鐘音くん、来たよ」


「本当だ」


「あの車ですか」



 遠くから白いワゴン車が走ってくるのを見て帝亜羅が声を上げた。あの車が友達の母親の車なのだろう、鐘音も確認して、来たと思ったようだ。



「んじゃまたね、太鳳によろしく」


「沙流川と俺は無関係です」


「えっ、同居してるんじゃないの......?」


「同居してるでしょ、よろしくって言っといて!......またね」


「え、えと、また!」


「はあ......」



 ......沙流川によろしく?あのニートついに鐘音さんにも手を......とりあえずあとで絞める


 鐘音達も車に乗り込んで、気を取り直して家に帰ろうと歩み出した。鐘音さん達に手を振りながら帰っていると、足に何かがコツンと当たった。何かに躓いたと思い振り返って下を見たが、そこには......



「......え、何も無......いや、まさかっ」


 バチバチッ、ドッカーン!!!



 そして次の瞬間、何かがあったであろう場所を中心とする、大爆発に巻き込まれた。




 ───────────────To Be Continued──────────────




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