い
信じるものが此処にはない。
少なくとも何もない。
それが解ったのは憧れさえ抱いていた先生の裏切りにあった。
ただ、あの人さえいれば存在していた筈の幸福も今やモノクロの心象風景の中に封じ込められて、
空白の時間は流れていく。
日々は連続の繰り返しで。
進展や発展に結びつかず。
闇をただ取り込みつづけ。
異端の痴れ者を果に捨て。
敗者を亡骸に変貌させて。
過酷な現状に放置、遺棄。
私らは間引きされている。
暗殺しているのは先生だ。
意図して殺人を繰り返し。
我々は人肉を食している。
それが仲間と知りながら。
明日は我が身と怯えつつ。
誰にも救いは見つからず。
ただ境遇に甘んじている。
ここには善も悪もないの。
だから私も殺すつもりだ。
先生が私を襲うのならば。
無抵抗ではいられなくて。
だって死にたくはないのだから。
「い〇〇さん。
顔色が悪いわね。
大丈夫?」
そう気にかけ様にして肩に手をかけられた。
ふとした油断。
気がついた時には手遅れだった。
なるほど、こうして皆は間引きされていったのか。
指先から痺れだすと、喉奥に靴下を詰め込まれていた私は抵抗らしい抵抗も出来ないままに意識を失っていく。
それが完全に途絶える前に、私はメッセージを残す事にした。
私と同じように気づいている人だっている筈だから。
その手口と方法を。
それがかき消されぬよう。
誰か気づいて、私のダイイングメッセージに。
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