第13話 脱走

少年は窃盗の懲罰として課せられた一か月間の外出禁止期間を満了すると早速、脱走準備にとりかかった。

通学用鞄に着替えを詰め込んだ。

外出表には「友人宅で自習」と書き込み施設を後にした。

かつて少年が住んでいた街へは電車で約30分で行く事ができる。

手早く切符を買って電車に飛び乗った。

駅が待ち遠しく感じる。少年は久方ぶりに興奮していた。

故郷に到着した少年は大きく深呼吸をすると

「帰ってこれた。」と静かに呟いた。

手始めに友人宅を尋ねた。


友人は扉を開けると驚いた顔で少年の肩を叩いた。

「生きてたか!」

「ああ、なんとかな」少年は笑顔で肩を叩き返した。

それからよく通った喫茶店に行き、事のあらましを友人に説明した。

少年が話し終えると友人は

「そうか、そんな事があったのか。しかしこれからどうするんだ」目を下に向けそう言った。

「泊り歩く生活はいつか足が着く、だから河川敷で野営しようと思う」少年は淡々と答える。

「そんな都合よく野営できる場所があるのか」友人は動揺する。

「A川に橋台と橋桁の間にスペースがある。そこなら浸水する心配もないし人目にもつかないだろう。」

「確かにあそこなら何とかなりそうだな」友人は納得するかのように頷いた。


A川の橋台と橋桁の間は約100cm程しかなく屈みながら橋の下へ入る恰好だった。

橋台はコンクリート製で橋桁は金属製だ。夏の暑い時期だが橋の下は肌寒い位に涼しい。これなら生活拠点にできそうだ。少年と友人はそう確信した。

少年は友人とスーパーに置いてある無料の梱包用段ボールと古新聞紙を拝借した。段ボールが床材で新聞紙は掛け布団として使用する簡易シェルターだ。


脱走1日目はひとまず寝床の確保に成功した。

深夜、簡易シェルターで少年は小さな自由を手に入れた解放感に浸った。


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