第7話 塀の中の面々
一保の生活は日々ルーティンなので退屈するが保護されている面々は個性が強い。
足に刺青が入った17歳の非行少年は一見怖いが、話してみると気さくで少年を弟の様に可愛がった。そんな非行少年は退所した後、煙草を下着の中に隠して再入所してきた。消灯後、同室だった彼と窓越しで紫煙を燻らせたのは良い思い出だ。煙草は日中、押し入れの布団の中に隠していた。だが煙草を持ち込んでから数日後、作業時間中に彼は職員に呼ばれて席を立った。その後、彼の姿を見た者は居なかった。おそらく押し入れの中を抜き打ちで先生が検査したのだろう。
女子2名が脱走を企てた事があった。学習時間中に「トイレに行きたい」と申告して離席した。その数分後「ジリジリジリジリ・・・」と警報が発報された。何事かと確認へ行くと普段使われていない勝手口の扉が開いていた。どうやらセンサーが検知したらしい。その光景を視界に認めたとき彼女らが脱走したのだと確信した。脱走事案は当時、所内でも問題になっていたが脱走される環境にしている行政サイドの責任ではないかと少年は感じていた。
文字通り3日3晩食事を取らない不登校児がいた。その不登校児は保護初日は泣きじゃくったままで食事はしない、集団生活には従わないと中々気骨のある不登校児だった。なんとその不登校児が食事を摂ったのは保護されてから3日後の朝食だった。まさにハンガーストライキの体現者である。
行き場をなくした人間が集まると常識の範疇を逸脱した出来事が良く起こる。
少年の人生観に大きな影響を与えた環境だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます