第2話 暗雲
10歳の少年には専業主婦の母と勤め人の父がいた。
とても仲睦まじい家庭である。だがそんな幸せに暗雲が立ち込める。
少年はいつものように学校から自宅に帰ると浮かない顔をした母親が待っていた。
「大事な話があるから病院へ行くよ」と今にもかき消えそうな声で言った。
子供ながらに何かあったと察した少年はただ一言「うん」と返答した。
自宅から病院までは通学路の中間地点にある為、子供の足で歩ける距離である。
だがあの日歩いた距離は何十キロ、何百キロにも感じられるほど遠く感じた。
病院へ着くと診察室に通された。室内には現在では滅多にお目にかかることのないシャウカステンに父親のレントゲン写真が張られている。
白衣を身にまとった中年の医師が真面目な顔をして病気について説明した。
少年には医師のいう事が難しく感じたが要点を整理するとこうだ。
・父親が末期の胃癌に侵されており手の施しようがない事。
・父親の余命が残り6か月間であるという事。
・病気と余命について、本人に絶対話してはいけないという事。
少年は父親の余命を告げられた事以上に隣にいる母親の背中が小さくなっていく事に危機感を覚えた。
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