Who are you ? act1
さて。自分なりに再度情報を整理しよう。
俺はくそみたいな神のせいで前世では無情にも死神に殺されてしまったらしい。
そのままではいけないということで新しく異世界へと転生することで第二の人生を与えられた、ということらしい。
でだ。問題点があったのだ。
――姿がなぁー…。
「なんで性別変わっちゃうかなー…」
俺の性別は天使達によって女にされてしまった。
ましてや正確な年齢は不明だが、十七歳よりも幼いであろう姿。
この身長。十二歳かそれ以下か…。
はぁー。運が逃げに逃げまくってる。
それはそうと陽はもう残っていない。真っ暗……なはずなんだが? 時間経過から考えて、俺がこの世界へ来てエリアノールとの会話で陽はとっくに落ちてるはずなのだ。
「見える…? 見えてるのかこれは」
陽の落ちた方向を見ると、太陽の姿はない。つまり夜のはずなのだ。
いや。この際ラッキーだ。見えるなら本が読める。
「この攻略本が読めれば今晩は生き永らえれるだろ」
手紙の挟まっていた辞書の一ページ目を開くと、たった一文。
日本語ではない言語で
『ステータス と心の中で念じろ』
と書かれていた。
ん。ちょっと待て。俺はこんな象形文字のような言語を習った覚えもないし、見た覚えすらない。
なぜ俺はこの文字の意味を理解できたんだ?
いや。そんなことどうでもいい。まずは生きなければ。
さっきから木々の隙間を抜けて吹き抜ける風が冷たいんだよ!!
「ステータス!」
心で念じろと書いているのに言葉に出してしまったが、どうやら成功はしたようだ。
目の前にいくつもの半透明のタスクが見える。
『名前:ナギ・ハウトバウン
性別:女
年齢:エラー
レベル:1
種族:ヒトゾク
能力:エラー
スキル:エラー
称号:エラー』
一番重要なのはこれだろう。他には…。めんどくさそうだ後回しだ。
…なんだ? エラーって。
『エラーコード:ロストナンバー
標準ステータス表示では開示不可の情報が含まれています。エクストラステータ
ス「プロパティ」の表示を提案します』
おお。スマホについてる人工知能みたいな文章。
つまりプロパティと念じろってことか。
(プロパティ)
『エクストラステータス プロパティを構築中・・・・・・
プロパティを表示します』
『名前:ナギ・ハウトバウン
性別:女
年齢:二七一歳
レベル:1
種族:ケルベロス(魔種)
能力:なし
スキル:共通言語理解 一人称固定
称号:ヘル・ハウトバウン・ハウンドの孫』
これが本当のステータスということか。
つまりさっきまでエラーだったのは普通じゃ得られない何かが含まれていたのだろうか。
―――。
――――。
―――――。
――――――ふむ。
色々と眺めていると、一か所に焦点を当てると説明書きのタスクが出ることが判明した。
「スキル、一人称固定『ボク』」
『一人称 『ボク』 固定します』
この一人称固定というスキルは日常的には使いものにならないスキルだが、ボクには思ってもないラッキースキルに早変わりする。
スキル「一人称固定」その名の通り自分の一人称を意識せずとも勝手にその指定した一人称へと変更されるスキルだ。
意識すれば自分の意志で一人称を戻したり違うものを言ったりできるが、日常的にすべてが固定された一人称になるようである。
「この姿でオレオレ言ってたらなんか周りから変な人だと思われかねない。でも私っていうのも抵抗がある。ならばボク! それなら大丈夫だ! なんかクラスに一人二人いた気がするからな!」
天才的な考えだろう。ふふん。
これでミスって俺っていうことも無くなるし、不信感も持たれないだろう!
さてさて、ほかに見ておく情報はないかなー! なんか気分上がってきたぞ!
「あの」
「ひゅえい!」
「あ、ステータス確認中失礼しました。天使の一人アズリエールというものなんですが」
「あ、ああ天使…? エリアノールさんのご友人ですか?」
「あ、友人ではなく姉妹です。エリアノールの姉です」
「お姉さんですか。それでなにか用ですか?」
「エリアが能力付与を忘れてしまっていたようなのでそれのしりぬぐいをしにきました」
「能力…。ですか?」
「はい。元から付与はしていたのですが念のためにと隠していたのをエリアが解除し忘れたのことで」
「な、なぜ隠して?」
「判断するため。ですかね? 能力はスキルよりも強制力が高く、危険度があり悪用されてはたまりませんから」
つまり隠しているスキルのせいで普通のステータス画面だとエラー。でプロパティにすると表示できるが、天使の能力でなしって表示だったのか。なるほどね。合点がいった。
そんなアズリエールさんの姿は言わずもがな美人だ。
エリアノールさんが後輩風で、アズリエールさんはおとなしいマネージャー先輩風である。
ただし! 人によって解釈は変わるだろう! しかしボクの経験から言えば二人はそんな感じだ!
「ちなみにその能力ってどんなものなんですか?」
「あ、はい。その説明も兼ねてきています。一つ目が黒猫。二つ目に王呼伏令という能力です。今、解除しましたのでステータスで見ていただけると」
「分かりました。プロパティ」
「ぷ、プロパティって何ですか?」
あれ? なんか変なことしちゃった?
「ステータスだと表示できないものがあって、なんかその上位種? みたいのにプロパティってあったのでそれだと全部見れるんですよ」
「な、なるほど。きっと、体を作ったのは私たちなのですが、体がどのような形で現世に降りるかは決めることができないのでなにかしらバグったのでしょう」
「へー。天使と言えど生まれることまでしか確定できないんですね」
「端的に言えばそうなります。さて、本題に戻しますか。まず黒猫という能力はスキル『運び屋』と『運搬』という二種類を複合させ、強化した能力となります。効果は大まかに二つ、持ったものの重量軽減と条件無視の調節可能な速度上昇です。試しに私を持ち上げてみてください」
「ええ!? 無理ですよ! アズリエールさん身長高いですし、ましてやボクこの体だと女ですよ?」
「大丈夫です。ちなみに私の体重はエリアの一.一四倍です」
「エリアノールさんの体重を知らないことを上手く使ってきましたね…。とりあえずいきますよ?」
どう持てばいいだろうか。
普通に腰に手をまわして斜め上に引き上げる感じだろうか。
まあ。普通にいこう。
「よっ!」
ん? アズリエールさん軽すぎません?
この重さ…。どこかで…。はっ! スマホの重さとほぼ一緒だ!
……いやいや。ちょっと待って!?
「軽すぎません!?」
「軽減の効果感じていただけたでしょうか?」
「軽減ってちなみにどれくらいです…かね?」
「基本的にすべて五百グラム未満に軽減されます」
「倍率で言うと!」
「不明です。個人差が出る効果ですので」
うーん。倍率がおおよそ分かればアズリエールさんの体重を解けたのに…。
いやまあ、天使と言えど女性だ。体重を探るのはご法度だろう。
「分かりました。じゃあもう一つの“王呼伏令”でしたっけ? その効果って」
「そちらはむやみに使わないようお願いいたします。効果は読んで字の如く、旧帝都の王が掲げた戦争中の命令『王の呼び声にひれ伏しは命令を実行せよ』というのが能力として具現化したもので、条件がそろった時にその場にいるすべてへ命令を下せるという効果を持っています。過去にこれを所持したのは魔族のハウトバウンで、この効果で自分の命を引き換えに魔王が英雄に殺害される瞬間、いつか解ける封印を魔王にし、英雄から王の命を守ったらしいです」
「へー。ハウトバウン…どっかで見た気が…」
「気のせいでは? ハウトバウンは影の立役者だとかで文献でもそこまで重役としては残っていないので」
「ふーん。まあ王呼伏令は条件があるんですよね?」
「はい。まあ…達成しようと思えばすぐ出来てしまうほどの条件で、自分を突き動かす理念を持つ。というのが条件です」
「あまり具体性がないんですね」
「はい。返ってそのせいで謝って発動してしまう可能性も捨てきれないので、注意が必要です」
「分かりました。十分に気を配ろうと思います」
「ありがとうございます。あと、こちらは私からの餞別です」
そういって説明のひと段落が着いたところでアズリエールさんは何もない空間から青く光る石を取り出した。
青い光は、真っ暗な空間においてアズリエールさんとボクの顔を照らすには十分なほどに放っていた。
石の形は少し歪で、そこらへんの小石を無理やり寄せ集めてはくっつけたような、ごつごつとした形をしていた。
「これは?」
「餞別です」
違うそうじゃない。
エリアノールさんもそうだったが時々、質問に対する答えがズレているときがある。
姉妹だからだろうか。
「こ、効果は?」
「まあまあ。持っているうちにわかりますからー」
アズリエールさんはボクの目の前に石を突き付ける。
まあ、餞別だ。何か変な効果とかはないはずだ。……ないはず。
受け取って損はないだろう!
「分かりました。ありがとうございます」
「いえいえ。私はこれで失礼いたします」
再度お礼を言った後にアズリエールさんはよい人生を。と残して姿を消した。
さてこれで一応、自由になったわけだ。
まずはなにからしようか。プロパティをも一度しっかりと確認しておくか、辞書の内容に従って動いてみるか…。
よし、辞書を少しだけ見て森を抜けよう。
「……っちだ。…さえ抜ければ……ょう者の区分だ。俺たちはそこまで行くだけでたんまりともらえるぞ!」
ゲームはそんなにしたことないが、ちょっとこのままここいるとイベント的に不穏だな。
少し移動するか。
―――。
さてさて、あの声はどんな状況の声なんでしょうかね。
こんな暗闇じゃあ木々の隙間にいる小さい子供なんて見つけれっこないでしょ!
おっ! 見えてきた見えてきた。
――人の数は五人。装いは兵士風だな。
あとは…。なるほどね、これはちょっと見過ごしちゃいけなさそうだね。
五人の兵士風の人間に囲まれて歩く小さな影が一つ。
夜目が利かなきゃ分からなかっただろう。小さな女の子がボロボロの服を着て歩いてるようだ。穏やかじゃないね。
何度も言うが、吹く風はすごく冷たい。ものすごい速度で体温を表面から奪ってきている。
さて、前世では従えなかった家訓に沿って生きてみようかなっ!
すご。体がすごく軽い。
軽く前に飛びだしただけ二メートル近く進んだぞ。
「これが黒猫ってやつか! さあ助けましょうかね!」
華々しく、救ってみましょうか…。
「何をしておられるのですか? 兵士の皆さん?」
見た通り装いは、兵士のように銀色の甲冑に身を包んでおり、手には槍のような……細長い木の棒があった。
え。槍はどうしたの?
「な、なんだこいつ。こんな森に現れるとか人間ではない…な。言語も違うようだ」
「ああ。道中のハプニングなど想定済み!迎え撃つぞ。マジック!」
マジック? ああ。そういえば辞書の中にも魔法がどうたらこうたらって書いてあったな。
魔法ってなんだ? 現世の方だとファンタジーの話で昔にはあったとされている技術とかそんなんなのかな?
『マジック 別名:魔法
空気中に含まれている魔素を魔核と呼ばれる魔法の本体に纏わらせ効果を得る、魔
素の種類を厳選し活用することを魔法術や魔法技術という』
へー。にしてもプロパティってすごいな。こんな情報まで表示してくれるなんて。
『それほどでも…//』
「もはや人! でも今はこの状況の打開策を考えなきゃ」
『能力 黒猫の裏効果を発見。打開策へとつながる可能性有。
表示しますか?』
「表示! っと待ってなんだ!? 奥の方で光る弾が」
ああもう! 情報量が多いよ!
『回避してください。弾道表示、魔素操作を開始』
回避!? ちょ。ま。目のま…!
『身体エクストラスキルの発動を確認しました。スキル:抜刀術を確認』
「訳が分からないよ! 目的だけ果たす。黒猫!」
一瞬、視界が見たこともない線の世界へと変わった気がした。
次の光景は集団の中心。
『身柄を保護し、その場から脱出してください』
「……はっ。了解! おいで。ちょっとだけ目をつぶってて! 黒猫!」
また目の前が何千もの線へと変わる。
これに慣れるのには時間がかかりそうだ…。
まずは、救出完了。
さて。助けましたけどあなたは誰ですか?
そして、プロパティのあなたも誰ですか?
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