ドワーフ王国のお客さん

鎮守乃 もり

王国の鍛冶屋

プロローグ:死闘

「ギャオウエエエエエエエ!!」

大音響の咆哮がうなりを上げた。

「くるぞい!ブレスが!!」

岩の後ろに回り込み、斧を前に身構えた。

ぞろぞろと集まってきたが、岩からはみ出る者多数。

「もちっとつめろや」

「暑苦しい」

「くさい…」

「ベトベトするわ」

「ほれほれ、ソッチ方面ヤバいで」

「ぶっはー!」

「そこ、盾でふさぐんじゃ」

もごもごと動く。ひとつの物体のように。

「緊張感ゼロじゃのう、わしら」


パシッ。

火花が散るような音を聞いた刹那。


ゴオオオオオオオオオオオオッ!


空色の炎が岩に隠れるドワーフたちに向かって放たれた。

「あっつ!」

「燃える燃える!」

「ほぅ、いい色の炎じゃの」

「温度、ひくめじゃな」

「ふんすー!」

「くさい…」


ブレスが止んだ。

「えーかげんにせんかい!」

「そーだ、そーだ!」

岩陰からはみ出したドワーフたちがちょっと焦げた臭いを放ちながら文句をたれた。

「そうれ!」

「ほいや!」

「そいや!」

「ふんすー!」

隠れていたドワーフ数人が斧・ハンマー・鎖分銅・棍棒をドラゴンの尻尾に向けて投げた。


ギャオオオオオオオオッ!


ヒット!

ドラゴンは翼を広げて上昇した。

すると、別の大岩にぐるぐる巻きにしていた鎖がじゃらじゃらと音を立てた後にガッシャンと鳴った。ピンと引っ張られた鎖の先はドラゴンの足の裏に繋がっている。

その勢いと共に足の裏から長い鉄の棒が抜け落ちた。

落下する鎖の音に混じって、澄んだ音が響いた。

まるで音叉のような音だ。


ゴイーーーーン


じゃらじゃら

どしゃぁっ。


空を見上げると、ドラゴンがぐるぐると旋回していた。

ドワーフたちはお互いに腕を交差させたり、盾に剣を当てて鳴らしたりした。

「ホッホー」

「やれやれ…」

「まったくもう」

「殺されるかと思ったぞい」

「くさい…」


しばらくすると、ドラゴンは旋回をやめて降りてきた。

ドワーフたちの前で頭を垂れるドラゴン。

「おじちゃんたち、ありがとう!そしてごめんなさい」

「いいってことよ」

「それよか、キズがついちまったなぁ」

「女の子をキズものにしたのはコイツだ」

斧を投げたドワーフを指さした。

「あっ、てめぇ。お前だってハンマー投げたやないけ!」

尻尾の付け根あたりの鱗にヒビとキズを見つけることが出来る。


「はいはい、そこまで。ここからは私の出番ですよ」

魔法使いがトコトコとドワーフのかたまりをかきわけて、ドラゴンに寄ってきた。

治癒魔法を施すと、どこかへ行ってしまった。

「今日は水浴び禁止よ?」

一言そえて。


ドラゴンのまわりにわらわらと寄ってるドワーフたちにお礼を言うと、バサリと羽音を立てて。飛び去っていった。

「やれやれ」

「今日も疲れた」

「酒だ、酒!」

「くさい…」

「解散、解散、かいさーん!」

あかね色に染まる夕陽を眺めつつ、つぶやいた。


「ふふふ、嬢ちゃん。トゲが抜けて良かったのう」

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