第38話「お前らの血は何色だ!」
「ほとんど、失敗しとるやないかぁぁぁぁい!!!!!」
ガチャ~ン!
パリ~ン!!
プゥ…
ドッタンバッタン!!
───ハァハァハァハァハァ……
君らね…
なにを気楽にメシを食っとんねぇぇん!?
な・に・メ・シ・食っ・と・ん・ね・ん!
えぇぇぇ?
マジ?
マジで?
え? え? え? えー?
君ら人間? え? 何なに? 人間? 人間なの死ぬの?
何をどうやったら『子守り』失敗するねん???
え? ゴメン、マジでわかんない。
何? 子守りの失敗って、どうやるの? 逆に聞きたい。どうやるの?
え? こいつら何? え? え? え?
「どないなっとんねぇぇっぇぇぇぇん!!!」
ハァハァハァ……
やばい、精神を
いったいわ~…心が痛いわ…
ちょっと叔父さん、もう若くないのよ?
結構体力的に下り坂よ?
メンタルもボ~ロボロ…
君らアレかね?
俺を殺しにかかってる?
人の失敗見て笑う人っているけど、…人の失敗を見て心が痛い人もいるのよ?
叔父さんね──心が…ね。
心が叫ぶ、
痛い痛い、
ホント痛い。
叔父さん、心が張り裂けそう──
だって君らアレでしょ…
…
「人間失格?」
「「「「「言い過ぎじゃ~!!!」」」」」
「バズゥぅ…」
おぉう、仲良いね君たち…
でもね、言わねばならん…
「人間失格」
「「「「「泣いてまうわ~!!!」」」」」
「バぁズゥぅぅ…」
どうしよう、この子ら救いがない…
叔父さん投げ出しちゃいそう。
もう、ジーマちゃんとケント君。あとカメだけでいい気がしてきた…
だってこれ、依頼失敗だから違約金払うことになる…
契約にあるもん。
依頼失敗の際は、依頼料全額の返済と1割の依頼料を違約金として支払うものとする。って…
大赤字だよ。
大赤字だよ。
もう一回いう。
大赤字だよ!!!
「バ、バズゥ…その辺で…」
あ、言い過ぎた。
って、シェイ&ウル泣くなや…
叔父さんの方が泣きたいわ!
しかし、マズった。
これは俺の責任も大きい。
無理矢理
嫌がるこいつらが、真面目に働くわけがなかった…
まぁ、シェイ&ウルのほうは知らん。ジーマの責任だな。
───しっかし、本当にどうしようか。
結構フォート・ラグダで
この子らが失敗したら、また違約金がいることに…
とりあえず、次回から違約金のない契約にするとしても、今回分と貰ってきた分は全部1割の違約金付き…
むぅぅ…こう考えると、結構キーファはできる男だったのだろう。
こんな
はぁぁぁぁ…
「君らさ…もう、フォート・ラグダとかに行ったら?」
さっそく、
メシ代なんかはヘレナに依頼すれば一発解決だ。
「やだー! あそこ、飯不味い~!」
「やだー! 遠い~、寒い~!」
「やだー! ご飯がないと
「やだー!」「やだー!」「やだー!」「やだー!」
……
…
人類終わったな…
エリン、無理しなくていいよ。
もう帰ってきなさい。
叔父さん、世界とかどうでもいい。マジで超どうでもいい。
覇王ガンバ!
、
、
、
あかん──現実逃避してる場合やない。
エリンに帰ってきてほしいのは、かなり本音だが…今はキナをなんとかしなくては。
さて…
まず
今ある契約では依頼失敗の際は、1割の違約金を払うことになっている。
当然、正規のお金だがこれを悪用するやからもいるだろう。だから、ギルドが依頼を受ける際はキチンとこの辺の審査を厳重にしていると思われる。
考えれば、わかるだろ?
絶対達成できないような依頼を発注すれば、何もしなくても依頼主には1割の金が転がり込んでくることになる。───ならばやってみるか…! と考える
ギルド側はこの辺をうまく管理する必要があるわけだが、ポート・ナナン『キナの店』にはそれができる人間がいない。
キナは優秀かもしれないが、善人すぎる。
こういった悪意ある依頼には対処できないだろう。
俺も見抜くことができるか、と言われれば──疑問だ。
少なくともあからさまな罠くらいは気付くことができるが…なんせ、田舎者で無学で
そんな連中に、真っ向から対抗できるかどうか…
まぁ、田舎ゆえ人物確認が容易だという利点がある。そこを詰めていけば悪意ある
細部は
で、だ。
今後持ち込まれる依頼には十分気を付けることと、
そうして
別にこいつ等に頼る必要もないが、使えるものは何でも使わせてもらう。
そもそも、出て行けと言っても残りやがるしな…
ならば働いてもらおう、と。
タダ飯を食わせる余裕など
まずはメシ代の返済をさせて、正規の仲介料をウチが貰うまでの流れをシステム化しないとな。
上手くコイツらが使えるようになれば、労せずして仲介料収入が入る。
「キナ」
「何? バズゥ?」
クリクリとした美しい目でバズゥを見上げるキナ。
あ、転んだままやん。
ヨっと、引き起こしてやる。
「キナさぁ、今までどうやってコイツ等依頼を成功させてたの?」
無遠慮に指さすと、不機嫌そうにそっぽを向く冒険者たち。
「えっと…」
キナは少し言い
「冒険者の皆さんは、適正があって…その、ある程度力量が分かるようにギルドでクラス分けされているの」
そう言って分厚いファイルをカウンター下の、鍵のかかる棚から取り出し、バズゥに見えるように広げる。
ただし、冒険者には見えないように体で隠す用にしてだ。
定型用紙に、手書きやらスタンプがバシバシとてんこ盛り。
登録地やら、年齢、家族構成、天職、そのレベル、武器、賞罰。
他にも経歴に、面接時の所見、趣味嗜好と──あ、これあれだわ…人事記録ってやつだな。
軍でも確かあったな…俺は勇者小隊の分くらしか知らないけど、雑用をしている際に、エルランが
…ちなみに俺の人事記録はボロクソに書かれていた。
「ふむ…これは?」
「えっと、フォートラグダのヘレナさんとか、キーファさんがここに集まる冒険者の分の写しを準備していたの」
ふむふむ…
「キーファさんがいないときはこれを参考にして、仕事を割り振っていたんだけど…」
チラっと冒険者を見るキナ。
狭い店の事、ギルドの事情を知る機会とばかりに──耳を
余り聞かせていい話ではないのだろうが…知らん。
ギルドの事情など俺にはどうでもいい。
「で…その、…あっ」
ペラペラとページを
右上の魔導撮影機の写しの中で笑うのは、モヒカンデブ───モリだったか?
今ここにはいないが、昨日キナに狼藉を働いた奴だ。
キナも、モリがここにいないのを知っていたので、
「その…例えば、モリさんなら…ここを見て」
キナが指さすところ、
「ん~? …性格、粗暴にして短気。細かい作業には適さず、害獣駆除などの仕事がやや適していると思料──」
そして、
「特記事項、
えー…!!
普通に、変態ですやん…モリさんぱねぇっす…
やばい、こんな奴に子守りさせてたら恐ろしいことにっ!
「そ、そうなの…何回か『子守り』させろなんて、冗談っぽく言ってきたことあるんだけど…」
あー…うまくキーファなり、キナが
下手すりゃ容姿的にキナも対象になっていたかもしれない。
年齢的には、キナはロリでもなんでもないのだが…
うむ…世界は腐っている。そしてやっぱり
「ん…んんんん!!」
ちょっと待てよ…ま、まさか…
そういえば俺、結構適当に依頼割り振ったけど…『子守り』もいっぱいあったけど…!!
やばい…
やばいやばい──
やばいやばいやばいやばいやばい!!
キナからファイルをひったくり、本日の『子守り』失敗──と、依頼書にある名前と、ファイルの名簿を照合していくと…
……
…
お、
お前等…
ロリコンかぁぁぁい!!!!!
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