最強装備品を作れるために自由な生活がなくなるのは嫌なので冒険者になって出直します
7ふぐ神
第1話 ブレスレット
はあ はあ はあ
赤茶けたレンガの建物が立ち並ぶ路地を抜けると大きな広場があり、幾つもの路地に繋がっている。広場の先にある路地の一つに向かい走っていくと、ほどなくして目当ての建物が見えてきた。
勢い込んで扉を開けて中に転がりこむと、勢い余ってスッ転ぶ。
「痛って~」
「大丈夫か?」
髭面の厳つい顔の親爺が呆れたように笑っている。
ユーリは腕の擦り傷に顔をしかめるが、服の埃を払いながら大丈夫だと答え、期待を込めて親爺に訊いた。
「例のやつ、届いた?」
親爺は頷くと奥の部屋から皮袋を持ってきて、その中身をトレーの上に出すと、小指ほどの宝石の原石が幾つも転がっていた。
ユーリは原石のひとつをつまみ上げて観察する。
こいつは魔宝石だ、間違いない。そう思うと自然と言葉が口から出ていた。
「これの加工やりたい!」
親爺は躊躇っていたが、僕の真剣な眼差しに諦めたのか渋々といった感じで許してくれた。
「‥‥‥‥かまわねえが、やり過ぎるなよ!」
「分かってるって」
嬉しくて満面の笑顔で答え、トレーごと原石を持って奥の部屋へと入っていく。
親爺がその後ろ姿を不安気に見ていた。
3日後の夕方。親爺は僕の作りだした装飾品を前にして唸っていた。
「だから、やり過ぎんなって言っただろうが!」
「え~‥‥‥‥してねえし」
「お前なあ、‥‥‥‥はぁ‥‥‥‥何処に星3の隠匿の魔法がついたブレスレットなんて売ってんだよ!」
親爺はガシガシと頭をかきながら深い溜め息をついて、ブツブツと「闇市に流すしかないか」と呟いた。
この世界において装飾品には二通りある。ひとつは単なる飾りで、もうひとつは色々な効果のついた装備品の役割を併せ持ったものである。
効果は星の数で表され、1から3まである。1は極たまに効果が発動し威力も弱い。2は程々に発動し程々の威力がある。3は必ず発動し威力も強い。そして星3の物は店に滅多に出回ることがなく貴重だった。
そしてユーリはこの大陸で星3を付与できる数少ないひとりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます