第236話ーーさよならキム

 すみません、お待たせしましたm(_ _)m 


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 俺が若い時……いや、まだ若いんだけど若い時、俺だけじゃなくて世の中の男性のほぼ全員が憧れた事があるだろうハーレム、それは毎日がピンク色で楽しい世界なんだろうなって思っていた……夢のような日々なんだって。

 だけどそれはあくまで現実を知らない戯言だったみたいだ。


 なんでこんな事を思ったか、それは師匠を見ていたら……って感じだ。

 じいちゃんの玄孫である紅玉さんとの盛大な結婚式から既に3年経ったわけなんだけど、奥さんの数は既に8人にまで増えている。その中にはもちろんハゲヤクザの娘さんもいるし、キム憧れの房中術班のリノンさんも居たりする。他の5人も含めてそれぞれがめちゃくちゃ美人さんばっかりで魅力的な人たちだ。

 8人……一見めちゃくちゃ多いように思えるけれど、織田家存続の事や師匠の優秀さを後に遺す事を考えると、これでも少ない方だという考えもあるらしい。まぁ、つまり、即ち師匠は種馬だって事だ。だから毎晩毎晩誰かと床を共にする事を強制されているようだ。

 一応本妻はじいちゃんの玄孫である紅玉さんなわけだけど、そこには色々女の戦いが存在しているらしい。そしてその判断基準の1つには、師匠が夜を誰と1番長く過ごすか?なんて項目もあったりするらしく、色々大変らしい……何が大変かって事を具体的に聞きたいところだけれど、師匠の顔が窶れまくっていて目も虚ろだったので諦めた……というか怖くて聞けなかった。

 まぁそんな師匠の頑張りもあって、既に子供は男女4人産まれているし、現在も8人中5人が妊娠中だ。

 つまり跡取りを作れたという事で、7000階層以降への探索に力を入れる事が出来るという事でもある。師匠はここ最近は突発型ダンジョンもよっぽどのの事がない限り跡取り作りが優先されて潜る事が許されなかったために、めちゃくちゃ張り切っている……っていうか暴れる気満々だ。

 ちなみにハゲヤクザが師匠の結婚式……つまり自分の娘の晴れ姿って意味でもあるんだけど、それに感化されたかなんかで新しく2人ほどどこからか見つけてきて娶ろうとして修羅場が訪れたとか、訪れていないとか……


 3年間で変わったのは、師匠とハゲヤクザの奥さんの数とか子供の数だけじゃない。

 キムの店が札幌・東京・名古屋・大阪・福岡に支店が出来た。今や伊賀の一大ブランドになっているんだよね、これが。キムが打つ刀には独特の刃文が出ていて、それが美しいと思うファンがいる事もあるんだけど、何よりもキムのjobが刀鍛冶という専門職ではなく武器全般を打てる鍛冶師へと進化?して、様々な武器を用意販売出来る事になったのも大きいようだ。あとは……世の中やっぱり顔か、顔が良ければ何でもいいのか?って感じだったり……よく雑誌にインタビューが載ってるしね。ただその分忙しくなり過ぎて、彼女を作るどころじゃないらしく、未だ独り身だ。

 その点アマはそこまで目立つ事もなく……まぁ相変わらず薬師界隈での若手のホープ扱いは扱いなんだけど、キムほどに劇的に状況が変わったりしているわけではないので安心だ。ただこちらは理系美女って感じの彼女が出来ている、5つほど年上の伊賀の薬師仲間らしい。5つ年上の美女って事で、キムがめちゃくちゃ羨ましそうにしていたよ。

 まぁそんな訳……つまり俺とアマには彼女が居て、キムには居ない訳だ。そして3年もあれば関係もそれなりに進んでいるって訳で……何が言いたいかと言うと、キムよゴメン!俺とアマは先に大人になっちゃったよ!!


 ダンジョン教の接触は相変わらずだ。修行やダンジョンへ潜っていない日……つまり休養日に街中を歩いたりしているとよく絡まれる。サラッとスルーせずに少しでも足を止めてしまったらもう最後、瞬く間にどこにいたのかわからない同集団に囲まれて、ダンジョン教への加入を勧めてくる。まぁそれがただの下っ端の勧誘員ならそれだけで終わるからまだマシなんだけど、それが日本支部の幹部だったりすると最悪だ。つまり俺と香織さんがNINJAだとか勇者だって知っているわけで、そりゃあもうめちゃくちゃ勧誘される。その手段はあの手この手と色々で、2人でデート中だというのに美男美女で囲んで口説いてきたり、言葉巧みに何かしらの失言を導こうとしてきたり……世の中怖いってつくづく思うよ。


 未だ俺と香織さんのjobが唯一職ってのも問題なんだよね……聖女とか出てくれたら、宗教関係全部そちらにいってくれそうで望ましいんだけど、残念ながら聖女も聖者も出ていない。

 ただ『神』がどのような扱いなのかが、未だによくわからないのが問題だと思う。

 よく聞く牧師・司祭・修道士・修道女・神父・神主・住職・僧侶なんてjobは普通にある。ただあくまでも日常生活に基づいたjobで、ゲームみたいに蘇生してくれたり、祈りで体力が回復したりする事はないんだけどね。だけど祓魔師・エクソシストは戦闘職jobとしていたりもする。

 ダンジョンという存在を作ったのが、神なのか何なのかはわからないのが問題なんだよね、結局のところ。地球上には様々な宗教があって、その数だけ神様もいたりするから、それはそれでそのうちのどの神様かってなったら大問題にもなりそうなんだけどさ。信仰は確かに素晴らしいけれど、その反面狂気を産む事もあるからね。


 あぁそうそう、迅雷の面々のの事を忘れていた。まぁ相変わらず調子には乗っているんだけれど、この3年はほとんどを中国で活動していた。攻略が目的ではなく、中国に残る現地の人達と共にダンジョン内資源……特に食糧関連を得るための行動だ。ダンジョン内からは野菜や果物、そして肉など全て手に入るからね。ただ深層になればなるほど、全ての質が高くなるので発展国では高い値段でやり取りされるわけだけれど、腹を膨らませるのが目的ならば浅層でも全く問題はない……つまり迅雷メンバーで十分事足りるというわけだ。

 日本政府の国際協力的にも、各流派が経営するダンジョン関連企業の社会的貢献という側面でも役にたっているらしい。

 ただ迅雷が中国に行きっぱなしという事は、日本での俺たちのカムフラージュとなるパーティーがいないという事でもある。なので迅雷に次ぐパーティーを各流派からの選出で組み、突発型ダンジョンなどでのメディア前パフォーマンスを行って貰っている。

 今回は迅雷の柳生兄弟や、ナル森のような勘違いしたおバカさんは居なかったので、顔合わせなどもとてもスムーズに終わったのは良かった。また無駄に睨まれたり絡まれたりするのは勘弁だからね。



「用意はいいな?」


 めちゃくちゃ張り切る師匠と共にこれから7000階層以降の探索に乗り出す。

 まずはの目的地は、酒の泉がある7800階層だ。これは俺と香織さん以外全員の希望により決まった。

 湧き出し続ける樽があるというのに、酒の池で飲み溺れたいのかと呆れる思いだったんだけど、どうやらそれだけでもないらしい。というのも、あれほどまでの強敵が溢れる7800階層辺りで暴れまくりたいって事のようだ。師匠の張り切りようといったら……多分今回の探索で俺の出番はないんじゃないかと思えるほどだよ……

 どうなる事やら……

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