第216話ーー久しぶりに思うね
明らかな嫉妬が嬉しかったり……
でもその嫉妬が怖くて震えながらも、宝物庫から分身たちと共に全てを運び出した。
後日になるが、楽器はそれぞれが3つづつあったので、伊勢神宮・熱田神宮・天皇家に全種を各1つづつ寄付する事となった。中には学者さんが存在だけは文字として知っているが現物や作り方などは全くわからなかった物などが多々混じっており、各方面からとても喜ばれたらしい。楽器以外の物については全員で山分けだった……ハゲヤクザとうどんにも?って思ったけれど、まぁ2人が居なければあの音攻撃もわからなかったわけで、そうしたら師匠やじいちゃんが敵となっていたかもしれない事を考えると、1番貢献したとも言えるって事からだ。
ハゲヤクザの窶れぶりもある事から、1度本部屋敷へと戻って少しの間は休む事となった……具体的には迅雷との合流予定の前日までだ。
もちろん休暇ってわけじゃない、次元世界で各々が修行するんだけどね。
そうそうじいちゃんなんだけど……
本部屋敷へと帰還するために次元世界から出てきたその姿は、顔がまん丸に赤く腫れ上がっていた……どうやらビンタされたらしい。虚ろな目で「ちょん切るのだけは……ちょん切るのだけは……」ってブツブツと呟いていた姿が怖かった。
逆にばあちゃんは艶々のニッコニコだったのがまた……ね?
何があったのかは知る由もないし、知りたくもない。
一緒に連れて行かれたハゲヤクザはというと、まだ精力剤を飲まさせれていないようで窶れたままだった。
どうやら精神的にかなりネガティブになっているようで、リビングの隅で膝を抱えて落ち込んでいた。そしてばあちゃんに見せられたのは、その姿を撮影した動画なんだけど……酷いものだった。ずっと俯いて「儂なんて……小僧に負けた儂なんて……」って虚ろな目で呟いているんだよね。どうも身体能力が上がった状態で俺に負けた事がネガティブになる一因となっているようだった。
その後精力剤を与えられて、なおかつ師匠とじいちゃんが叱咤した事により復活した後には、今まで以上に熱……熱というか鬼気迫る感じで修行をしていた。やっと勝てるようになったというのに追い付かれるのも嫌だからね、俺も同じように熱を入れての修行となるので、毎日クタクタを通り越して気絶するように寝るほどだよ。
そして迅雷との合流予定日となり、俺たちは101階層までは1日で到達した。
昔は60階層までが精一杯だった事を考えると、少し感慨深いものがある。
ただ今や11人の集団となっているので、その多さで1階層から走り抜けると他のシーカーたちに迷惑を掛けてしまうので、俺以外のみんなは次元世界に入って貰ったままでだけど。また未確認の新種の魔物が発生とかにならないように、無言かつ死角や遠回りをしながらと一応気を遣っている。
ちなみに迅雷を抜いたのは99階層だった。以前の彼らの事を考えると、自主的に潜って修行していただけあって、かなり練度は上がっているように思える。予想では合流予定期日を絶対にオーバーして来ると師匠たちと予測していたからね。
一応101階層で合流はしたものの、そのまままずは150階層まで一気に潜る事となった。
俺たちは後ろから追い立てる係として……しかも階層全てのモンスターを誘導して迅雷へと嗾けながらね。俺たちがモンスターの討伐をする事は一切ないし、夜番を手伝う事もない。ただただ嗾けて見守るだけだ。
150階層へと到達した頃には、迅雷の面々は既にもう尋常じゃないほどに疲れきっていたよ……可哀想に。
まぁちょっと楽しくなってたから、若干の罪悪感はあるんだけどね。それは誘導の仕方が原因だ。フィールドの各場所な散らばって、威圧を全開で手合わせし続けるんだよね。威圧や木刀に魔力を纏わせ具現化してブンブンと振り回して手合わせしている事に怯えるモンスターの姿を見るのが楽しかったり……その様子はまるで追い込み漁っぽい感じだったと思う。
いや……鬼気迫る勢いで手合わせを臨んでくるハゲヤクザが悪いと思うんだ。それこそ四六時中延々と挑んでくるし、また窶れちゃうじゃないかってほど魔力全開だったし。まぁ返り討ちに出来たので良かったけれど。ただそのせいで更に力を込めて来る事には参っちゃったけどね。
「さてまずはこれを背負え」
「出たっ……な、なんでもないです」
師匠が満面の笑みを浮かべて取り出したのは、懐かしい人型砂袋。思わず声を出しちゃったら睨まれた。
「横川、全員に配ってやれ」
「はい……えっ?軽くないですか?」
受け取ったらめちゃくちゃ軽かった。大きめのリュックに荷物入れていればこれくらいになるはずって重さだ。それが人型になっているだけって意味があるんだろうか……
「……まぁ最初はな」
そりゃそうなんだろうけど、なんか納得いかない。俺の時は最初からもっと重かったのに。
「えっ?」
「重っ!」
「さらに重くなる?」
「これを背負って戦う?」
さすが役者だね。
俺と師匠の会話を聞いていたからか、わざとらしく口々に呟いてるよ。
ただ俺は騙されない!!
意地でも重くしてやる!!
「では2組に別れてゴーレムを相手にして戦え。1人当たり5kgの金塊を得たらここでの修行は終了だ」
やはり課せられる修行内容がぬるい気がするのは気のせいだろうか?
まぁこんな事言っても仕方ないんだろうけどさ。
迅雷の活動を見ながら俺たちも修行を開始しだしたわけなんだけど……
「出たっ!!」
手合わせ中に寄ってきたゴーレムを倒したら、噂の人型のままの金塊がついに出た。
嬉しい……めちゃくちゃ嬉しいんだけどさ……
「先程迅雷の者共を羨ましそうな目で見ておったし、久しぶりに初心に帰るのも大事な事だから背負え」
3tですよ?
3tの金塊ですよ?
そんな物背負う事でさえほぼ無理だというのに、更にそのまま手合わせをしろとか鬼ですか!?
そういえばさっき、「たくさん落とさせて儲けようぜ」的な事を迅雷の面々が言っていたし、俺が出した人型の金塊を羨ましそうな目で見ていたよね……
あっ!!あいつらあからさまに目を逸らしやがった!!
「横川引き摺るなっ!!」
いやいやいや、何を言ってるの!?
俺よりかなり大きいんだら、引き摺るのはしょうがないでしょ……
あっ、この状態で空歩を使いながら戦えと、はい。
今俺の心を占めているのは、たった1つの言葉だ。
クソ忍者がっ!!
キャバクラに行った事言っちゃうぞ!?
あっ、ダメだ……師匠も白い目で見られるだろうけど、俺も大変な事になるわ。
クソ〜!!
クソ忍者がああああああああぁぁぁ!!
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