第202話ーー活躍を望みます!

 朝鮮半島から日本へと帰還してひと月が経った。

 俺たちと入れ違いにまず米軍が基地を奪還し、その勢いで北朝鮮へと攻め込んだ。北朝鮮は中国のクーデター勢と仲間であるという情報を流していたからね。多大な損害を韓国国内基地で受けていた事もあり、アメリカの世論は戦争賛成派がかなりの割合を占めていたらしく、世界各地に散らばる米軍大集合な上に圧倒的な物量での総攻撃だった事もあり、1週間ほどで戦争は終わり今や朝鮮半島の各地にアメリカの旗が立っている……つまり朝鮮半島はアメリカの1つの州として今後存在していくという事だ。


 中国は暫定政府が建てられてはいるが、未だ混沌としている……

 政府が倒され無秩序になったところに、健康な若い世代の人間を実験体にすべく徴集しまくっていた事、各地での戦闘によりインフラがボロボロになっている事、そして未だに実験体が各地に溢れている事などが原因だ。

 その様子はまるで世紀末然としていて、衛生状態の低下により疫病が流行ったりもしていて、国連などの様々な国際組織が支援に乗り出している。かくいう日本も自衛隊のPKO部隊が乗り込んで活躍しているし、世界各国も派遣している。

 ただ治安維持に力を注ぐ事に精一杯で、現時点ではダンジョンにまで手が回らないらしく、世界中のシーカーに朝鮮半島と中国全土のダンジョンへの助けを求める発表が探索者協会からあった。その結果自己顕示欲の高い人たちが入国して潜っているようだ……人助けに尽力してくれている人やパーティーとして国際探索者協会本部のホームページに記載された事が大きな要因だと思う。その中にはいくつか世界的に既に有名なパーティーもいた。まぁこちらはこれまで入国制限や探索制限がなされていた中国のダンジョンという事で、自国にはない素材への期待からだと思われるけど。

 我らが迅雷の面々は……未だ名古屋北ダンジョン内で【新人】目指して頑張っている……あから結構経つっていうのに、未だに帰って来ていないとは思わなかったよ。どれほど元のステータスが低かったのかと首を傾げてしまうよね。


 今回かなりの元人間や人間を殺害したわけだけど、もしかしたらjobが【殺人犯】とかになっちゃうんじゃ?って恐れていたけれど変わっていなかった、師匠たちも全員ね。どうやら政府を通じて傭兵扱いであった事がいいらしい……あと師匠たちが言うには、殺すにしても慈悲の心を持っていなければダメだと言われた。いくら戦争であり命令があったとしても、殺害を楽しんだり喜んでいる場合は【殺人犯】jobに変わる事が多いそうだ。

 やはりまだまだ謎が多いよね、jobシステムは。


 アマとキムには若狭と相田くんの話をした……俺の身体の事も含めてね、少し怖かったけれど。

 若狭のラスボス気取りの話はめちゃくちゃ笑っていた、そして映像を撮って来なかった事をなじられた。2人とも俺と同じく同級生だから、若狭の気取った感じは想像出来るけれど、やはり映像として見たかったようだ。なので身振り手振りでは間に合わず、思わず覚えている限りの若狭のモノマネをしてしまったほどだ……大ウケで大満足です。

 怖かった俺の身体の話の結果は、「ふーん」「で?」だったよ。

 勇気と覚悟を持って話したのに、肩透かしを食らった気分だよ!!

 嬉しいけどさ!!

 ただキムは……


「なぁ……もしヨコの髪の毛とか皮膚とかを鉱石に混ぜ込んだりしたらなんか新しい鉱石になったりするのかな?」


 って、怪しい光を目に宿しながら呟いていたのが怖かったよ。

 あまりにも毎日朝から晩まで延々とお師匠さんと2人で炉に向かっていた事から、どうやらあちら側の人間になってしまったようだ……マッドな方向に行かないよう願うばかりだ。


 日本へと帰還して2週間ほど経った頃に、アマとキムを伊賀へと送って行く事になったんだけどさ、予想通りというか帰るのを嫌がっていた。更に送って行った際には、お師匠さんたちまでもが次元世界で暮らしたいって駄々を捏ねられて困ったよ……次元世界は快適だからね。


 今回俺たちが朝鮮半島へ若狭たちを討伐しに行った事なんだけど、どうやら日本政府やアメリカ政府には一全流の人間が大きく絡んでいるとは話していなかったらしい。無関係にも拘らず、中国の米軍基地襲撃に対して日本政府に有利な条件を基に動き事を成したという事で、一全流はその報酬として名古屋港に大きな土地を貰ったようだ。もちろんお金もかなりの金額が支払われており、それは俺や香織さん、召喚獣たちにも与えられた……その金額は約1000億円づつだ。それが多いのか少ないのかはわからないけれど、とりあえず召喚獣たちが無駄に宝石を買い漁らないようにだけは注意しておこうと思う。

 その名古屋港の土地なんだけど、伊賀のお師匠さん2人とアマとキムを長期に渡って匿ったという事で、伊賀からのお礼で大きな船舶用ドックが建てられている。

 そう、あの宇宙戦艦用ドックだ。

 2隻分のスペースだが、とりあえず収納するのは中国から接収したUボートタイプのみの予定で、完成後には世界中の海を数週間かけて巡る事になっている。宇宙旅行の方はとりあえずはもう少し後だってさ。


 まぁ世界はこんな感じなんだけど、俺たちはというと師匠とじいちゃんは東京に行って政府のお偉方たちと話をしたりとそれなりに忙しかったようなんだけど、他の人間は結構のんびりと過ごしていた。

 もちろん日々の修行は当然あったんだけどね。

 あと俺はとりあえず英語の勉強を始めました。最初は駅前留学とかしようかと悩んでいたんだけど、香織さんが自分が勉強した際に使用した教材と共に教えてくれるというのでお願いした。

 高校までは義務教育という事もあり学習塾や家庭教師なんてものとは無縁だったからね、初めての家庭教師……しかも先生は香織さんという事もあってめちゃくちゃ盛り上がったわけですよ、俺1人で。

 だって香織さんと2人っきりで、しかも至近距離で部屋で過ごすわけですよ?

 これが盛り上がらずにいれるわけがないじゃないですか!!

 もうね、めちゃくちゃ浮かれてた。

 ……結果、あまりにも浮かれていて香織さんの身が危険だと師匠たちが危惧する事となり、屋敷のリビングで衆人監視の中でのお勉強となった。しかも先生役は俺と召喚獣以外の全員という始末。

 ショック過ぎて、素直に喜びまくった自分を恨んだよ……うん。


 肝心の勉強はというと全員にビックリされた……あまりにも出来なさ過ぎて。

 香織さんもドン引きしていたような気がする……

 なので中学校の教材を使用してやる事になってしまった……香織さんの持っていたのはある程度出来る事が前提の物だったらしい。


 知力ステータスよ、もっと活躍してくれよ!!



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