第189話ーーカラフルに光ります
「オラー!!」
「負けるかコノヤロウ!!」
ここは名古屋北ダンジョン114階層。
迅雷の面々が鬼気迫る表情で延々と戦い続けていて、既に100階層を越してから20日程経っている。
歯をキラリとさせる事だけが取り柄の迅雷が、どうして鬼気迫る表情なんかになって戦闘しているかと言うと、先日ステータスに出た【新人】【人間】が問題だ。
そんな彼らがワイドショーやネットのコメンテーターとして出ていた際に、例の話題となり「皆さんは当然そうですよね」的な事を言われまくった。だが誰もが【人間】だったのだ、そこで慌てて潜るに到ったというわけだ。
勝手に潜ればいいと思うんだけど、広告塔なのでそんなわけにもいかず相談があり、俺の分身を一応の保護者として付随させている。ただハッキリと見える形でいると安心してぬるくなってしまいそうなので、透明化させ天井に張り付かせているんだけどね。
そうそうそのワイドショーやニュース番組で、どこかのタレントが冗談口調で「中国でバケモノを見たって噂もあるし、もしかしたら異人とかが現れたんで新しく新人とか人間とか出たんじゃないかと僕は思うんですよ〜」なんて笑って言っていたんだけど、意外にそれが真実なんじゃないかと思っている。つまり若狭たち実験体が異人だか亜人だかはわからないけれど、そんな称号が出たって事だ。そしてそれはかなり実験が進んでいる……いや、成功体が存在する可能性が高いという事でもある。まだ彼が生きていて、そして俺を未だ恨んでいるとしたら、決戦の時は近いのかもしれない……そんな気がする。
その事を踏まえて、俺たちも6340階層で自力を上げるために戦闘を繰り返している。
召喚獣たち以外の全員が視界用の穴が付いていない先日のお面を被っている。それはモンスターが魔眼などを所持していて、通常の状態異常耐性では弾けない呪いなどを掛けてくるためだ。目が合った瞬間に全身に黒い縄のような痣が浮き上がり締め付けてくるのだ。
今や香織さんも魔力だけでの空間察知が可能なので、わざわざ目で見る必要も無いので何も問題ない。
そして状態異常を使ってくる敵というのは、得てしてそれに頼りきりなのか他は大して強いわけではないので苦労する事もない。
ただ、ただ俺が気になっているのは……モンスターのくせに、俺と相対した奴らが声を出して笑う事だ。俺以外には全くそんな事がないくせにだ。ふざけんなよ!!腹が立ちすぎて時間を忘れて倒し続けていたよ。
だいたいさ、NINJAだったら般若とか鬼面じゃないの?それがなんでひょっとこなんだよっ!!
師匠たちには変更を頼んだけれど、「似合っている」の一言で終わらされた。
全く納得がいかないよ……
絶対にカッコイイお面を見つけてやる!!
そのために実はこっそりと地上で古道具店などを周らせている。
そんな願いがダンジョンさんに通じたのか、6400階層ボス部屋の宝箱から仮面が出た。
ダンジョンさんありがとう!!
肝心の仮面はというと、真っ白で目鼻口用の穴が空いているだけの物だった。うどんの鑑定によると、呪いの仮面などではなく、あらゆる状態異常を防ぐ物らしい。
カッコ良さはないけれど、ひょっとこよりはマシだよね?
「主様どうぞお付け下さい!」
「えっ?……」
うどんに勧められて、早速着けようとしたら何故か香織さんがビックリした顔をしているけどなんでだろ……
もしかしてひょっとこの方が似合っているとか言うんじゃないよね?そんな事香織さんにまで言われたら泣いちゃうよ?
「おおっ!!」
この仮面スゴい!!
確かに着けているはずなのに、全く視界が遮られていないどころか装着感もない。
「どうですか!?」
「……」
えっ?
なんで香織さんは目を逸らすの??
「ククク……似合っているぞ?」
「ぶはははははは……!似合っとる似合っとる!のう、山岡の!」
師匠とじいちゃんが大笑いしていて、問い掛けられたハゲヤクザを見たら、うどんを追いかけ回して殴ってるってどういう事!?
もしかしてこれは……
あれ?
もしかしてハゲに見えるのかと思って、慌てて魔法袋の中から手鏡を取り出して見てみたけれど、普通に自分の素顔しか映っていない。白い仮面さえ見えないのは不思議だけどさ。
「香織さんどういう事ですか?」
「えっとね「ほら先に行くぞ」」
明らかに香織さんの言葉に被せてきた!!
怪しい、怪しすぎる!!
「何なんですか!?教えて下さいよ!!」
「えっとね……その仮面の名称が【光る髑髏仮面】なの。それで一太くんが着けると、頭が髑髏に変わって、数秒毎に色んな色になって光ってるの……ぶふっ」
な、なんだよそれ!!
性能はいいけれど、完全にパーティーグッズじゃん!!
被る前の香織さんの驚きの声の意味がわかったよ、そりゃあ疑問の声をあげるわ。
ってか、うどんのやつめ敢えて言わなかったな!?
そしてハゲっぽく見えるから、じいちゃんがハゲヤクザに問い掛けた訳か!!
「てめぇコノヤロウ!!」
「聞いて下さい!!皆さんが鬼気迫る表情で戦闘し続けているから、肩の力を抜くためのちょっとした冗談じゃないですか!!私なりの思いやりですよっ!!ププッ……」
確かに、先程まで誰もがほぼ無言で戦闘を繰り返していたけれど、この仮面によって笑いが生まれて殺伐としていた空気が柔らかくなった事は認めよう。
だけど、それと主を嵌めて笑うのは違う!!
しかも言い訳しながら笑ったので、思いやりだけじゃなくて自分が楽しむためだった事が丸わかりなんだよ!!
全く……
うどんは今ハゲヤクザにボコボコにされているから、俺がボコボコにするのは今度にしとこう。
しょうがない、地上世界の古道具屋さんでいいのを見つけるまでひょっとこで我慢しよう。
って外れないんだけど??
臨兵闘者皆陣列在前!臨兵闘者皆陣列在前!!
外れ……ないだと!?
「それと、それ1度着けると24時間は外れないみたいなの」
一生外れないわけじゃないのか……良かった。
って良くないよ!!
24時間頭光らせてるって、完全に呪いの仮面じゃねぇかよ!!
「ククク……ほら行くぞ。それとも天野くんや木村くんに見せたいのかな?」
「次の階層へ行きましょう」
「ククク……そうだな」
これ以上この姿の目撃者を増やしてたまるか……
特にあの2人なんかに見られた日には、めちゃくちゃ笑いそうだし……
どうやらこの仮面にはまだ隠された効果があったようだ……
6401階層は砂漠地帯で巨大なミミズやサソリなどが居たり、スフィンクスのような人間の顔にライオンの身体を持ったモンスターが跋扈しているのだが、その全てが俺へと押し寄せて来たんだ。
つまりモンスターを引き寄せる効果があるらしい……
戦いに来たわけだから、この効果は特に問題ないんだけど、俺だけめちゃくちゃ忙しくて大変だよ!!
絶対にうどんは後でボコる!!
………………
…………
……
「これ下の階層で見つけたんだけど、状態異常を全て防ぐらしいから良かった使ってください」
「お、俺にですか?」
「ええ、効果は確かめてありますし、呪いは付いていませんので」
「ありがとうございます!」
分身を頼りに転移して、ナル森にプレゼントしてみました。
最初不審な顔をしていたけれど、鑑定持ちの迅雷メンバーが頷くのを見て納得したらしく、素直に着けてくれたよ。
うん、これは笑うわ……
赤・青・黄・紫・ピンク・白・オレンジ・虹色にと、約20秒毎に変わってるし光ってる。
「が、頑張って下さい……ゴフッ」
再度転移で戻ったあと、116階層に絶叫が鳴り響いた……
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