第187話ーーいつかはイスカンダル
「こ、これはもしかして空を飛ぶのか!?」
「きっとそうですよ、おじいさん」
じいちゃんとばあちゃんが目を輝かせて、戦艦に飛び乗りキョロキョロしている。
裏に廻って見れば、確かにスクリューらしき物は存在しないようなのでそれっぽい感じはするけれど、一向に飛び立つ気配はない。
「おい信一、これはどうやって動かすんじゃ?」
ええっ!?
もしかして動かし方わからないのにいじってたの!?
ビックリだよ!!
「あー、先にそちらの倉庫を確認しないか?」
「むっ!そうじゃな、そちらにも面白そうな物が入っていそうじゃ」
ドロップというか、まるでオモチャ箱扱いだ。
観音開きの重厚な鉄の扉を開けると、先程襲ってきた車輪のない装甲車両っぽいものが2台と、歩兵が持っていたレーザー銃のような物や、有名なハリウッドのSF映画に出てくる光るサーベルなどが壁や棚に並んでいた。他に防護服?身を守る装備もあるようだ。
「これは……使えるのか?」
「モンスターに効果があるのなら、分解して仕組みを知ってから量産出来れば、ガンナーなどのjob持ちがこれからは活躍出来るでしょうし、一般人たちでも難なくモンスター退治ができるやもしれませんな」
あぁ、どんな仕組みかわからないけれど、仕組み次第では安く済ます事が出来たらいいよね。
ただ今の情勢でこんなものを世の中に出したらとんでもない事になりそうだけど。
「よし、全部とりあえず次元世界へと運び込むぞ」
分身たちを総動員して次元世界へと運び込んだところで、ゲットした装甲車両と戦艦の試運転となった。
装甲車両は車の運転とほぼ同じだった。地表から約1mほどの所を浮いてはいるけれど、それ以上浮く事は出来ないようだった。最高時速は約250㎞程度、音もなくスーっと進むので乗ってみたけれど体感的にはあまりスピードが出ている感じがしなかった。推進力は後部あるジェットエンジンのような場所から、魔力が勢いよく吹き出している事によるためのようだ。
そして問題は戦艦である。
戦艦なんて俺や香織さん、召喚獣たちは入った事も直接見た事もなかったから、師匠たちに付いて行くだけだったけれど、それでも驚きの連続だった。
内部は意外に広く、個室や食堂などが並んでいた。どうやら魔晶石を燃料としているようで、透明なタンクにギッシリと魔晶石が詰め込んであった……戦闘中に見た際は1つの大きな魔晶石があるように見えたけれど、どうやらドロップは違うようだ。まぁあの大きな魔晶石は、早々手に入れる事が出来るわけもないので、より手に入れ易い物で代用出来るようにとの親切設計なのだろう。
艦橋も広く船っぽい……舵輪があった。ただ他は全てタッチパネルのようになっていて、航行も攻撃も探知も全て簡単操作で出来るようだ……ただ誰でも使えるようになのか、言語は英語だったのが不思議だ、今更なんだけどね。そして俺には全く理解できなかったけれど、俺以外の全員によるとわかりやすい説明が書いてあるらしい……やっぱり英語の勉強しようかな。
もちろん直ぐに飛ばしてみたんだけど、地上3000mまでは上がる事を確認出来たし、それなりのかなりのスピードが出るようだった……つまりじいちゃんたちの望む宇宙戦艦って事が証明された。
「爺さん、わかっているとは思うが……こんなもの世に出せんぞ?」
「……わかっとる、わかっとるが……数十年後、死ぬ前にはこれに乗って宇宙旅行をしたいの」
結局乗り物は全て次元世界での遊び用になる事が決定した。
どこかの自動車メーカーなどに渡して研究をして貰い、次世代の乗り物して開発して貰う事も一応検討はしたんだけど、たった2台しかない事と、他の国やメーカーにバレたら蘇生薬以上の争いになる事は目に見えているからね。
まぁレベル10になった事で次元世界もかなり広くなったから、それなりに楽しめるだろうと思う。
次にレーザー銃やラ〇トセイバーだ。効果の程が知りたいので、こちらは次元世界の機能を使用してモンスターを出して試してみた。
まず銃の方だが、貫通力などはあるけれど魔法系スキルが効かないモンスターには通用しないようなので、魔法系の仕組みを持った銃だろうと推測される。ただそれなりに威力はあるために、低層での攻撃には向いているだろうから、もし量産出来ればハゲヤクザの言った通りに一般人の方たちやガンナーjobの人には有用かもしれない。
次にラ〇トセイバーだけど、こちらは魔力を具現化と可視化した物のようだ。柄の中には魔晶石が内蔵されていたので、そこから魔力を抽出しているのだろう。ただあまり燃費が良くなくて、10分ほど刃を出し続けたら消えてしまったので、それなりに斬れるものの実戦では使用出来ないと思われる。
両方とも生産施設に篭っている伊賀の師匠を呼んで見せて見たけれど、同じような感想だった……つまり銃は一考する価値はあるが、セイバーの方はお遊び用だという事だ。
ただ銃は専門外らしいので、全くと言っていいほど興味を示していなかった……それどころか、商売の邪魔になる的な扱いで、師匠に「表に出すのか?」って嫌そうな顔で聞いていた。
伊賀のお師匠さん2人とアマとキムは、最近ずっと施設に籠りっきりで、食事さえも忘れてひたすら研究しているんだよね……
理由は俺たちが潜っている階層での採取物を渡したからだ。鉱石は未知の物や純度の高い物が多いし、薬草関連も未知の物ばかりだからね。今は必死にアムリタの精製を試してみているみたい。
……渡す度に師匠2人は目を輝かせ、アマとキムは恨みがましい目で俺を見てくるのが恒例行事となりつつある。今回も呼びに行ったら、めちゃくちゃげっそりとした顔で見てきたし。
「あれだな、織田のところにいると飽きんな。もういっその事隠居して、柳生の爺さんたちと同じようにお世話になろうかと最近は考えちまう」
「そうじゃろう?儂もあの時さっさと跡目を譲ってこちらに来て正解じゃったとしみじみ思うわ」
「うーん、俺ではないと思うぞ?全ての原因はそこでのほほんとしている横川だ。我らだけで潜っていた時は、こうも新しい事が毎回訪れる事はなかったからな」
「「「確かに」」」
ちょっ!!
何みんなで俺のせいにしてるの?
確かに俺のスキルのおかげで深層に潜っていられる所は若干あるとは思うけど、突発型とかは関係ないと思うんだ。
「ただ世に出せんものばかり増えて行くのも考えもんだがな」
「確かに……欲深い連中が必死に中国へと手を伸ばそうとしているが、横川くんの全てが知られたら、日本は焦土になりそうだな」
「……そんなにですか?」
「確実にな」
「大丈夫じゃ、その時は宇宙に逃げればええ、じいちゃんも一緒に行ってやるでな」
全く大丈夫じゃないと思うんだ。
まるで俺のためみたいに言っているけれど、明らかに目的は宇宙旅行なのか丸見えだし。
「主様大丈夫です!私たちもご一緒しますよ!」
「月に兎はいるんですか?」
「火星の方が気になります!」
「あの船は深海はどうなのか後で試しましょう!!」
「ヨコ、俺たちも付き合ってやるからな」
「うむ、宇宙には行ってみたかった」
やっぱり全く大丈夫じゃない……
誰もが自分の事しか考えてないじゃないか……
ってか、それ目的で情報を漏らしそうで怖いわ!!
「一太くん……」
あぁ、やはり救いは香織さんだけですね……
「その時は私も連れてってね」
……まぁそんなオチが来るだろうと思っていましたよ、うん。
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