第152話ーー同情はやめてください!
「……今なんと言った?」
師匠が口を開きっぱなしにしているどころか、目まで見開いて固まっているよ。
「えっと……新しいスキルで、時戻しなるものが出たんです」
「……」
早朝の修行の時に、そういえば話してなかったと思って手合せ中に話してみたら、宙に居たのにそのまま落下する事になったよ。その際に隙かと思って思いっきり打ち込んだんだけれど、そんな状態でも師匠はやはり師匠だったよ……思いっきり蹴飛ばされてぶっ飛ばされた。
「お前はそれの意味がわかっているのか?」
「怪我がすぐ回復するかなとは思うんですけど、直後じゃないと使えないし……」
「ちょっとステータスを見せてみろ……ステータスだけでいい」
突然どうしたんだろうか?
まぁとりあえず……
「ステータス表示!開示!」
◆
横川一太 Age17
job―[NlNJA Lv8]
体力―AAA
魔力―AAA
力 ―AAA
知力―AAA
器用―AAA
敏捷―AAA
精神―AAA
◆
「ふむ……知力は下がっていないか」
えっ?
まさかそんな意味で開示しろだなんて言われたとは……もしかしてそんなにわかりやすい話をしているのに、俺が理解出来ていないって事?
「いいか、先日蘇生薬とアムリタ、毛生え薬が見つかったな?」
「あっ、八岐大蛇のですね?」
「ああそうだ、あれは史上初めての発見だった事もわかっているな?」
「みたいですね」
確かにそうだったみたいだよね。伊賀のお師匠さん2人とも……特に薬師界のレジェンドが半端なく驚いてたし。
そういえば蘇生薬15本が天皇家に奉納されたらしい。アムリタの存在は隠したのかって思ったら、そちらも最初は目録に入れていたらしいんだけれど、天皇直々にお断りされたらしい。理由は老化は自然の理だからとか何とか……蘇生薬も本当は断ろうとしたらしいんだけれど、自然死などではない突発的な事故死などを防ぐ意味や、若い世代に何か合った時のためという事で説得して受け取って頂いたという事だ。めちゃくちゃ慎み深い方たちだよね……聞くところによると、宮内庁の役人は「天皇家に奉納しないのなら宮内庁で保管するから」と言ってアムリタや毛生え薬も求めて来たそうだけれど、それも止めなさいとお叱りになられたそうだ。
天皇家とか俺たちには縁遠いし、テレビの中だけの話かと思ってあまり興味も持てなかったけれど、こういう話を聞くと少し興味が湧く。
「なぜあそこまで驚いたかわかるか?」
「えっ?新発見だからじゃないんですか?」
「……これまで蘇生出来るスキルは見つかっていないためだ」
「へーそうだったんですね」
なんで師匠は呆れた顔をして俺を見つめながら頭を横に振っているんだろうか。
「お前のそれは、正しく蘇生出来るだろうが!!」
確かに言われてみればそうだけれど、たった1分40秒しか猶予はないんだよね。
「これまでのスキルの上がり方を考えると、最終的には1000秒……つまり16分半ほどになるんだぞ?」
そうなんだとは思うけど、死ぬような激しい戦闘中にそこまで余裕なんてないと思うんだけどな。
「……で、使用はしてみたのか?」
「いえ、何に使えばいいかわからなくて。それでその相談の意味もあったんですけど」
「そうか……」
師匠は小さく頷くと、自分が持っていた木刀を手刀で細切れにした。
「これを戻してみろ」
地面に落ちた細切れに手を当ててと……
「時戻し」
唱えた瞬間、身体から一気に魔力が抜けていくのがわかった。そして肝心の木刀はというと、光のモヤに包まれた後にしばらくして元の木刀に戻った。光に包まれている時間は多分1分半くらいだと思うから、多分100秒なのかな?
「次はこれだ」
いつの間にか近くに山のように積まれた木刀の残骸が用意されていたので、直ぐにそちらに手を当てて唱えると、先程と同じように大量の魔力が身体から放出された後に30本ほどの木刀となった。
「連続で使用出来きると……しかもこれか。今のでどれほどの魔力を使用したかわかるか?例えば2回目のスキル使用を連続で使用した場合、何回ほど出来る?」
何か師匠の顔がめちゃくちゃ引き攣っているから怖い……鬼気迫るって勢いで聞いて来てるし。でも手元では新たに木刀を細切れにしているんだよね。
「かなり抜けていったので……多分だいたいですけれど、20回も利用したらカラッカラになると思います」
「分身を全部出して回復しろ」
分身の数も増えたので魔力の回復は驚くほど早くなった。今更というか最近ようやく理解したんだけれども、分身が九字をきって魔力回復をする際に分身自体がそれまでに魔力を使用したスキルを行使していた場合は、まず分身自体から損なわれた魔力を回復した後に俺本体の魔力が回復していくんだ。で、分身が魔力を使用していない状態での回復を行った場合、俺の魔力が0と仮定すると約10分ほどでフル回復する。
「九字をきらせながらこれを元に戻してみろ……時間が経っているからな、元に戻るまで連続で使用してみてくれ」
「はい」
5回唱えたところで完全修復した。
「九字を止めろ……今の魔力の容量はどれほどだ?」
「ほとんど満タンだと思います」
「そうか……わかった。今更だがこの事は絶対に他の者には漏らすなよ?」
「香織さんや山岡さんたちにもです?」
「いや、パーティーの者たちは構わん、柳生の爺さん婆さんもな」
どうしたんだろうか……
師匠がめちゃくちゃ疲れた顔をして、しきりに頭を振っているよ。
うーん、これ以上聞くと思いっきりバカにされそうだからちょっと自分で考えてみるか。
さっきの実験を踏まえると……あれ?連続で使用出来るってことはかなり時間経過した物体の修復出来るって事?
確かにこれはヤバイかも!!
魔力の回復さえ出来ていたなら、ほぼ無限の時間を回復出来るって事だし。
「その顔はようやく己のスキルの凶悪さを理解出来たようだな。もし他人に知られたら、お前はこれまで以上にその身を狙われる。しかも国家だけではなく、テロ組織から何からもな」
そうだよね、例えばカリスマ的なテロ指導者の死をなかった事に出来るわけだし……いや、それどころか俺が生きている限り不老不死に近い状態になるって事だ。
「とりあえずそのスキルのレベルを上げる事は急務でもあるが、それ以上に更なる修練が必要となるぞ?せめてスキルを使用しない状態で俺たち全員を相手にして対等に戦えるようになれ」
いや、確かに強くなる事は必要だと思う、それは思う。でもさ、師匠たち全員と同時に手合わせをして対等に戦えるようになれだって?むちゃくちゃ過ぎる!!想像さえ難しいんですけど!!
「爺さん婆さんには早めに戻る事を俺から願っておく……俺たちも早々にこちらに力を入れれるようにするが、お前も気合いを入れて臨め」
師匠様?
なんで師匠様が気合いを入れているんですか?覆っている魔力量が明らかに増えて見えるんですけど!?
「よし、全力で掛かってこい!!」
誰か助けて!!
この後めちゃくちゃボコボコにされた……
ちなみに悪食スキルの事も香織さんには伝えないでくれと念押しした上で伝えたら、厳しい眼差しから一転して可哀想な者を見つめる目になった挙句に、肩を優しくそっと叩かれた……
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