第128話ーーイケメンならいいんですか?
ロシア語は「(ロシア語)」で示しています
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「(ようやくか)」
「(色々使い道がある女はなるべく殺すなよ)」
「(あの小僧以外は殺せ)」
ずっと金山さんとのやり取りをニヤニヤとした表情で見ていた外国人集団は、分かりやすく首を左右に傾けたり、肩を回したりしながら腰から剣を抜き始めた。
「日本の猿ごときが少々腕がたつからと言って調子に乗ったな。本当の戦いというものを教えてやる」
金山さんのお父さんは日本語を話せるようだ、めちゃくちゃバカにした目でこちらを見て笑っている。
数で勝ってるから安心しているのかな?
チラリと師匠を見ると、苦笑いをしながら俺に向かって頷いた……どうやら俺の考えがわかったみたいだ。
「分身!!」
100体の分身が顕現する。
「(はっ?)」
「(な、なんだ?)」
「(どうなっている!?)」
「嘘……」
「なんでこんなに……」
ふふふ、ビックリしてくれたようで嬉しい。これで人数差は10分の1から2分の1になったわけだしね。
更にここから驚かせたいから四神たちに姿を変えるように指示を出した。
「(モンスター!?)」
「(ふざけるなっ!どうなってやがる!?)」
「び……美女がバケモノに」
「ひいっ!」
目の前の外国人たちの腰が引け、口をパクパクとさせながら驚いてくれている。
東さんたちは……なんか驚き方が違うようだ。女性が獣になった事にショックを受けているみたい……もしかして3人を狙っていたかな?まぁ知らなければ、一見は美女だもんね。
「香織さん、次元世界に戻りますか?」
「っ!!……ううん、見届けさせて」
「無理はしないで下さいね」
「……うん」
「如月くん、俺も次元世界に戻る事を勧める。ここからはただの殺し合いだ、残るのは怨嗟や苦痛ばかりで得るものなど何もない。それでも残るのか?」
「……は……い、居させてください。それでも友達だと思っていたから……だから結末は見ないといけないと思うんです」
香織さんに声を掛けたら、ビクリと肩を震わせて……でも戻る事を強い口調で否定した。
出来ればこんな場所にはいて欲しくないんだけどな……きっと傷つくだけだから。でも覚悟を決めたのかもしれないから、俺が出来る事は守る事しかないのかも。
「うどんは香織さんを守って」
「心得ております」
「横川、金山とその父?のアレは殺すなよ、戦闘不能程度にしておいてくれ」
「東さんたちは」
「あぁ、あいつらは……東と瓦崎以外は残してくれ」
東さんと瓦崎さんは殺してもいいって事なんだね。まぁ師匠の配下だもんね、それだけにこの事態は許せないって事だ。他の人たちは各流派のTOPの元に送り返すのかな?
まっ、俺にはもう関係ない事だ。今考えるべきは、香織さんを守る事だけ。
さて、とりあえずうっかり殺してしまわないように、そして乱戦に対象人物が紛れ込まないように先に保護しておこう影牢に閉じ込めて。
「(隊長っ!!)」
「(な、何が起きた!?)」
「きゃっ」
お父さんが隊長なんだね……都合が良かったっぽい。
必死に他の人たちが剣などで影牢を切ろうとしているけど、それは無理なんだよね。影というだけ合って刃は通るんだ、だけど中に入る事も外に出る事も不可能な仕組みになっている。刃も中の人などには通らない。絶対に出れないはずなんだけど……師匠たちはわからない、柳生さんも含めてこの人たちだったら簡単に出てきそうで怖い。
最近の俺のスキル披露は、基本的にドン引きされる事が多かっただけにこれだけ驚いてくれていると嬉しいね。これまで隠してきた甲斐があるってもんだよ……まぁ師匠に言われてだけど。
「(殺せっ!!あのガキだけ残せば構わんっ!!)」
「誰も逃すなよっ」
外国人勢力の人たち、ようやく余裕かましてニヤついている場合じゃないって事に気がついたみたいだ。もう全て何もかも遅いんだけど。
隊長さんの叫びと、師匠の号令が同時に発せられた。
勝負はあっという間に着いた。
金山さんの言う最強部隊は既に全員が気を失っているか、この世から旅立っている。もちろん東さんと瓦崎さんもね……2人は師匠が自ら手に掛けているのがチラリと見えた。アレは師匠なりの思いやりなのかもしれない、首を綺麗に刎ねていたし。
風魔の人たちの時と同じように、外国人たちの魔法袋を回収するよう分身に指示を出す。
「(な、何なんだお前たちは……クソッタレ!)」
「なんでよっ!なんであんたばっかりっ!!死になさいよっ!ぐちゃぐちゃになって死になさいよっ!」
金山さん親子が相変わらず喚いている。ただ妹の方は恋人らしき人の死を悲しむのではなく、何故か師匠を見て目をキラキラさせているな……アレはアレかな?ターゲットを師匠に定めた感じかな?イケメンで強かったら誰でもいいのかな?
「頼むっ!!娘たちは娘たちだけは殺さないでくれっ!娘はまだ若いんだっ、だからやり直す機会を与えてやってくれ。ヨコカワっ!この牢を解いてやってくれっ!!」
「パパ……」
さっきまで憎々し気な表情を浮かべていたのが一転、涙を流しながら土下座し始めた。金山さんはその言葉や態度に感動しているようだ。
……だけど、どうも嘘くさいんだよね〜お芝居感が抜けない。
「キサラギっ!君からも頼んでくれっ!」
「ねぇそこの織田さん?って言ったっけ?私を逃して、逃してくれたら何でもするから。私上手だよ」
「っ!お前は黙れっ!」
俺の様子を見てダメだと悟ったのか、香織さんにターゲットを変えて訴えかけようとしたけれど、金山さんの妹の場を読まない発言に思わずキレちゃってお芝居が失敗しちゃってるよ。
そして上手って何が上手なんだろうか……気になる!!
「……なっ、なぁ友達だろ?助けてやってくれ」
あっ、まだお芝居続行するんだ……でもその友達を娘自身が否定したんだけどね。それにその娘は相変わらず香織さんを睨みつけているし。
「そうよっ出しなさいよ!私たち親友なんでしょ!?だったら私とパパを出せよっ」
香織さんは……金山さんを悲しそうに見つめているだけで、何も反応を示していない。俺はとりあえず世界を開いて、近衛の人たちを呼んだ。
「(な、何だ?……それはどうなっている?そんなバカな……やはりその力は我らロシアが扱う物だっ!!寄越せっ!!)」
おうっ、興奮してまた勝手な事叫び始めたよ……
情に訴えかける芝居をするならするで、やり通せばいいのにグダグダ過ぎる。
事前にこうなった場合の打ち合わせとかしなかったのかな?親子3人がそれぞれ勝手な言動しているのは、あまりにもいただけない。
「如月くん、我らはこれからこの者らから話を聞かねばならん。その後はその男は生かしておけぬが、娘二人の処遇はどうしたい?」
えっ?
その判断を香織さんにさせるの?
それはあまりにも酷な仕打ちじゃないのかな?
「私は……私は……」
突然に判断を迫られた香織さんがふらふらと金山さんの入る牢へと近付いて行った時だった。
「(こうなったら勇者だけでも殺すっ!)」
「如月くん離れろっ!!」
パパが何かを叫びながら手を懐の中へ入れると同時に、師匠が焦った顔で叫んだ。
香織さんは理解が追いつかないのか固まってしまっている……
ピッ……ドドーッン
直後電子音が鳴ったと思ったら、金山さんを中心にして半径3mほどの爆炎が立ち上がった。
香織さんは後方へと吹き飛ばされ……
爆炎とそれにより起こった土煙が収まったそこには、何も残されていなかった。
あるのは何かが燃え尽きたような黒い塊と、両膝から下を失った俺だけだった。
熱い……痛い……
「一太くんっ!!」
「横川っ!!」
「「「主様っ」」」
香織さんの声に顔を上げると、泣きながら駆け寄って来る姿が見える……怪我はないようだ、咄嗟に回り込んで突き飛ばして良かった。ただ爆風で髪の毛がぐちゃぐちゃになっちゃっていて、まるでコントみたいになっているけど。
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