第58話ーー金額じゃなくて、気持ちです

 テストは無事終わった、激しい修行により記憶を失う事もなく無事乗り切った!

 そして一般のクラスの人たちは今日も学校でテストを受けているが俺は休みのために、施設で朝からいつものように激しくボコボコにされている。

 先日壊れた施設ではなく、もう1つあった少し小さめの施設だ。こちらは生産設備がないので、アマとキムは居ない。彼らは師匠さんたちの会社の名古屋支部に行って、製作を行っているようだ。

 テスト結果が出るのは明日金曜日の23日だ。その日に赤点じゃなければ、そのまま式があって翌日から冬休みとなる。もし赤点だったら……補習日程が出されて、その上クソ忍者に地獄を味合わされる。


 若狭はテスト期間中、なんのアクションもなかった。その取り巻きに絡まれる事もね。まぁずっとねっとりとした視線は続いていたけれど……

 あと若狭の件を尋ねたところ、ママの妹……つまり叔母預かりとなったそうだ。

 若狭両親の両親も一全の人で、今回の顛末……俺を孤児だとバカにしたり、夏の渥美でのお猿さん事件の事、両親含めて謹慎にしたにも関わらず今回の事件を起こした事を伝えたら、どちらの両親も既に隠居している上に、あまり実家に寄り付かなかったために、この一連の騒動を一切知らなかったようで、土下座の上に切腹しようとしだして大騒ぎになったらしい。

 その上で、孫をどちらかの家で引き取るよう伝えたら、「その愚かな孫を……首を斬り両親の元へ行かせましょう」と刀を持ち出し孫に斬りかかろうとしたとかで、これまた大騒ぎになったらしい。

 そして結局は、1番若狭一家と仲が良かった叔母預かりとなったという事だ。

 その叔母も一全で、あのマッドサイエンティスト率いる研究班に所属しているようだ。

 ここで不安になったのは、俺の情報が叔母から若狭に伝えられる事だったのだが、そこはさすがクソ忍者だ、既にその叔母には一切俺関連の研究などに関わる事も触れる事も知る事も出来ないように通達をしっかり出しておいたとの事だった。

 まぁ結局のところ、保護者が代わっただけで何も変わりそうにないって事かな。


 でも、さすがに力量の差は理解出来たと思いたい。そして俺に突っかかってきてもいい事ないって事もね。ってか素直に「一緒にクソ忍者の指導を受けたい」とか言ってくれれば、紹介してあげたのに。まぁ今更言われても無理だけどね……


 まぁそんな嫌な気分になる話は置いといて、気になる宝剣のオークションの過程は……なんと、現在の価格は更に上がって1,313万円!!

 このまま無事落札される事になれば、20%引かれても1,000万円以上が手に入っちゃう!!

 師匠には税金対策のために総務の方にお願い出来ないか聞いたら、快くOKの返事をくれたよ!これでその辺の心配も解消されたし、あとは使い途を考えるだけ!

 夢が広がるよねっ!?

 ちなみに未だにアマとキムには伝えていない。確定してからという気持ちと、口座の中にある数字を見せてドヤ顔したいとか思っちゃってね。


 今のところの使い途予定は……

 ①素直に貯金。

 ②あのお姉様に会いにキャバクラへ行く。

 ③金津園もしくは名駅裏の激安店へ繰り出し大人になる。

 この3つで迷っている。

 まず①は無難だよね、奨学金返さなきゃだし……ただそれではつまらない気もするんだよね。

 次に②がかなり有力なんだけど、問題は1人で行くのがちょっと勇気がいるしな〜ってところだ。でもアマとキムをここに誘うのは、やはりどう考えても全部人気が2人に行ってしまいそうだし却下だし、その点が大きな問題となっているので、未だ決めきれない。

 最後に③の案だが、やはり大人になるというのは大きい。ここでなら2人に人気が集まる事もないだろうし、指名出来るのでキムの好みの問題も解消される。ただ最初はやっぱりプロの方ではなくて、恋人……いや、いつ出来るかわからないから……いや春から先輩パーティーと一緒になりそうだから、そこで一気にお近付きして成立するかもしれないし、川上やエミちゃんともLINEは続けてるから、もしかしたらそちらと何かあるかも知れないし……でもなぁ〜……と、ともかく素人とラブラブしながらという夢も忘れられないんだよね。

 うーん、悩ましい。

 もうちょっと考えようかな。もしかしたら他に何かあるかもしれないしね。


「何か余計な事を考えていられるほど、余裕になったらしいな。よしもう1段階質を上げようか」


 そ、そうだった。

 現在絶賛修行中だったんだっけ……


「どうせオークションの金の使い途とやらで妄想しておったんだろう」

「ち、違いますよ」

「また目に愉悦が浮かんどったわ。言っておくが貯金しろよ?キャバクラや風俗店へなどと努努考えるなよ?ふむ……協会に命じてもし使ったら俺に連絡がくるようにしておこう」


 くっ!この人はエスパーなのかっ!?

 もしくはやはり俺はサトラレなのか!?だから色々バレるのか!?


「本当に小僧の顔は面白いように考えている事が出るのう」


 そ、そんなになのかな……


「ポーカーフェイスというものを覚えた方がいいね、このままじゃモテないよ」


 だから、一々モテないモテない言わないで下さいっ!!

 まったくもうっ!!

 でも、先輩はまだなかなか話す事は出来ないけれど、エミちゃんと川上とLINE出来ているんだからねっ!くくっ、今に思い知らせてやるぜっ!


「あぁそうだ、今週の土日は修練は休みにする」

「えっ?本当ですか?」

「あぁクリスマスだからな、恋び……友人と楽しく過ごせばいい」


 ちょっ!

 なんで途中で言い直したんですか!?

 止めてっ!何か惨めな気分になるからっ!

 ってか、クソ忍者って結婚してるんだっけ?あっ、そもそも年齢さえ知らないや。

 でも今更聞けないしな〜


「あぁ、言っていなかったか。俺はまだ結婚はしていないぞ」


 どうやらまた顔に出ていたのを読まれたようだ。


「しないんですか?」

「うーん、40になる前にはとは思っているがな……その辺は相手ある話だし、何とも言えんな」


 という事は、つまり40未満……35,6ってところかな?


「わしは孫にサンタをやらないかん」


 誠一さん大きかったもんね、確かに数人孫が居そうだし、下手したらひ孫もいそうだ。ハゲヤクザについては納得だ。


「私の娘は2人とも嫁に行っちまったからね、旦那と2人でゆっくり過ごすよ」


 残る鬼畜治療師はどうなんだろうと、チラリと視線を送ったら答えてくれたけど、嫁に行くような歳の娘がいたなんてビックリだ。そして何より結婚していた事に。

 被害者……じゃなくて旦那さんはどんな人なんだろう、ドMなのかそれとも弱味でも握られているんだろうか。


「あんたまた失礼な事考えているようだね……あれかい?もしかしてその腕要らないのかい?」

「すみませんでしたっ!」


 ヤバイ!

 マジでポーカーフェイスを身につけなければ……

 このままではいつかマジで殺される!

 えっ?余計な事を考えなければいいだって?それは無理でしょっ!俺は素直なんだよっ!


「話を戻すぞ?26日から30日まではダンジョン内での修練だ。31日は休み、元日は本部にて新年の年賀の宴があるから迎えを寄越させるから来い、お年玉もあるからな」


 今度のダンジョンでは何をさせるのか気になるところだけど、お年玉発言で吹っ飛んだ。

 これまで貰った事がないわけではない、院長先生や職員の先生が、自腹で1人1人にくれるからね。ただあくまでも自腹の気持ち程度のものだから、10円〜100円玉がポチ袋に入っている感じ。小さい頃は幼稚園やクラスメイトから聞く平均お年玉金額にやっかみ、少ない事を恨んだりした事もあるけれど、歳をとるに連れて値段ではなくてその気持ちをうれしく思うようになってきたんだけどね。

 ただわざわざ「お年玉も出る」と言うくらいだから、きっとそれなりの金額が入ってるんだろうとなると話は別だ。期待せざるを得ないっ!


「さあ修練を続けるぞ」


 テンション上がったぞっ!

 たくさん貰えるように頑張るっ!!

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