第52話ーーゾウさんこんにちは

「これより突入する」

「「「「「はっ」」」」」

「先導隊は入ったら警戒しつつ待機していろ」


 クソ忍者の掛け声に突入班の人間の返事がこだまする。

 行くのは、東さんたち12人パーティーと、俺たち4人の計16人だ。


「では我らから参ります」


 東さんたちパーティーが先導するようだ。恐る恐るといった表情で、剣や槍などをダンジョン入口から向こうへと入れたり出したりしてから、意を決したように1人、また1人と大きな盾を構えた人から突入して行く。

 不思議な事に、確かに人が入ったはずなのに向こう側は最初と変わらない草原のままだ。

 どこかへ飛ばされるのだろうか?


「不思議そうな顔をしているな、突発性はダンジョンとは何か?を端的に表している。即ちダンジョンとは異界であるとな。故にこちらから見える世界と、中は違うという事だ」

「そうなんですね」

「まぁあまり突発性ダンジョンを一般人が目にする事はないからな」


 そう、学校で習うのは存在だけであって、どのような見た目や中の様子かなどは教えて貰わないのだ。時折ニュースなどで見かける事もありはするが、このように突入から見る事はなく、だいたいが帰還の様子だけだ。


「さあ我らも行くぞ」


 クソ忍者の言葉にハゲヤクザと鬼畜治療師が進み出す。

 これだけのメンバーが一緒だから大丈夫だとは思うのだが、やはり不安が押し寄せる……

 チラリとアマとキムを振り返ると、泣きそうな顔で手を振っている。

 俺が心配で泣きそうな顔なわけではない、2人はで顔を歪めているのだ。

 ある理由とは?

 それは待ち時間の間に起きた。自分たちが何も出来ず見守る事しか出来ないとわかり、俺にそれぞれが持っていた物をくれたのだが、アマはスポーツドリンク、キムは大福。その大福が問題だった。


「ドラマの捜査三課長で、黒星を白星で包みこむとかやってたから、縁起いいと思うんだ」

「ん?どういう意味」

「事件が起きて、中盤で大体差し入れがあるんだけどな、黒星……つまり負けを白で包んで白星に変えるとかそんな意味らしい」

「あぁー俺も見た。確かにアリだな」


 説明があっているのかどうかはわからないが、キムなりの気遣いらしい。最近のドラマでやっていたらしく、アマも知っているようだ。


「へー縁起物か、ありがとう」


 なんて、3人で微笑ましく会話していたんだ。

 そうしたら……


「天野と木村はそんな事をよく知っているな」

「「はいっ」」

「ドラマなんて見る暇があるのか、そうかそうか。じゃあもう少し修行を厳しくしても余裕があるという事だな」

「あっ……」

「い、いや……」

「友達の横川くんの出発を見守った後は、嬉し楽しの修行だ」


 伊賀の師匠さんのにこやかな微笑みと共に、恐ろしい言葉が吐き出されたのだ。

 そして彼らの表情は凍ったというわけである。

 危ない危ない……それ再放送で1回だけ見た事あって、説明途中で思い出しつつあったけど、キムたちに花を持たせるために黙っておいて正解だったよ。


 っと、クソ忍者が背中を押してくるので俺も突入だが、その前に一応今の状態を確認しておこう。


 今のステータスやスキルはこうだ。


 ◆

 横川一太 Age16

 job―[NlNJA Lv3]

 体力―AAA

 魔力―AAA

 力 ―AA

 知力―BBB

 器用―AAA

 敏捷―AAA

 精神―AA

 ◆

 固有スキル―火遁(Lv2)・闇遁(Lv2)・口寄せ(Lv2)・分身(Lv8)・刀剣術(Lv16)・二刀流術(Lv6)・手裏剣術(Lv9)・跳躍(Lv13)・空歩(Lv9)・壁面歩行(Lv4)・毒耐性(MAX)・麻痺耐性(MAX)・石化耐性(Lv8)・睡眠魔法耐性(Lv8)・九字印術(Lv8)・鑑定阻害(Lv9)

 ◆

 火遁(Lv2)……火球(MAX)―火の玉を前方に10個同時に放出できる。

 ……火矢(Lv4)―火の矢を前方に4つ同時に放出出来る。

 闇遁(Lv2)……影潜り(Lv9)―300分間影の中に入る事ができる。対象が動いた場合は自動的に動く。他の影と重なった場合、移動出来る。

 ……影操身の術(Lv3)―入っている生物の影の中から、その者を操る事が出来る。連続使用時間45分

 口寄せ(Lv2)……鼠(Lv8)―鼠を8匹魔力によって召喚できる。鼠は魔力で出来ている為に死んでも再度の召喚が可能。念話により意思疎通が可能。攻撃は不可能。存在時間は8時間。

 ……鴉(Lv4)―鴉を4羽魔力によって召喚できる。鴉は魔力によって出来ている為に死んでも再度の召喚が可能。念話により意思疎通が可能。攻撃可能。存在時間は4時間。

 分身(Lv8)……分身(Lv8)―魔力で出来た分身を8体作る事が可能。命令をこなす事が出来る。行動により見聞きした物や経験を共有出来る。話す事も可能。存在時間は8時間。

 相位転身(Lv2)……相位転身(Lv2)―自身と分身の位置を入れ替わる事が出来る。対象分身を目視するか思い浮かべ、九字印の臨の手印を行う事により可能。400m未満。

 刀剣術(Lv16)……刀を扱う事が出来る。背面に2本装備可能。「抜刀」「納刀」の発動句により手に刀を装備出来る。

 二刀流術(Lv6)……二刀流での行動が出来る。

 手裏剣術(Lv9)……手裏剣を投げる事が出来る。

 跳躍(Lv13)……身体能力+13mの高さまで跳躍距離が伸びる。

 空歩(Lv9)……跳躍時に空中で9歩歩ける。

 壁面歩行(Lv4)……120度の壁を床と同じように歩ける。

 毒耐性(MAX)……毒に耐性がある。

 麻痺耐性(MAX)……麻痺に耐性がある。

 石化耐性(Lv8)……石化に耐性がある。

 睡眠耐性(Lv8)……睡眠魔法に耐性がある。

 九字印術(Lv8)……九字印をきる事で、集中力を高める。

 ……九字印をきる事で、自己治癒力を高め、傷を治す事が出来る。

 鑑定阻害(Lv9)……鑑定スキル・魔法のレベル9以下を阻害する。

 ◆


 分身との同時行動によるお陰か、ステータスは伸びた。スキルも鴉の召喚と相位転身という新しいものが出てきた。

 鴉は鼠と同じ扱いなので説明はいらないだろうが、相位転身は凄い。距離制限はあるが、ほぼ転移のようなものなのだ。ただ近距離での目視の場合は必要ないが、遠距離になる場合は事前に分身一人一人に特徴をつける腕章か何かをさせないと困るだろうと思われる。


 確認はOKだし突入しようか。


 入口を入る時に何か定着型ダンジョンとは違う感覚でもあるのかと思ったが、至って普通、何も感じる事はなかった。ただ突然目の前の風景が草原から赤茶色の洞窟に変わった事以外は。


「目視のみですが、前方に大きな扉がある事以外、敵影などありません」

「御苦労」


 東さんの言葉にクソ忍者が鷹揚に頷いて見せ、前方を見渡している。

 俺もそれに従い見てみると、確かに100mほと進んだところに、高さ20m幅15mほどの巨大な観音開きらしい鉄扉があるだけのようだ。


「ボス部屋だけという事か?ふむ……これよりこの横川がスキルを使用するが、その一切についての他言及び詮索は禁ずる、よいな?但しお主たちの所属する氏族の長には内容は伝えてある故、安心してくれ」

「それほどまでに危険という事でしょうか」

「あぁ、勇者よりもよほどな……まぁ見ればわかる」


 この人たちにはスキルは見せてOKみたいだ。って、各流派のTOPにはいつの間にか伝えられているのね……知らんかった。まぁでも、確かに伝えてなきゃ、詮索とか大変そうだもんな〜

 あぁ、12人の視線が凄い集まってる……ちょっと恥ずかしいし、緊張する。


「では横川、鴉と鼠を出して扉前までを探らせろ」

「影に潜りますか?」

「いや、とりあえずは必要ない」

「召喚!鼠!鴉!」


 8匹の鼠と4羽の鴉が俺の前に現れる。


 東さんたちパーティーの女性数人から「キャッ」とか「ヒッ」とか声が聞こえてくる……

 確かに女性は鼠とか鴉とかを、生理的に嫌ったり嫌がったりする人多いけどさ、あくまでも作り物だし、よく見たら可愛いくないことも無いから悲鳴は勘弁して欲しい。


「扉の前まで偵察、鴉はモンスターがいたら攻撃しろ。行けっ」


 本当は言葉を必要としないが、周りにわかりやすくするためにね。


 実体ではないせいか、足音や羽音を一切させずに扉へと一直線に向かっていく召喚獣たち。


「何もいないし、怪しい点もないようです」

「わかった、解除して構わん」

「召喚解除」

「では扉前まで前進する」


 罠らしき物はないとはわかったが、一応盾持ちも先頭にして少しづつ前進する。


「先ほどのスキルが気になるのはわかるが、行動に集中しろっ!」

「あっ……」

「すみませんっ」


 東さんたちパーティーから、めちゃくちゃ興味津々といった視線を感じてたんだよね。クソ忍者も同じだったらしい、注意してくれて助かった。


 鼠と鴉での偵察通り、何事もなく扉前まで到着した。


「準備はいいか?……では入る」


 大きな扉を数人掛りで押し開ける。

 そこには椅子に座ったゾウと、周りに人の大きさほどあるクジャクと亀が2匹づついた。





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

本日も2話更新予定です。

22時にもういっちょですm(*_ _)m

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