憧れのあの子はダンジョンシーカー〜僕は彼女を追いかける?〜
マニアックパンダ
第1章夏休み
第1話ーー告白
「2年の
学校隣にある公園、銀杏の大木下で僕は頭を90度にきっちり下げ、右手を前に出しながら叫ぶ。
相手は学校1番の美少女で、読者モデルで、毎日のように役者とか歌手とか色んな事務所などのスカウトを受けている
今どきほとんどの高校生が染めているというのに、真っ黒な美しい髪を肩まで伸ばし、小さな顔に大きな目、すっと通った鼻筋にふっくらとした柔らかそうな唇。すらりとした体型なのに出るところは出てて、脚は細く長い。その上勉強もスポーツも学年一位の成績なんて反則だよね。
毎日限定2人までの告白タイム。2人までって何って?あまりにも校内外で告白されて大変らしく、如月先輩の友人一同がSNSで予約受付をしているんだよね。だから告白するにも抽選を勝ち抜いてからになるって話。
そして僕は今、当たるだけでも運を使い切ると言われる抽選に当選しここにいるって訳なんだ。
それと、告白時間は一人あたり3分まで。如月先輩が当選者の前に現れた瞬間から、タイマーは時を刻み始める。それは公園をぐるりと囲むように待機している、[告白管理委員会]の人達に徹底的に管理されている。委員会の人達がいるのは時間管理だけじゃなくて、どさくさに紛れて良からぬ事をしようとする人がいないようにとの配慮らしい。以前無理矢理抱きついた人がいたらしいが、その後行方がわからないとか、そんな話がまことしなやかに噂されている。なんたってこの告白シーンはSNSで配信されているからね。予約表の埋まり具合、告白イベントの日付、告白者の簡単な紹介文も常時SNSに上げられているし。
だから僕はきっちり90度に頭を下げ、右手を出して自己紹介と告白をした後、すぐ様頭を上げて用意してきた言葉を繋げる。でも右手は出したまま……告白者から触れにいくのは禁止されているけれど、如月先輩から触れてくる分には問題ないからね、可能性がある以上残しておかないと勿体ない。
「学校を卒業したらダンジョンシーカーになるって聞いたんですけど、本当ですか?その際どこのダンジョンを拠点に考えているんですか?もうパーティーは組む相手はいるんですか?もし組んでいるとしたら、そこに入るにはどうしたらいいですか?ランクカードはどうでしたか?いいスキルはでましたか?得物はどのようなものですか?近接遠距離どちらですか?僕は近接が似合うと思います、あっでも遠距離魔法も似合うかな、いやでも弓を放つ姿はきっと物語のエルフのようで美しいかと想像出来ますね。あと[ピーピーピー!!]僕「はい、そこまでだよー」」
くそっ!
まだ言いたいことはいっぱいあったのに……わかっていた事だけど、タイマーの音が恨めしい。
如月先輩の顔を見ると、なぜだかポカーンとしている。
「えっと、うん、ダンジョンに潜るつもりかな」
「はいはいはいはい、そこまでだよー!香織もそれ以上言っちゃダメだよ、誰が聞いているかわからないこんな場所で余計な事言ったら、ストーカー発生しちゃうからね」
告白者管理委員会め……
もう少しで新情報ゲット出来たかもしれないのに。
「何?なんか文句あるの?」
「いえいえとんでもないです。機会を設けて頂き感謝の念しかありませんです」
「ふーん、ならいいけど……くだらない事を考えないようにね」
「もちろんでございます」
チッ……
無駄に勘が鋭いな……
まぁこれまで山ほどのチャレンジャーを捌いてきたんだから、それも納得かな。
あっ、それよりも大事なものを忘れていたよ。
「あの、これ良かったら読んでください」
僕は2通の手紙をポケットから取り出し、委員会の人に渡す。
「なんで2通?」
「如月先輩と貴女にです」
「へっ?私?香織に告白しにきたんじゃないの?」
「もちろんそうですけど、取り敢えずお願いします。次の人も待ってるみたいなんで」
1通は如月先輩に向けての手紙。内容はさっきの質問の全てと、僕の細かい自己紹介と電話番号とSNSのアドレス。
もう1通は委員会の人に向けての感謝と労いの言葉。そして先輩に書いた事と同じ自己紹介とアドレスなど……全てを取り仕切る委員会の人の心象を良くするのも必要だよね。
「あっ……うん、じゃあ大丈夫だとは思うけど、検閲してから渡すね」
「はいっ!では今日はお時間ありがとうございました」
「う、うん……」
もう一度きっちり90度頭を下げてから、公園をあとにする。
こういうのはグダグダしていると印象悪いからね。これまでのチャレンジャーは少しでも一緒にいたいのか、それとも可能性があるとでも思っているのか理由を付けてはそこにいようとしているみたいだけど、絶対ダメだと前から思ってたんだよ。
さて本日のメインイベントも終わった事だし帰るかな。予定ミッションの8割はクリア出来たし、良かったよ。まぁ欲を言えばもう少し声が聞けたらとか、手を握って貰えたらなんて叶わぬ可能性の高い欲はあったけどね。
1番の目的であるアリバイは確実なものに出来たから問題ないか。
……あれ?
なんか抜けているような……
あっ、告白の答え聞いていないや!
明日親友達になんて言おうか……
まぁでも告白シーンはきっと見ているから、大丈夫かな。
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