沈黙のメテオライト
@kaoru_0
第1話 始まり
世間一般では入学式シーズンの高校の屋上に1人の少年がいた。
片手にはある人物のデータが記入されたバインダーがあった。不意に屋上の扉は開かれた。
「れーい。やっぱここにいた」
「友也か」
名前を読んだ人物はバインダーから目を放さなかった。
「例の新しい子? データ早いね」
聞いたものの、友也と呼ばれた少年も興味がなさそうだ。
「うちの普通科らしい。だから、個人データは早かった。ま、ほぼ白紙と変わらんけど」
そういったが最後バインダーを閉じ、顔をあげる。
「そろそろ行くぞ」
そういい、扉の方へ歩き出す。
少年が背を向けた上には、空はなかった。
そしてふと思い出したように告げる。
「そういえば、教育係、友也だから。詳細は後でメールする」
友也は言葉がつまったので、少ししてから答えた。
「ウィッス」
「召集は先生が行ってくれたから、案内は俺。そんで教育係は友也。分かった? 」
せめて疑問符が仕事してほしいと友也は思ったが、決定したことに口を出しても無駄であることは百も承知だった。文句を言える相手なだけましだと思い文句だけは言った。
「せめて、前日には言わないでよ。」
精一杯の皮肉のつもりだった。
「悪いな」
即答で返されたのだから、恐らく微塵も思っていない。
「何も知らずに
注意事項をつけたし、屋上の扉を開ける。
友也も、軽く返事をしながら、あとに続いていった。
新学期に心を踊らせながら校門を潜った。校舎に続く道は桜が満開に咲き誇っている。
そして、新しいクラスが書かれた掲示板を確認するために澪香はワクワクしながら進んでいく。
到着すると人がざわざわとしていた。
澪香が掲示板につくと同級生の視線は一瞬の内に少女へと移った。その視線に疑問を思いながらも掲示板を見た。
それを見て、澪香は驚いた。自分の名前がどのクラスにも無かったのである。
その代わりに、呼び出し状と書かれた掲示物の方に彼女の名前はあった。
彼女は、頭が良いわけでもなく、運動が出来るわけでもない。学校で先生にも定評のある模範生と言っても過言ではない人物だ。
訳も分からず、澪香は職員室へと急いだ。
「失礼します。呼び出し状をみてこっちへ来たんですけど…」
不安げに入った職員室だった。教員達は一斉にこちらへと視線をやった。すぐに、昨年の担任の先生が答えた。
「ああ、来たか山里。早速だが、ちょっと先生についてこい」
そう言い、山里を別の部屋へ案内した。そこは、生徒は一切近づいては行けないと言われていた本校舎からも離れていた部屋だった。
「この先に、お前を待っているやつがいるから、そいつの話を聞いてこい」
それだけ言うと、教師は、さっさと帰っていった。
山里は、意を決して扉を開ける。
「失礼します。」
そこには、1人の青年が待っていた。存在に気づくと男は話しかけてきた。
「来たか。君が
「月浪先生…ですか。」
この後、山里は衝撃の事実を耳にする。
「ああ。早速だが、用件だけ伝えさせてもらう。今日から君は、能力特別科へと転学となった。あっちは寮生だから、必要な荷物全てを持って明日の朝六時、ここの正門前へ来い。迎えが来てくれるから」
澪香は驚きで声がでなかった。やっとの事で口を開いた澪香は質問をする
「ま、待ってください。能力特別科って何ですか?
転科って、手続きもなにもしてないのに。保護者の人からの許可だって…」
「能力特別科は行けば分かるだろう。言ったところで、理解して貰えるとは思ってない。見た方が理解できる。手続きも、保護者の許可も何も要らない。これは、政府の決定だ」
「政府の決定って…人の未来に政府が口出しするんですか?」
「混乱はよく分かる。だが、この決定には必ず従わなければならない。どんな有力者だってこの決定に、反論できた奴はいない。とにかく、今日は、帰って良いぞ。もう一度言うが明日の朝六時普通科の校門前に来いよ。来なくても良いが俺等は君の家の住所も把握してる。あがくだけ無駄だからな」
後の事は正直覚えていない。ただショックで家に帰ったことだけは覚えている。家に帰るとすぐ保護者の携帯へとかけようとした。
ただし、携帯は圏外となっていて電話はかけられなかった。
混乱のまま、その日を過ごした。
そして、次の朝になった。六時に学校に行く気にはなれずに家にいた。昨日の事は嘘だと思いたかったのだ。六時になった頃に玄関のチャイムがなった。
「はい。…どちら様ですか?」
訪ねてきたのは1人の少年だった。
「やっぱり自宅にいたか。今日の六時、普通科の正門の前と言ったはずだが?」
澪香はうろたえる
「あなたは誰ですか?それに、六時って…」
「説明してる暇はない。学校の登校時間は普通科と変わらない八時半だ。荷物の整理もすんでいないだろう?ここに残った奴は全て処分される。捨てられくないやつだけきちんと纏めるんだな。手伝ってやるから、さっさと準備をしろ」
反論を許さないような口ぶりで家の中へと入ってくる。
澪香は嘘でないことを分かり急いで準備を始めようとする。
少年は荷物の梱包に慣れているのか、澪香は指示をするだけで良いようなレベルだった。ものの三十分足らずで作業は完了した。
「時間がない。玄関の前に纏めておいとけよ。後で別の奴に取りに来てもらうように頼んだ。とりあえず、身一つで俺について来い。」
そういうと、またも有無を言わさないような口ぶりで、澪香に背を向ける
「ま、待ってください。まずあなたは? 」
「そういえば、名前も教えていなかったな。
それだけ言うと、またも歩き出す。澪香は慌ててついていった。
三十分ほど歩いた頃、あるビルの前で、玲は入っていった。
「ここだ。ここが能力特別科の入口だよ」
「ビルが、その能力特別科の校舎ですか? 」
玲はそのビルのなかに入り、エレベーターの前で止まった。そして、設定パネルのところにカードキーをあてて言った。
「嫌、ここは入口だって行ったろ? 能力特別科の校舎は地下に存在する。」
エレベーターに二人は乗り込みエレベーターは確かに地下に降りていった。
ニ、三分ほどしてエレベーターは止まり、扉が開いた。
「ついたようだな。言うべきか迷ったが、優しさも含め言っておいてやる。ようこそ、山里澪香。歓迎したくはないがこうなった以上、言わせてもらうこの生き地獄ではもう二度と地上には戻れない。普通の生活は、早々に諦めることをおすすめするよ。」
開いた先に見えたものは、地上と何ら変わりの無さそうな、大きな都市だった
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