ログインボーナス31日目 あんドーナツ
目が覚めたら日本に帰っていた。……ということはなくバリバリ、クラクフのホテルである。
時刻は3時、日本の時間では朝の10時だ。
喉が渇いたので冷蔵庫を開けると、ワルシャワのホテルに忘れていたと思っていた浅漬けたくあんが鎮座していた。
隣のベットには配達員さんが着ていたパジャマが、丁寧にたたまれて置いてある。
ホテル内の売店にでも行っているのだろうか?
少しずつ明るくなってきたクラクフの街並みを眺めながら、浅漬けたくあんをコリコリと食べている。クラクフ教会が一応見える。
5分くらい経つと配達員さんが部屋に戻ってきた。
「お寝坊さんですね」
まあ、そうなる。10時だからね。
「これ今日のログインボーナスのあんドーナツです」
そう言って紙袋を手渡される。袋に漢字で店名が記されている。空輸か?
「配達員さんが持っている紙袋なんですか?」
「ポンチキです。ポーランドのジェリードーナツです」
「食べてみます?」と目の前に出されたので一口頂く。
ラズベリーのジャムの甘酸っぱさと生地の甘さが口の中で調和して美味しい。
朝食は、日本のドーナツとポーランドのドーナツを分け合った。
あんドーナツを食べた配達員さんは「煎茶が飲みたい」と言いながらコーヒーを啜っていた。
配達員さんが泳ぎたいと言ったので1時間ほど泳いでいる配達員さんを眺めていた。
泳ぎ終えた配達員さんにタオルと飲み物を手渡すと、ブロンドヘアの体格の良い男性が近づいてきた。
配達員さんをナンパしに来たのかと思ったが、彼の用は俺に有った。
「近頃日本に行くんだけれど都市部以外でおススメな場所はないだろうか」と配達員さんが翻訳してくれる。
「都心から地方に出ている新幹線の終着駅は個性豊かでおススメですよ。」
北海道、青森、新潟、石川、博多とか。
配達員さんを仲介して彼へと伝わる。
感謝の言葉だろうが、去り際に彼が言った言葉を配達員さんは翻訳してくれなかった。
旧市街で朝市を眺めた後、ヴィスワ川に行くと今度日本に行く予定の彼と出会った。
名前はジグムントと言うらしい。カッコいいな。
クルーズに乗ろうとしていた事を配達員さんがジグムントに伝えると、彼が所有している船に乗っけて貰えることになった。
何者だよジグムント。
乗船する前、後部に位置しているヴァヴュル城に後ろ髪を引かれた。
ジグムントが言っていたが、ここクラクフはポーランドの京都と言われているようだ。
元首都と世界遺産に登録されている所が類似しているなと思った。
船でヴロツワフの方向に進むと修道院が出てきた。
まるでドラ〇エ8の世界に来たようだ。
ジグムントは修道院から見る景色は最高だ、と言っていたが修道院がターニングポイントになった。
先ほどの岸の向かい側に降ろして貰う。ああ、城よ。
ジグムントはこれから仕事らしい。
配達員さんに連れられ、”日本美術技術博物館、漫画館”に入る。
親日国なんだと実感する。
浮世絵、水墨画、日本刀、甲冑、漆器、着物、掛け軸、屏風など日本の芸術が展示されていた。
まさかポーランドで日本の物を見ることになるとは思いもしなかった。
配達員さんとカフェのテラス席で、おにぎりと味噌汁を食べた。
ポーランドにいるのか日本にいるのか分からなくなる。
カフェで食事を終えた後、配達員さんの車で3時間かけてヴロツワフへ。
今日はレストランに寄らずそのままホテルへ。
配達員さんの後にシャワーを浴びる。
寝巻に着替えて部屋に戻ると、配達員さんがカップ麺を啜っていた。かわいい。
封を開けていないカップ麵を貰い、電気ケトルからお湯を入れているとあることに気が付いた。
今日ポーランドの食べ物ポンチキしか食べていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます