にとにとにー

@rairahura

第1話

黒衣森の奥でお仕事中 というか今しがた終わったとこ やたらでかいアンテロープを狩るってのは言うは易く行うは難しってやつで なかなか手がかかったけどまーあたしの天才的な罠によって上手いことやりおおせた

解体するときに汚れた手を川で洗ってると

誰かの歌声を捉えて耳がピクリと動く こんな森の奥で珍しい

その聞き覚えのある声の方にふらふらと向かう

生い茂った草やらなんやらをかき分けると急に開けた場所に出る

柔らかい木漏れ日が差し込む小さな空間に 食えないし薬にもならない名前も知らない花がやたらと咲いている

その真ん中に 声の主が座っていた


楽しげに歌いながらせっせこ手を動かして何かしてるみたいだった

「ニトロ」

呼びかけるとそいつは歌うのをやめてこっちを向く

「あれえ ライラちゃん」

どうしたのこんな森の奥に と不思議そうに聞いてくる

あたしが森にいるのはたいして珍しくないだろうに むしろ

「聞きたいのはこっちだよ お前クルザスに用事あったんじゃねーの? あたしはアンテロープを狩るってお仕事だよ ネル6つ分くらいだった」

「へえ そんなに大きなアンテロープがいるんだ!知らなかったなあ」

驚いたー とニトロは驚いてるんだか何考えてんだわかんねー顔 いつも通りっちゃいつも通りだな

「私の方はねえ 用事が早めに終わったからちょっと寄り道してるんだあ」

なーるほどな 納得納得

「なるほどなるほど 邪魔したな じゃあまた」

立ち去ろうとすると尻尾を引っ張られる痛い痛い痛い!!!!

「やめろなんだやめろ!!いてーだろうが!なんだ!!!」

ニトロはいつも通りのふにゃふにゃした笑顔で いやいつもより楽しそうに

「ちょっとまってー」

なんてほざく

振りきって帰ろうにも尻尾が千切られそうだ こいつのどこにそんな力があるってんだ

「わかったわかったから尻尾離せ」

「やったあ!あ ごめんねえ」

痛かった?なんてほにゃほにゃ笑いながら手を離す 痛いって言ってんだろうが


振りきって帰ると多分ニトロは露骨に悲しむからしかたねーしその場に座る

ニトロは私の尻尾を離すとまたせっせと何かをし始めた

「で 何の用?」

「うーんとね 内緒」

「帰っていいか?」

「えーだめだめ...よし できた!」

言うと同時になにかを頭に乗せられる 乗せられた何かからこれまた落ちるなにかが顔にかかる

「うへえ!」

つい頭を降る と乗せられたなにかが地面に落ちる

なんだこれ 花?の塊みたいな

「あー 落としちゃダメだよー」

「あ?急になんだよ」

「花かんむりだよー」

私も自分の分作ったからお揃いだよーとニトロは私が落としたもんと似たような塊を頭に乗せる

ああ そうやって頭に乗せるもんなんだな

「これをあたしも頭に乗せてろと」

「うん!あ もう日が落ちてきちゃうねえ 一緒に帰ろっか!」

「これを乗せてえ?」

「そーだよー!」

相変わらずにっこにこでニトロは言うけど正直めんどくさくて仕方ない

「だめ?」

だから露骨に悲しそうな顔するなよあたしが悪いことしてるみたいだからやめて頂けませんかねぇ

「わかったよ」

しかたねーなって言うとニトロはすぐ笑顔になった

計算か天然でやってんのか知らねーけど調子いいやつ


頭に花かんむり(お揃い!)を乗せて帰る

違和感がすごくて歩きづらい

「わあ ライラちゃん似合うよ!」

「ああそうかいそりゃーよかった」

「もーライラちゃんたら!ねえねえ私は?どうかな?」

「あー似合うなあニトロはやっぱり可愛いなー」

「もう!適当なこと言ってー」

ニトロは怒ってます!って感じだけど本当は怒ってないのは流石にわかる

まあニトロは血やら泥よか花の方が似合ってんじゃねーのかな 言わねーけどさ

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