Madonna

想人~Thought~

Wordで描いたのをコピペしている為、ルビが変になってます。悪しからず(修正しようにも操作が重すぎて&反応しない為出来ません)。m(__)m

Madonna(マドンナ)             




  想人~Thought~




 ──私のこの右手を、幻覚のペンキでどっぷりと染めた。そして、その手を天(そら)に翳し、綺麗な青色を汚してみようとした。…やはり、天が私の手によって汚れる事は、なかった。それならば、次はこの地面と目前の川を汚してみよう。…やはり、これもまた、結果は同じであったか。そんな事、初めから分かってはいたのだが…


 …ああ、でもよかったよ、本当。やはり私には、愛してやまない「地球~母~」を傷付ける事が出来ないという事実を、今改めて理解出来たのだから。実際にアンチエコロジーの行為をやる事なんて私には無理だから、今こうして「母を汚す」行為をイメージでやってみたのである。痛みを知る為に。たかだか此れを行っただけで、思った以上に心は痛がったのだった。取り敢えず今は、―とても気持ちの良いこの細やかな涼風を、味わおう。…と、そんな矢先。私が今居る此の地点から約二十メートル先に、「私と対照的な人物」が散歩しているのを、確認したのである。あらららら・・・・・・


 私は今、大阪府の枚方(ひらかた)市牧野(まきの)町という所にあるゴルフ場横の淀川沿いの歩道を、自転車で走っている。修理歴が甚だしく多い、約九千円のフツーの自転車だ。と、そんなことはさておき、今日はとても清々しい、晴天の春の日の午前である。京都にあるオーナー企業の大きなビルディングで常駐警備員として二十四歳の春から今日迄の三年間を過ごしており、仕事は勤務開始の朝八時に始まり二十五時間後の午前九時に終わるので、この日もいつものように川沿いの気持ち良い風を全身に浴びせながら同市御殿山(ごてんやま)町にあるワンルームの自宅マンションを目指してペダルを漕いでいたのだった。


 そしてその途中、自転車を降りたのである。アンチエコロジーのイマジネーションを行ったのも、痛みを知る為の他に、今日迄味わい続けてきた此の美しい「自然の情景」と美味しい風を、もっともっと堪能して其の恩恵に感謝しようと、思ったからである。


「私と対照的な人物」は、そんな私の心を害した。別に、「ポイ捨て」は今に始まった訳ではない。大阪だろうが京都だろうが、何処に行っても「エゴイズムという言葉すらも知らない愚かな莫迦人間共」によってポイポイ捨てられた煙草の吸殻や芥達は、地球上のそこら中で泣きじゃくっている。「私達ごみは、人間様のお役に立ってこの生涯にピリオドを打たされたのに、どうして人間様方は、自分の都合だけを考えて、そして面倒臭がって私達にこのような酷い仕打ちを施すのですか?」、とね。


 見たところ、其奴は七十歳ぐらいといったところかな。随分と人相の悪い、服装などの見て呉れもスーツ姿で短髪の自分とは正反対の汚らわしい爺さんである。


 堂々と、私の視界内でコーヒーの空き缶を道端の草地に放り投げた。私は自転車に跨り足を進め、その空き缶を拾ってサドルに乗ったままの状態で背後から爺さんに声を掛けた。


「あの、すみません」


「……んあぁ?」


 案の定、野暮ったい返事が帰って来た。私はこいつの事を壊れかけのおんぼろ老いぼれと見下しながら言葉を続けた。


「すみません、此れ、落し物ですけど」


「……んあぁ?」


「いや、だから、落とし物ですよ、って」


「んあぁ?しらん、そんなもん」


「いやいや、知らんておかしいでしょう。僕今落とされた所見たんですから」


「んああ!??だから§±×÷\仝@¶!!」


「いてっ」


 爺さんは、缶を持っている私の左手をバチンと引っ叩いて、カコーンカンコンと落っこちていった缶を拾い、ムスッとしながら歩き去っていった。


「僕、時々この一帯をボランティアで清掃してるんです。どうかこれからも、ご協力の程を宜しくお願いします」


 無言のままどんどんと歩き去って行く爺さんの背中に、大声でそう嘘を吐いた。



 ──はい、と言う事でですね、続きはまた、何時の日か、何処かで……。ではでは、どうか何卒ゴキゲンヨウEveryone。アウフヴィーダーゼン。

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Madonna 想人~Thought~ @horobinosadame

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