第67話 ヒルプシムの回復

砂嵐は夜通し吹き荒れ、朝になってようやくおさまった。

日が昇ったのに気付いて、ヒルプシムの上で、ずっと帆布を支えていた腕を下ろした。


朝日の中に現れたヒルプシムの顔は、一面に細かい砂塵に覆われ、文字通りの土気色に変わっていた。


もしかして、本当に死んでるのでは?


アマリリスはヒルプシムに目を据えたまま、顔に巻き付けた、砂よけのターバンの口元をゆっくりとずり下げた。


「ピスキィ」


ごく静かな声で、従姉妹の名を呼んだ。




二呼吸くらいの間があって、ヒルプシムは薄目を開いた。


干からびた唇が何かを言おうと動いている。

アマリリスは前屈みになって耳を近付けた。


「おなか空いた。。」


起き直り、ヒルプシムを見つめたアマリリスの目から、どっと涙が溢れた。


これまで、今この時ほど天に感謝した日はなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る