第2話 世界が変わって1年。

【た・・けて・。

助けて・・・〇〇。】


記憶。

時に、自分の身に覚えのない出来事が、

まるで、本当に起きたかの様に、鮮明に頭を過ぎる。

あれは、夢で見たのか。将又はたまた、忘れてしまっているのか。


僕の不確かな記憶の淵に、映る記憶は、

綺麗な少女が、僕に助けを求める映像。

それ以上は、覚えていない。


けれど、その景色と声は、どの記憶よりも美しかった。




「また妄想でもしてるのか?セツナ。」


目を覚ますと、目の前に、なぎが僕の顔を覗き込んでいた。


《倉本 凪-クラモト ナギ 26歳 性別:♂》

凪は、僕に色んな事を教えてくれる兄貴分的存在。


僕は、ゆっくり身体を起こし、此処から観える景色を眺めた。


「もうすぐ1年だな・・・。」


1年。それは、僕がこの夢を見始めたの同時に、世界が大きく変わった事。

セツナと凪の見つめる景色は、滅びた都市。

この2人が、育った故郷だ。


10年前。

世界は、変わった。


記憶の断片コネクト”と呼ばれる前世の記憶が、多くの人々に甦り。

記憶の断片コネクト”を鮮明に、思い出した数だけ、魔法が使える世界となった。

つまり前世の記憶を多く思い出した=魔力。


そして厄介な事に、この“記憶の断片コネクト”と呼ばれるものは、

他者とある条件で、関わる事により、強く思い出す場合もある事がわかった事で、

より強い力を得たい者達が、争いを始め 世界は、大きく変わってしまった。


しかし、僕も凪も、魔力は、発動しなかった。

もしかしたら、この記憶は、本当に起きた事なのかもしれない。


「そろそろ時間だ。」

凪は、滅びた故郷に進み始めた。

僕は、凪の行く先々に、ついていく。


この1年は、ずっと凪と共に生きて 生き残ってきた。

凪について行けば、この世界で生き残れる。それが正しい事だ。


今日も、小さな捜索が終わり、故郷に帰る。


この街では、僕等と同じく魔力を持たない人々が、こっそりと隠れて暮らしている。

家族とはぐれた人たち。

家族だったもの達が、家族でなくなってしまって取り残された人たち。

他の街から逃げてきた人たち。


だから、皆。

協力し合い 生きてきた。

これも凪が、指揮って この国で、助け合う環境を作ったからだ。

だから生き残れた。


しかしこの日。

突然、安全な故郷の環境が、変わった。


街の中心が、騒がしい。

脅える住民たちの視線の先に、うずくまる男。

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