独白2

 彼女を初めて意識したのは、確か七月の上旬、蒸し暑い夏の日の給食の時間だったと記憶しています。


 彼女はコッペパンが不得意な様子で、時には男子に譲り、時には自分の半ズボンに押し込んでいました。

 彼女はとても綺麗な顔立ちとは裏腹に、いつも男子顔負けのスポーティな服装をしていました。

 おそらくはパンを押し込むのに、スカートは不向きだったのでしょう。


 パンをポケットに押し込もうとするその瞬間の、顎に届くか届かぬか、ギリギリの長さの横髪で俯き加減の顔を隠し、まるでイブがリンゴを持ち去るような危機感を漂わせてコッペパンを優しく握りしめるその様は、男子であれば誰もが膝をつき、世界中のあらゆる理不尽から彼女を守りたいと願う程でした。


 そう、私は守りたかったのです。

 私はあらゆる理不尽、強風に吹き荒ばれることに慣れています。


 それに比べて彼女はあまりにも華奢で、そして可憐過ぎたのです。

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