06 天狗娘2
「ごぶれいでしたー」
彼女は風呂上がりにそう言う。
黒髪はしっとりと濡れて、顔は赤い。
手には一升入る茶色い徳利と猪口を持っている。
「やっぱりお風呂で飲むお酒はいいですねぇ。格別です」
常より三割増しに機嫌が良い。
お酒を飲むと、タダでさえ明朗快活な彼女はウザいくらい快活になる。
が、それより服を着て欲しい。僕は彼女の裸体から目を逸らす。
「ね、ね、見て下さい」
何を見ろというのか。
彼女を見ると、片方の翼を身体の前に回し、胸を隠している。
「はねぶらぁ。どうです? 興奮します」
彼女の翼は大きく、身体を回しても胸を隠すには十分すぎて、胸が完全に隠れてしまっている。
「バカやってないで早く乾かせ」
僕はため息を吐いてから彼女を促す。
「はいはーい」
良い返事だ。
だが彼女は僕の前に立ち、翼を広げる。
「ね、いつものやってくださいよ。もう私、あなたがいないと」
振り返るようにこちらを流し目で見て要求してきた。
前、戯れにやったことが気に入ったのか、ここのところ毎日やるハメになっている。
「分かったよ」
僕は返事をしながら手を伸ばし、布団のないこたつの上に置いた団扇を手に取った。
彼女はそれを確認すると、僕の胡座をかく膝の上にこちらをむいてまたがるように座る。
「じゃ、お願いします」
猪口に酒を注ぎながら、艶のある声。
僕は彼女の翼の下、腰の後に手を回し、彼女の右翼の羽根を一枚一枚梳くようにして扇ぐ。
翼を広げ、乾くまでゆるゆると動かし所在なさげにしていたのを見かねてやったのだが。
今ではこのようにお酒を飲みながら気持ちよさそうに風に煽られている。
「いいですねぇ。わたし、幸せです」
彼女は手をひろげ、僕を抱きしめるように身体を預けた。
胸に、彼女の大きいのを感じる。
「好きですよ。お酒も、あなたも」
彼女の喉がこくりとないた。
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