物語屋へようこそ

菜々

第1話 物語屋

 とある町の路地裏にぽつんと存在する店。

 私はその場に全くそぐわないアンティーク調の扉をくぐり抜ける。


 カランコロン


 ドアベルの子気味良い音が店内に響き、それと同時に奥から店主がひょっこりと顔を出す。


「いらっしゃいませ!物語屋へ!」


 私を席に座らせて、彼女は紫がかった黒のロングヘアをなびかせながらわたわたとお茶を用意し始める。

 店内は彼女の趣味なのか、アンティーク家具で統一されているようだ。

 目の前の机も凝った意匠が施されており、きっと高いのだろうなと触るのを躊躇ってしまう。

 立地が悪くて日当たりは悪いが壁に詰まった本の保存的には日焼けしなくて良さそうだ。


「さて!」


 店内を見ているうちに彼女は準備を終え、目の前の椅子に腰掛けた。


 そして淑やかな表情で言葉を紡ぎ始める。



「それでは僭越ながら語らせていただきましょう

これは、とある死にたがりの女の子のお話───」



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