第30話 その気持ちは
「やっ!ちょっと待って!いくら休みっつったって・・・!これ!ヒカル、やめなさい!!」
小脇に抱えられて再びベッドへ運ばれた。
あの頃は愛子が彼を抱えて抱き上げたものだと言うのに。畜生め、でっかくなりおって。
「いつも思うんだよ、アイコは朝冷たいんだ。行ってらっしゃいっていう時だって僕からしないとキスしてくれない。たまには貴方からしてくれてもいいじゃない?小さい時はいっぱいしてくれたのにさ。絶対あの頃の方がたくさん僕にキスしてくれてた。」
だって当時は愛子だって若かったから。
第一外から見られたら色々困るでしょうが。
ルームウェアの下穿きに手を突っ込まれた。びくっと震える。
「待って、待って待って、お願いだから、待って!!」
まだトイレ行ってないんだから。色々とマズイ。
髪も梳かしてないし、顔も洗ってないし、風呂も入ってないし、歯も磨いていないし、マズイ。とにかく、マズイのだ。
「やだ。待たない。休みなんだからいいでしょう?昨夜だって我慢して、ゆっくり寝かせて上げたんだよ。」
確かに今日は待ちに待った土曜日で休日なのだけれども。
仰る通り昨夜は自分のベッドを一人でゆったり使って寝かせて貰えたけれども。
「もう、本当に、馬鹿・・・」
強引にベッドの中へ放り込まれたこの事態に。
少し怖くて悲しい。そして呆れる。
そう思うのに、やっぱりヒカルは愛子の可愛い息子で、そして愛しい恋人なのだ。
あの人とは違うけれど、あの人の次に一番好きな人なのだ。
あの人の息子だから好きなのだろうと言えば、確かにそうなのだろう。似ている部分もあるし、面影を追ってしまうのは仕方のない事だった。
捨てられるかといえば否だが、逆に彼が自分を捨てると言えばきっと承諾してしまう。
思っても叶えられない思いを長年抱えてきた愛子には、同じ思いをしてきたヒカルの気持ちが嫌と言う程わかるのだから。
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