第7話 腿太郎、海を渡る

海にプッカリ浮いた島がありました。

ゴツゴツの黒い岩石の山がある浮島です。

あれが、鬼ヶ島です。


「なんで海に浮いているのか」


猿山が疑問を口に出しました。


「それはだね──」


おじーさんが言うには、島の底の方に大きな大きな水に浮く石があるらしいのです。

だからおじーさんとおばーさんは島を遠くに投げ飛ばしたのだと腿太郎が三人に説明すると。


「………」

「………」


猿山と雉尾にドン引かれ。


「そうなんすか!!すっげーすね!!」


犬塚はその岩を少しもらって浮き輪にしたいと願望を漏らしました。


「とりあえず船を探しましょう」


何はともあれ、鬼ヶ島に辿り着かなくてはなりません。

海を渡るために腿太郎達は貸し舟を探し始めました。


しかし残念な事に船は全て鬼によって破壊されておりました。


漁師達はたまらず鬼ヶ島が近付くとみんな逃げていってしまい、ここらには船の一槽も残っていないそうです。


「ならば仕方がない」


腿太郎はそう言うや、近くの森で大木を三本程を手刀で伐って持ってきました。


「船を作ろう」


そうです。

無いのなら作ればいいのです。


腿太郎の意見に賛同した三人は早速作り始めました。


猿山が設計図を作り、腿太郎が細かい部品を器用に削り出し、雉尾が釘穴を空けて組み立てていき、犬塚はウォーミングアップをするためにそこら辺を走り回りました。


そうして出来上がった船を見て、四人は満足そうに名前をつけました。

『犬掻き号』

それがこの船の名前です。


「こんなのよく考えたな猿山。まさかこの車輪を漕ぐことによって船が進むとは」

「ちょうどよく走るのが好きな犬がいるので、活用しなければいけないなと思いまして」


船の後方に自転車がくっついておりました。

その車輪は大きな水車で、漕げば水が後ろに排出されて進む仕組みです。


「猿にしては気が利いているじゃないか」


犬塚は大いに気に入りました。


「さあ出発しようか」


そう言った腿太郎がごく当然の事のように自転車に跨がりました。


「待て待て待て待てぃ!!!そこは俺の場所っす!!腿太郎さんはこっち!!!」


しかし、せっかく体を暖めた犬塚によって船の方に移動させられてしまいました。

当然です。


「気を取り直してしゅっぱーーーつ!!!!」


今度は犬塚が楽しげに宣言し、自転車を漕ぎ出します。


盛大な水飛沫を上げて船は鬼ヶ島に向かって進んでいきました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る